【50代のこよみ養生 Vol.49】芸術で不調予防!?感情からアプローチする“芸術の秋養生”
悲しみを癒す芸術が疲れ、冷え、かぜを予防する養生に

さて、今は晩秋の節気である「霜降(そうこう)」の時期で、悲の感情が現れやすいとき。気がふさいだり、くよくよと落ち込んだり、悲しくて泣きそうになったりすることが多くなるかもしれません。
こうした悲しみの感情は多少であれば問題はありませんが、ひどい悲しみが続くと気を消耗してしまいます。気は体の活動力となるほか、体を温めたり、病原菌などの侵入から体を守ったりする働きがあるので、悲しみが強すぎて気が消耗すると疲れやすくなる、冷えやすくなる、かぜをひきやすくなるといった不調が見られる傾向が。いずれも今の時期に現れやすい不調ですね。
こうした不調を予防するためにおすすめしたいのが、芸術の力で悲しみをやわらげる養生法。
五臓の理論にもとづくと、悲の感情は喜の感情に抑制されると考えられます。つまり、悲しみをやわらげるには、喜びを感じることが効果的ということ。これは東洋医学を持ち出すまでもなく、多くの人が体験している感覚ですね。秋は、この喜の感情を刺激する芸術を楽しむことが養生になります。
まず挙げられるのが、高揚感や多幸感あふれる音楽の鑑賞。例えば、王道ですがモーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』のような明るい曲調のクラシックや、ビートルズの『Here Comes the Sun』のような太陽を感じる曲を聴くと、悲しい気分を体の内側から温めて癒やしてくれるような感覚になるでしょう。
オペラ、歌舞伎、宝塚などの華やかな舞台芸術もおすすめです。美しい衣装や音楽が心を明るくするほか、感動的なストーリーの作品で涙を流せば、気のめぐりもよくなって悲観的な気持ちが発散されます。
絵画ならルノワールの『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』のような、光が描かれた明るい作品を鑑賞するといいでしょう。黄色が印象的なゴッホの『ひまわり』など、暖色系の色彩が美しい作品もおすすめ。光や暖色系の色から感じるぬくもりやまぶしさが、胸の奥で固まっている気の滞りをゆるめてくれます。
また、悲の感情は肺から生まれているので、肺が開くのを感じるような合唱や民謡、声量が大きい歌手のコンサートなどに行くのもいいでしょう。声を出すことは“肺からの発散”であり、肺から生まれる悲しみの放出につながります。その声を聴くだけでも、悲しみの発散を促す養生となるでしょう。
この記事を書いた人
国際中医師・国際薬膳師・東洋医学ライターTSUBO
健康雑誌編集部員をへて独立し、以後、健康や美容に関する雑誌・書籍・WEBの企画・編集・執筆を数多く手掛ける。現在は主に東洋医学による予防医学や、東洋医学から見た自然と人体のつながりについて執筆活動中。
Twitter:@MomoOtsubo
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