【50代のこよみ養生 Vol.44】秋分に多い“更年期のゆらぎ”をやわらげる、お手軽養生と薬膳食材
のぼせ、イライラ、不眠などが現れるのは「陰の不足」タイプ

更年期の不調の原因は、大きく「陰の不足」と「陽の不足」に分けられます。どちらの場合も陰陽バランスがかたよっている状態なので、秋分前後にゆらぎやすく、不調が現れやすい傾向があります。
両タイプのうち、ほてりやすい、のどが渇きやすいなどの傾向が見られる場合は陰の不足タイプ。人体における陰とは水分のことで、陰の不足タイプは体内の水分が不足しているために余分な熱を冷やす力が低下しており、熱感や精神の興奮などが現れやすい状態です。特に秋分の時期は、次のような不調がよく見られます。
・ホットフラッシュ、のぼせ
体内の余分な熱が強くなりすぎて上半身に上昇し、頭部周辺が急激に熱くなっている状態。過労や夜ふかしなどで陰を消耗していたり、アルコールやカフェインのとり過ぎによって体内の余分な熱を増やしている場合も多いです。養生のポイントは、夜になったらリラックスして早めに就寝すること。夜は陰を補う時間帯なので、体に負担をかけないようにして早寝することが陰の不足を解消する助けとなります。また、食事からも陰を補うことが大切で、白きくらげ、くこの実などの薬膳食材は、陰を補いつつ上半身の熱を鎮めるのに役立ちます。くこの実はそのままおやつにしたりお茶に入れたりして、白きくらげは水で戻してスープやあえものの具にしたりして、日々の食生活にとり入れてみてください。
・憂うつ感、イライラ
陰が不足すると気(き=エネルギー)のめぐりがスムーズにいかなくなり、その影響で憂うつ感、イライラ、焦燥感などの精神的な不調が現れやすくなります。この場合は気のめぐりをよくする養生法が最適。心身が緊張状態にあると気が滞りやすいので、心身がリラックスしやすい夕暮れどきに軽く散歩をして、気のめぐりをよくするといいでしょう。おすすめの薬膳食材は陳皮(ちんぴ)パウダー。陳皮とはみかんの皮を乾燥させた食材で、パウダー状のものが市販されています。少量を白湯や紅茶に入れたり、味噌汁やスープにふりかけたり、塩と混ぜて陳皮塩を作り料理の味つけに使ったりするといいでしょう。陳皮は少量をこまめに使うのがポイントで、香りを感じることで気のめぐりが促進されます。
・不眠、不安感
陰の不足によって体内に生じた熱が、五臓の心(しん=心臓の働きや精神状態など)を熱してしまい、精神が興奮状態になって不眠や不安感などが生じている状態です。この場合は、精神を安定させるために就寝1時間前のルーティンを決めてみましょう。一例として、まず就寝1時間前になったら部屋の明かりを暗めに落としてスマホやPCをオフにし、就寝30分前に40℃程度のお湯で足湯につかり、心の興奮状態を落ち着かせます。就寝10分前になったらベッドに横になって深呼吸を数回行い、読書などで心を落ち着かせ、就寝時間になったら消灯。このようなルーティンを決めて毎晩繰り返すことで、体が睡眠リズムを覚えて精神が安定しやすくなります。おすすめの薬膳食材は、精神の安定を助けるなつめ。カフェインレスなので、就寝前になつめ茶を飲むのもいいでしょう。
この記事を書いた人
国際中医師・国際薬膳師・東洋医学ライターTSUBO
健康雑誌編集部員をへて独立し、以後、健康や美容に関する雑誌・書籍・WEBの企画・編集・執筆を数多く手掛ける。現在は主に東洋医学による予防医学や、東洋医学から見た自然と人体のつながりについて執筆活動中。
Twitter:@MomoOtsubo
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