オトナトモダチ —相互交感—
俳優・天海祐希さん×俳優・神尾楓珠さん
年齢も個性も異なる才能の持ち主が、集まり、ぶつかり合って生まれる熱気……
それこそが演劇の醍醐味。
スポットライトを浴び続けてきたスターも、期待の新星も、それぞれに思いと課題を抱えて作品に向かいます。
心の交流について語り合う連載、今回のテーマは「壁を越える」苦労と喜び。
さて、このおふたりの場合は?
—失敗も後悔も、その人にとって必要な経験
天海祐希さん(以下、天海) (撮影しながら)これ、〝息子の就職記念〟みたいに見えない(笑)? ドラマで一度ご一緒しましたけど、本格的な共演は初めてですね。
神尾楓珠さん(以下、神尾) はい。舞台出演自体が2回目で、稽古場というところがまだよく掴めていないんですが……。劇団☆新感線のことは、以前出演されたことのある共演者の方からいろいろ伺っていました。
天海 (真顔)どんなこと聞いたの?
神尾 (焦る)いや、その、歌ありダンスあり殺陣ありで体力的には大変だけど、古田(新太)さんはじめベテランの方々がとても温かく接してくださるから大丈夫だよと。それは、稽古に入った時にすぐわかりました。
天海 そうなんだよね。演出家も劇団員の方々もぜんぜん壁を作らなくって、敷居のひくーい感じ。ドラマでも映画でも、すでにあるチームの中に入っていくのはプレッシャーだけど、逆に考えると、その場をよく知る人が支えてくれる環境でもあるわけだから。
神尾 僕はわりと萎縮しがちなほうで、「ここでは何から話すのが正解なんだろう?」みたいなことをつい考えてしまって、結局何もしゃべれずに終わる……ということが多かったんです。受け身がベースになっているというか、思い切りのよさが足りなくて。
天海 いやいや、ちゃんと周囲を見て動ける人だからですよ。私なんか、恥ずかしさより「今お話を聞いておかないと一生後悔するかも!」と、つい体が動いちゃう。以前から憧れていた加賀まりこさんを撮影所でお見かけした時も、やっぱりそう思ってお声がけをしたら「あんた、珍しい子だね」ってごはんに連れて行ってくださって、それから仲良くしていただいてて。
神尾 へえーっ、いいなぁ。
天海 後輩としては「声をかけたら失礼なんじゃないか」と思ってしまいがちだけど、実は先輩の側もそうなんですよ。同じ経験をしてきた人間として、自分のした失敗や不安な思いをさせたくないあまりに、つい余計なことまでアドバイスしてしまいそうになりますが、失敗も後悔も、その人にとって必要な経験なんですよね。だから、なるべく聞かれたことだけに答えようと、いつも心がけています。
—失敗して当たり前。そのくらいの気持ちで勇気を出して行こう! と思います
神尾 天海さんはずっと、年上の方々がいる中で主役を務めてこられたんですよね。それってすごいことで、今の僕だと周りを〝引っ張る〟ということが、なかなか先輩相手にはできなくて……。そういう気持ちをどう消化してこられたんだろうなぁと思っていたんです。
天海 この若さで真ん中に立つ経験をするんだから、大変ですよね。でも、ひとつだけ言わせてもらうと、真ん中にいる人間が「自分なんかがここにいていいのかな」と思っていると、周りも迷っちゃうんですよ。これからこの人を支えていけるんだろうか?って。だから、そこは演技でしょう! 「私、堂々としてますよ」って。
神尾 ハハハ! なるほど。
天海 いつも人見知りでシャイな自分は自分として持っておいて、もうひとつ、開き直ってガンガン行くキャラを作ったらいいんじゃない? 初めてのチームだから、「神尾くんどうしたの」って言われることもないわけだし。
神尾 そうですよね。失敗したって当たり前くらいの気持ちで、どんどん前に出ていけるように。
天海 ぜんっぜん恥ずかしくない! 周りの大人だってみーんな見事にスベっていくから、大丈夫です(笑)。それで、あとは、この人!と心に決めた人に自分からどんどんぶつかっていってください。皆「鬱陶しいかな」「面倒くさがられないかな」って心配してるくらいなんだから、年下の人から「これって何ですか?」「あれ教えてください」「ごはん食べに連れてってくださーい!」って声をかけてもらえると、すごく助かります。
神尾 どんどん壁を乗り越えたいと思います。その前に、同世代の共演者をまず確保して、失敗したら慰め合えるようにして……。
天海 アハハ、しっかりしてる!
劇団☆新感線42周年興行・秋公演
SHINKANSEN☆RX 『薔薇とサムライ2 ―海賊女王の帰還―』
かつて女海賊として名を馳せたアンヌ。女王として治める彼女の国に、未曾有の危機が……。『五右衛門ロック』シリーズとして2010年に上演された『薔薇とサムライ』の続編。12年ぶりにアンヌを演じる天海さん、謎を秘めた隣国の王子・ラウルに扮する神尾さんはじめ、強力キャスト陣&生バンドが再び熱狂の渦を呼ぶ。
作 中島かずき 作詞 森雪之丞 音楽 岡崎司
振付・ステージング 川崎悦子 演出 いのうえひでのり
出演 古田新太 天海祐希/石田ニコル 神尾楓珠/高田聖子 粟根まこと 森奈みはる 早乙女友貴 西垣匠/生瀬勝久 他
2022年11月1日〜12月6日 東京・新橋演舞場
俳優・天海祐希
1967年生まれ。宝塚歌劇団を経てドラマ、映画、舞台に幅広く出演。最近の出演に舞台『広島ジャンゴ 2022』、映画『老後の資金がありません!』など。劇団☆新感線への参加は5作目。23年2/3より映画『仕掛け人・藤枝梅安』が公開予定。
俳優・神尾楓珠
1999年生まれ。2015年に俳優デビューし19年、ドラマ『左ききのエレン』で初主演。今年放送の『17歳の帝国』も話題に。9/20より『階段下のゴッホ』(TBS)が放送中。10/14より映画『カラダ探し』が公開中。
撮影/平岩 亨 スタイリング/えなみ眞理子(天海さん)、杉本学子[WHITNEY](神尾さん)
ヘアメイク/林智子(天海さん)、内藤 歩(神尾さん) 文/大谷道子