音に魅せられた天才たちの物語。 “音楽家”の映画3選 ~芸術の秋に観たい映画③~
Netflix映画『マエストロ:その音楽と愛と』独占配信中
「芸術の秋に観たい映画」シリーズの最後は、第1回の「作家」、第2回の「画家」に続いて、「音楽家」が主人公の映画&ドキュメンタリーを紹介します。音に魅せられた天才たちの人生と美しい音楽に触れてみませんか?
目次
天才指揮者とその妻の複雑でいて深い愛情の物語
『マエストロ:その音楽と愛と』
世界的指揮者で作曲家のレナード・バーンスタインの伝記映画。レニー(レナードの愛称)は、ミュージカル『ウエスト・サイド物語』や映画『波止場』の音楽を手掛けたことでも知られています。私生活では女優のフェリシアと結婚し、3人の子どもにも恵まれましたが、その一方で男性と必要以上に触れあったり、妻の前でも若い男性といちゃつくなど、同性愛の傾向を隠すことはしませんでした。
そんなレニーの若き日々から老年期までを描いていますが、彼一人の伝記ではなく、フェリシアとの独特な夫婦関係と愛に焦点をあてた二人の物語として綴られています。
フェリシアはレニーの音楽家としての才能を尊敬し、彼の性的指向を認めていますが、結婚後も公然と男性との関係を続けるレニーに苦しめられます。一方のレニーは悪びれることもなく若い男性を誘いますが、同時に妻のことも深く愛しているのです。大きくなった娘もまた父の噂を耳にして、父に聞くべきか悩みます。そんななか、フェリシアは病気を患い、衰弱していくのでした。
レニー本人が憑依したかのような圧巻の演技を披露したのは、ブラッドリー・クーパー。本作では監督と脚本も担っていて、監督としては『アリー スター誕生』に続く長編2作目にして見事な手腕を発揮しています。フェリシア役は『プロミシング・ヤング・ウーマン』などのキャリー・マリガンで、夫との不仲に苦しみながらも、決して憐れなだけの女性ではなく、夫の才能に惚れた自らの選択であるという強さも感じさせる演技で魅了しています。
Netflix映画『マエストロ:その音楽と愛と』
2023年製作
Netflixにて独占配信中
構成・文
ライター中山恵子
ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。