毎日の生活の中で免疫力を高めよう
「副交感神経」と「体温アップ」がカギ!
免疫力のアップダウンに大きく影響する生活習慣を安保徹さんに教わりました。
毎日の小さな積み重ねが病気に負けない体をつくります。
目次
免疫力アップのポイントはこの2つ
Point❶
がんばりすぎを少しゆるめて「副交感神経」を優位にする
交感神経と副交感神経が、交互にバランスよく働いているのが理想ですが、
40代以上の女性の多くは、仕事のしすぎや生活の乱れ、心身のストレスなどが原因で、
交感神経が優位な状態に傾きがちです。
副交感神経がうまく働かないと、リンパ球が減って免疫力が下がりがちになります。
上手に休息を取って、副交感神経にスイッチしましょう。
Point❷
平熱36.0℃未満は要注意?「体温アップ」で免疫を強化
免疫力と体温には密接な関係があり、白血球がバランスよく働くためには36.5~37.0℃くらいがベスト。
ストレスや睡眠不足で自律神経が乱れたり、パソコンやスマホ使用で血流が悪くなったり、
運動不足で筋力が衰えると、体温はどんどん下がります。
免疫力を高めるためには、入浴や運動、食事を見直して体温アップを意識した生活を送りましょう。
免疫力を高める「睡眠」のポイント
午前0時前の就寝で副交感神経にスイッチ
自律神経が整う睡眠時間とは
「人間の体は、太陽が出たら起きる、沈んだら寝る、というふうにできているんです。
睡眠は究極のリラックス。
不足すると、心身の緊張状態が長く続き、免疫力が下がります」(安保さん)
自律神経を整えるためにはできれば午前0時までには寝る、7〜9時間の睡眠時間を確保することが大切です。
睡眠の質を上げる寝室づくりのコツ
いくら食事に気を使っていても、睡眠をおろそかにしていては本末転倒です。
良質の睡眠のためには、寝具選びも重要。
背骨の正しいカーブを保つために、適度な硬さの布団やマットレスを選びましょう。
寝室の電気は消し、朝起きたら、朝日を浴びるのがベスト。
「就寝直前のテレビや布団の中でのスマホは、交感神経を刺激するのでNGです」
また、うつぶせや横向きの姿勢で寝ると、胸やおなかが圧迫されて、眠っている間に呼吸がしづらくなります。
「深く呼吸をするためにも、あおむけ寝がいいでしょう」
夕食が遅い場合、食べてからすぐに寝るのではなく、時間をおいたほうがいいのでしょうか。
「睡眠も、食べ物の消化活動も副交感神経が支配しているので、免疫力的には問題ありません」
免疫力を高める「運動」のポイント
ゆるい運動と呼吸で体温を上げる
免疫力を高めるウォーキング
筋力が衰えると体温が下がってしまうので、運動不足の人は手軽なウォーキングから始めてみましょう。
「運動不足の人は体が硬いので、ウォーキングの前後にストレッチで体をよくほぐすこと。
無理のないペースで行うことが長続きのコツです。
誰かと競争したり、疲れ果てるまでやらないように。義務にせずに楽しむことが大切です」
いつもの習慣をちょっと変えて運動量を増やす
ウォーキングの時間も取れない人は、エスカレーターやエレベーターを使わない、
電車やバスはひとつ手前で降りて歩くなど、普段の生活の中で運動量を増やす工夫を。
顔の筋肉を動かすと美肌や認知症にも効く
「顔には神経が集まっているので、顔の筋肉を動かすと脳が活性化して、自律神経がととのえられるだけでなく、認知症の予防や美肌効果もあります」
口を大きく開けて「あいうえお」と発音する、舌を出して、上下左右に動かすなどを1日2〜3分行いましょう。
だるさが消えてやる気が出る腹式呼吸
疲れたときや緊張時は、ゆっくり腹式呼吸を行いましょう。
「呼吸は吸うときに交感神経、吐くときに副交感神経が働くので、
吐く時間を長くすると副交感神経優位になります」
免疫力を高める「入浴」のポイント
体温+4℃のお風呂を習慣にして体温アップ
ぬるめのお湯に10分でリラックスモードに
「体温を上げるのに、最も手軽で即効性があるのは入浴です。
シャワーだけではリンパ球が増えず、免疫力も上がりません。湯船に入りましょう」
体温プラス4℃くらいのぬるめのお湯に、約10分間つかることで体が温まり、副交感神経が優位になります。
免疫力を高めるといわれる入浴後の冷水シャワーは「刺激が強いので、健康な人ならプラス。心臓が弱い人は避けましょう」
湯船に入れないときは足湯を試してみて
どうしても湯船につかれない日は、手軽な足湯で体温を上げましょう。
足湯は、約40℃のお湯を洗面器やバケツなどに入れ、足を20〜30分つけるだけです。
熱いお湯を近くに置いておいて、お湯が冷めてきたら、少しずつ足して温度をキープします。
足湯の間は、読書をしたり、テレビを見るなど、好きなことをしてリラックスしましょう。
「メンタル」との向き合い方
無理せず、ラクせず、ストレスをかわす
口角を上げるだけ、作り笑いも!
笑うことで免疫細胞が活性化することは、さまざまな研究で証明されています。
「笑うことで体温がアップするし、ストレスも和らぎます。おもしろいことがないなら、作り笑顔でも効果があります」
口角が上がると、脳が「笑っている」と錯覚して、リンパ球が増えて免疫力が上がります。
大げさに声を出して笑ってみるのもおすすめ。
喜怒哀楽を抑えずきちんと表現する
「喜怒哀楽の感情を表現することは、交感神経、副交感神経の両方を刺激して、免疫力を高めます」。
悲しいときは涙を流し、腹が立ったら怒ることは、体のためにとても重要。
無理して感情を抑え込みすぎないようにしましょう。
月に一度くらいは体に悪いこともOK
なにごともストイックになりすぎるとかえって強いストレスになり、免疫力アップには逆効果です。
「月に一度くらいは、思い切りお酒を飲む、好きなものを食べる、夜更かししてDVDを見る、などして、ストレスを発散してもいいでしょう」
お天気チェックで不調に備える
「雨、くもり、台風など気圧の低い日は、副交感神経が強く働くので、なにごともやる気が起こらず、だるさを感じることが。反対に快晴で気圧の高い日は、交感神経が活発になり、やる気がアップ。また、天気が急変すると不調も起こりやすいです」
天気によって自律神経が左右されることを知っておくと、悪天候の日は無理をしない、大切な用件はなるべく晴れの日にこなすなど、上手に調整することができます。
五感を使った息抜きで気持ちを切り替える
疲れやストレスがたまっているときは、体を休めるだけでなく、五感を使ったリフレッシュ法がおすすめです。
「美しい風景や星を眺める、ゆったりとした音楽を聴く、好きな香りをかぐなど、いつもとは違うことに意識を集中させることで、気持ちが切り替わってスッキリします」
“ながら”とスキマ時間で免疫力アップのセルフケア
[ 爪もみ ]
副交感神経を優位にする爪もみマッサージです。
爪の生え際を、反対側の人差し指と親指ではさみ、10秒ほど押します。
これをすべての指に行います。
痛気持ちいいくらいの強さで、1日に2~3回が目安。
[ 目回し体操 ]
パソコンやスマホなどで目を酷使すると、
交感神経が優位になって全身の血行が悪くなり、体の冷えにもつながります。
眼球を上下左右、時計回りにゆっくり動かして、こまめに目の疲れを取りましょう。
[ ゆらゆら体操 ]
体温アップや腰痛、冷え性にもおすすめ。
❶足を肩幅より広めに開き、全身の力を抜いて両膝を軽く曲げます。
❷右手で右のおしりから太ももの下までなでおろしながら右足に体重を乗せ、左足のかかとは軽く浮かせる感じで上半身を右に傾けます。
❸左側も同様に行います。
これをリズミカルに20回ほどくり返します。
教えてくれたのは・・・
新潟大学医学部名誉教授・医学博士
安保 徹 さん
東北大学医学部卒業。1996年に白血球の自律神経支配のメカニズムを解明し、免疫学の最前線で活躍。著書は『免疫力を高めれば、薬はいらない!』(三笠書房)、『免疫力をあげる食べ方』(小社)ほか多数。
イラスト/はまだなぎさ 文/佐治 環
※大人のおしゃれ手帖2016年10月号をもとに再編集したものです。
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