あの名作小説の世界を観る喜び～海外文学の映画化3選①～

『アンナ・カレーニナ』© 2012 Focus Features LLC. All rights reserved. photography by Eugenio Recuenco,Laurie Sparham

　芸術の秋らしく、海外名作文学を原作とする映画をピックアップしてみました。映画化にあたり、時のスターを主演に起用していることも多く、映画ならではの美しく華麗な世界も見どころ。小説をどのようにアレンジしたのかを考えるのも楽しいものです。2週にわたって、6作品を紹介予定！

キーラ・ナイトレイ主演、名女優たちが演じた“社交界の華”を熱演
『アンナ・カレーニナ』

　ロシアの文豪・トルストイの同名小説をキーラ・ナイトレイ主演で映画化。舞台は19世紀末のロシア。夫である政府高官のカレーニンと一人息子と暮らしているアンナは、モスクワへの道程で若き将校のヴロンスキーと出会い、一目で惹かれ合います。とはいえ夫も息子もいる身。平常心を保とうとするアンナですが、舞踏会でヴロンスキーと再会し、気持ちを抑えられなくなります。欺瞞に満ちた社交界を捨て、家庭も捨てて、ヴロンスキーとの愛に生きる決意をしますが……。

　年の離れた夫には感じることのなかった恋心を若き将校に抱き、心のままに突き進むアンナをキーラが凜々しい美しさで好演。年上の夫カレーニンをジュード・ロウが、ヴロンスキーをアーロン・テイラー＝ジョンソンが演じており、美男美女の恋絵巻を繰り広げます。特にアンナと金髪の将校とのラブシーンは美しく、不倫とはいえ初恋のような瑞々しさが漂います。

　これまで何回も映画化されている原作で、今回メガホンを撮ったジョー・ライト監督はバレエの舞台のような構成でめくるめく情熱的な恋を表現し、目を楽しませてくれます。

　アンナ役は、古くはグレタ・ガルボ、ヴィヴィアン・リー、ソフィ・マルソーなど、その時代を代表する女優のひとりが演じてきました。同じヒロインでも、それぞれの個性により受ける印象は少し異なります。チャンスがあれば見比べてみるのもおすすめ。