大阪の老舗で押しずしを味わい、国宝・曜変天目茶碗に見惚れ、赤と黒のうるしが織りなす根来の美を堪能【上食研・Wあさこのおいしい社会科見学 vol.10】
創業370余年の老舗「すし萬」で関西すしの歴史を学び、味わう
「子どもの頃からよう食べてんねん」と麻子先生がいうのは、「すし萬」のおすし。
関西のすしというと、型にネタとシャリを重ねて押し固めた「圧(お)しずし(一般的には「押しずし」)」の歴史が長く、すし萬の看板商品「小鯛雀鮨®」(写真左)、「大阪すし」(写真右)ともに今も職人さんたちの手により伝統的な方法で作られています。
まろやかな酸味とやや強めの塩け、昆布の風味がきいていて、お醤油をつける必要はありません。ぺろりと完食しました。
承応2年(1653)、現在の大阪府福島区で魚屋として創業し、天明元年(1781年)に「雀鮨」専門店となったすし萬。雀鮨とは、古くから大阪で作られていたすしで、ボラなどの魚の腹にすし飯を詰めた姿が雀に似ていることからその名がついたのだとか。
京都の仙洞御所に献上する際に二才ものの小鯛を使い、以来「小鯛雀鮨®」が店の看板商品に。当時のすしを再現した「古傳桶詰(こでんおけづめ)」(写真左。写真提供:すし萬)」は、予約限定商品。
明治42年(1909)には高麗橋、平成22年(2010)に現在の靱本町へと本店を移転して、現社長の小倉康宏(やすひろ)さんで、16代目を数えます。
店先に飾られている高麗橋にあった旧本店の石像。「私が高校生ぐらいまでは、店のかまどで薪を使ってごはんを炊いていました」と小倉さん。
「大阪の人にとってはほんまにおなじみの味やと思います」と麻子先生が言うと「ありがとうございます」と小倉さんも笑顔。
「出かけたときに買って帰って夕食にしたり、手土産やお遣いものにも喜ばれます。母は私を出産して初の食事に、お見舞いに頂戴した小鯛雀鮨をいただいたそうで、今でも月に数回は“買ってきて”と頼まれます」と続ける麻子先生。すし萬のおすしは、大阪の皆さんの人付き合いにひと役買っている嬉しいスタンダードなんですね。
写真提供:すし萬
「二寸六分の懐石」とも呼ばれる箱ずし「大阪すし」もすし萬の定番。
長らくお付き合いのある魚屋さんが「すし萬さんのために」と用意してくれるネタ、伝統的なレシピで作るすし飯には京都・千鳥酢さんの酢が使われています。ネタに重ねる白板昆布は北海道産、海苔は大阪の河幸海苔店さんのものを……と、すべての材料に厳選を重ねています。
「大阪すしには何十もの材料を使っています。それは何十という会社さんに支えられて作らせていただいているということでもあると思っています」と小倉さん。
代々の味を大切に守りながら、型を小さくして食べやすくするなどの改良も重ねています。
写真提供:すし萬
すし萬の新たな名物が「大阪 阿奈古(あなご)めし」。ふっくらと仕上げた穴子を一本丸ごと使った贅沢な逸品です。
「お客さま、取引先さまに支えていただいて守ってきたのれんを受け継ぎながら、時代に合わせて柔軟に変化もしていきたいです」と語る小倉さんに、老舗ののれんの重みを感じました。
本店は持ち帰りのみですが、大丸心斎橋店、リーガロイヤルホテルにはレストランもあり、にぎりすしやコース料理を楽しめます。販売店・レストランともに大阪以外にも展開しているので、詳しくは公式サイトでチェックを!
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