障がいのあるアマチュア俳優たちが出演、心の垣根を飛び越えるハッピーな映画を撮ったアルテュス監督インタビュー
私が彼らに深い愛を感じていることは理解してもらえるはず
アルテュス監督。『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』メイキング写真
© 2024 David Koskas © 2024 CINE NOMINE - M6 FILMS - AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINEMA – SAME PLAYER - KABO FILMS - ECHO STUDIO - BNP PARIBAS PICTURES - IMPACT FILM
――フランスの観客は、アルテュスさんが日頃から演じている“シルヴァン”を知ったうえで本作を観ていると思いますが、日本の観客の多くは知らないので、もしかしたら知的障がい者のふりをする、という設定に抵抗がある人もいるかもしれません。その点に関して、こういうふうに観てほしい、などメッセージがあればお願いします。
アルテュス:たしかにフランスの観客は私自身のことも、私がコントで使っているハンディキャップを持ったキャラクターであるシルヴァンのことも知っていますので、本作の世界に入りやすいと思います。一方、他の国々の方は受け入れるのが少し難しいだろうということもわかります。けれども、この映画を最後まで観ていただければ、嘲りの視点を持った作品ではないこと、私が障がいのある俳優たちに深い愛を感じていることは、きっと理解していただけると思います。
そのうえで、映画を観てくださる方には、自然のままに身を任せていただきたいです。もし、気まずいな、ショックだな、と感じたなら、なぜそう思ったのかご自身で考えてみてほしいのです。「あー、楽しかった。あー、退屈だった」という感想だけで映画館を後にするのではなく、何か視点を変えるきっかけとなる小さな種を持ち帰っていただけると嬉しいです。そういう意味では、特に子どもたちに観てほしいと思っています。
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――11人のアマチュア俳優の方々は、アルテュスさんがInstagramを通じて募集をかけてオーディションで選ばれ、脚本は彼らに当て書きしたと聞きました。彼らはどのように役と向き合っていましたか? また、撮影現場のようすなども教えてください。
アルテュス:彼らに当て書きしたのは、映画の中でも本人たちでいてほしかったからです。アルノーは歌手・ダリダの大ファンという設定ですが、実際のアルノーもそうです。いつも仮装しているボリスも、ガーリーなファッションを好むマヤヌも、ふだんからそうなのです。
撮影現場は、独特でした。撮影直前にセリフを繰り返し教えた方がよい人もいれば、イヤホンでセリフを耳打ちしてあげた方がよい人もいました。カメラが回っているのに寒いと言ってセーターを取りに行ってしまう人もいました。それでも、こんなにも楽しく生き生きとした撮影現場というのは今までありませんでした。彼らがやってくるとみんな嬉しくて、楽しくて、笑っちゃう、というような雰囲気の現場でした。本人たちにとっても、良い経験になったと思います。今も彼らとの冒険は続いていると感じています。今回も日本で映画が公開されると知ったら、みんな大喜びするはずです。
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構成・文
ライター中山恵子
ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。




