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大人のおしゃれ手帖 10月号

大人のおしゃれ手帖

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大人のおしゃれ手帖
2025年10月号

2025年9月5日(金)発売
特別価格:1620円(税込)
表紙の人:吉田羊さん

2025年10月号

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大阪の老舗で押しずしを味わい、国宝・曜変天目茶碗に見惚れ、赤と黒のうるしが織りなす根来の美を堪能【上食研・Wあさこのおいしい社会科見学 vol.10】

ふなつあさこ

藤田美術館 国宝・曜変天目茶碗の宇宙にたゆたう

国宝 曜変天目茶碗(見込)/藤田美術館

写真提供:藤田美術館

「あさこちゃん、曜変天目茶碗見に行きたいねん」と麻子先生からのリクエストで向かったのは、藤田美術館。

藤田美術館 外観

全面ガラス張りの開放感あふれるモダンな美術館です。

藤田美術館 エントランス

この美術館のコレクションは、明治時代に活躍した実業家、藤田傳三郎と、息子の平太郎、徳次郎によって築かれたもの。現在の建物は2022年にリニューアルオープンした際のもので、以前の建物は藤田家の邸宅にあった蔵そのものだったそう。

オープンスペースの奥にある美術館の入り口にその名残がうかがえるほか、随所に邸宅の部材がリユースされています。

藤田美術館 饕餮禽獣文兕觥(とうてつきんじゅうもんじこう

美術館としては珍しく、年末年始(12/29〜1/5)以外休まずオープンしている藤田美術館。漢字ひと文字で統一された3つの展示をスライドしながら部分的に展示していくというスタイルも斬新。

取材当日には、お酒に関わる「酔」(〜9/30・火)、「虫」をテーマにした展示(〜11/30・日)、多くの愛好家の手を経てきた遍歴をたどる「誂」(〜10/31・金)が開催中。

こちらは「酔」の展示で目を引いた、古代中国・殷代の酒器「饕餮禽獣文兕觥(とうてつきんじゅうもんじこう)」。まったく読めない名前ですが、ユーモラスなルックスです。

藤田美術館 大江山酒吞童子絵巻(部分)

のんべえな鬼のドン、大江山の酒吞童子(しゅてんどうじ)の酒盛りを描いた「大江山酒吞童子絵巻」(部分)。「見返り美人図」で知られる絵師・菱川師宣(ひしかわもろのぶ)晩年の作品。

さらわれてきたであろう女性のものすごい困り顔が印象的。

藤田美術館 古芦屋糸地蒲団型釜(こあしやいとじふとんがたかま)

「虫」の展示からは「古芦屋糸地蒲団型釜(こあしやいとじふとんがたかま)」をピックアップ。蛾らしき虫がくっついています。

ちなみに展示品には、作品名のほかは解説などは一切記載されていません。

各展示室の入り口で二次元バーコードを読み込めば、自分のスマホで解説を読んだり、聞いたり(イヤホンは持参しましょう)することができます。

私は美術館や博物館では、解説を“読む”より展示品を“見る”ことに集中したいタイプなので、この方式はすごく好みです。

藤田美術館 真中古野田手茶入 銘 面影 箱次第とも

「誂」の展示室に進むと、とにかく箱がいっぱい。持ち主を代えながら受け継がれてきた茶道具は、大切にされるあまり、箱を作り、その箱を守るための箱、さらにまた次の持ち主が箱を作り……とマトリョーシカ状態に。

黒い箱は藤田家の人々が誂えたもので、ピカピカのうるしの黒と、エッジに金であしらわれた藤と鳥のモチーフとのコントラストが粋な「藤田箱」。箱にも気合が入ってます。

藤田美術館 国宝 曜変天目茶碗

いよいよ、国宝・曜変天目茶碗とご対面! 現在の中国・福建省で盛んに作られていた黒い釉薬の茶碗「天目茶碗」の一種で、現存するのは世界で3つのみ。

そのすべてが日本にあり、そのひとつがここ、藤田美術館のもの。星空のようでもあり、オーロラのようでもあり、小さなお茶碗の中に小宇宙が広がっていました。

藤田美術館 曜変天目茶碗 箱次第

国宝「曜変天目茶碗 箱次第」。つまり、曜変天目茶碗のマトリョーシカのような箱たちです。箱にはしばしば「箱書き」という作家や所蔵者、由来などが書かれています。

藤田美術館の曜変天目茶碗の持ち主を辿っていくと……なんと、徳川家康!!!! スケールがすごい。

藤田美術館 蔵の窓

展示室を出ると、移築された蔵の窓が。外には広々とした藤田邸跡公園が広がっていて、写真に撮ると麻子先生がものすごく大きな本を広げているみたいに見えます。

昔はこの辺り一帯すべてが一族の邸宅だったそうです。

藤田美術館 庭の多宝塔

庭には、高野山から移築されたという多宝塔が。自宅の庭にそんなことを……! ひと昔前のお金持ちはスケールが違いますね。

塔の移築は藤田平太郎さんによるものですが、父である傳三郎さんは、現在のリーガル・東洋紡・南海電鉄・JR山陽本線など名だたる大企業の前身となる企業を次々に設立、一代で藤田財閥を創設したスゴい人で、その功績をたどると驚きの連続。今まで知らなかったことが不思議なぐらいです。そのうち、ドラマの主人公になっていてもおかしくない!

藤田美術館 あみじま茶屋

オープンスペースの一角にある「あみじま茶屋」では、目の前で点てていただけるお抹茶や日本茶とお団子を提供しています。なんと500円。

しかも使われているお茶碗は、現代の作家ものばかり。素晴らしい茶道具を見て「素敵」とうっとりして、そのうえいい器でお茶までいただけるなんて……。

藤田美術館 あみじま茶屋  抹茶とお団子

それでいて、お菓子が肩肘はらずにいただけるお団子、というのも良い!

リニューアルにあたり、茶道やアートに興味がある人はもちろん“ちょっとお茶でもしてこうかな”ぐらいでも気軽に立ち寄れる、どんな人にもオープンでありたいという願いを込めた空間は、江戸時代の峠や宿場の茶屋のように、情報交換の場でもあるそう。

お能や落語、文楽(人形浄瑠璃)などの伝統芸能をカジュアルに楽しめるイベントも開催されています。詳しくは、公式SNSでチェックを。

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この記事を書いた人

編集者 ふなつあさこ

編集者ふなつあさこ

生まれも育ちも東京ながら、幼少の頃より関西(とくに奈良)に憧れ、奈良女子大学に進学。卒業後、宝島社にて編集職に就き『LOVE! 京都』はじめ関西ブランドのムックなどを手がける。2022年、結婚を機に奈良へ“Nターン”。現在はフリーランスの編集者として奈良と東京を行き来しながら働きつつ、ほんのり梵妻業もこなす日々。

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Instagram:@asa_ship

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