迫真の演技に魅了される! ヴェネチア国際映画祭「女優賞」受賞作3選
転落する権力者の狂気をケイト・ブランシェットが怪演
『TAR/ター』
『TAR/ター』© 2022 FOCUS FEATURES LLC.
巨大な権力を持つ者がその座から転落していく様が現代社会を反映しているかのような『TAR/ター』で、鼻持ちならない主人公を演じたケイト・ブランシェットが、2022年の主演女優賞に輝きました。
世界最高峰のオーケストラの一つであるドイツのベルリン・フィルで、女性として初めて首席指揮者に任命されたリディア・ター。現代音楽界を牽引する圧倒的カリスマとして君臨するターは、「指揮者は時間を支配する」と豪語する一方、マーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーに押しつぶされそうになっていました。
そんな時、かつての教え子の死を知り、彼女を頂点とする完璧な世界は崩れ始めていきます。
『TAR/ター』© 2022 FOCUS FEATURES LLC.
リディア・ターは架空の人物ですが、実在の人物と勘違いするほどリアルに描かれています。ターは天才芸術家で傲慢、気に入らない人がいれば平気で役から降ろします。同性愛者でありコンサートマスターの女性と同居して養女に「パパ」と呼ばせ、浮気もします。
『TAR/ター』© 2022 FOCUS FEATURES LLC.
そんな不遜な権力者が女性として描かれていることに異を唱えた意見もありますが、性別を問わずターという人物を通して権力者の脅威と狂気、足元をすくわれたら一気に転落していく様子をオーケストラの音楽とともにスリリングに描写しています。
『TAR/ター』© 2022 FOCUS FEATURES LLC.
パワーも華もある自信に満ちたターが、後半では精神的な苦しみに苛まれ、大事な舞台で狂気の行動をとるシーンの凄まじい演技は必見。その後のターの歩みを落ちぶれたとみなすか、一筋の光を見出したと受け取るかは、映画を観た人にゆだねられています。
『TAR/ター』
2022年製作
Blu-ray ¥2,075/DVD ¥1,572
発売・販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
© 2022 FOCUS FEATURES LLC.
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構成・文
ライター中山恵子
ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。