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大人のおしゃれ手帖 5月号

大人のおしゃれ手帖

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大人のおしゃれ手帖
2024年5月号

2024年4月6日(土)発売
特別価格:1360円(税込)
表紙の人:南果歩さん

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日本の食の豊かさを実感! “おいしい”映画<邦画編>3選

©2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

実りの秋を迎えた今、日本の食の豊かさが伝わってくる新作映画『土を喰らう十二ヵ月』(11月11日より公開)が注目を集めています。そこで今回のテーマは、“おいしい映画”<邦画編>。
過去記事<洋画編>と併せて、お楽しみください。

料理研究家・土井善晴が四季折々の料理を担当
『土を喰らう十二ヵ月』(2022年)

©2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

 沢田研二が主演する『土を喰らう十二ヵ月』は、水上勉の名著『土を喰う日々 ―わが精進十二ヵ月―』を原案とする物語。信州の山奥に犬とともに暮らす作家のツトムは、山菜やきのこを採り、畑で野菜を育て、自炊をして暮らしています。時折、編集者で年の離れた恋人でもある真知子(松たか子)が訪ねてきては、ツトムの手料理を「おいしい!」と食べて帰ります。真知子と一緒に食べることに幸せを感じているツトムですが、一方で13年前に亡くした妻の遺骨をまだ納められずにいるのでした。

©2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

©2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

 立春にはじまり冬至まで、山の四季が移ろうなか、ツトムはさまざまな料理や保存食を作ります。囲炉裏であぶった子芋、梅干し、梅酢ジュース、白胡麻をすり鉢ですって作った胡麻豆腐、木の芽がたっぷり乗った若竹煮……。なぜ作家のツトムが料理上手かというと、9歳の頃に禅寺に小僧に出され、そこで精進料理を教わったから。旬を食べること、食材を無駄にしないこと、そういったことを幼い頃に体得しているのです。

©2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

 本作の料理を監修しているのは、『一汁一菜でよいという提案』の著書などで知られる料理研究家の土井善晴。彼にとって初めての映画作品ですが、中江裕司監督(『ナビィの恋』)と共に食材選びから関わり、レシピの再現、キャストへの料理指導、器選びまで手掛け、旬の恵みを生かした美しい料理による数々の名シーンを作り出しています。

©2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

©2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

 また、お米を研ぐ手、山菜を採る手、野菜を収穫する手、紫蘇を絞る手など、ツトムの手のアップが多く映し出されるのが印象的です。その手を見ていると、「生きること、つまり食べることに手作業や手間暇は欠かせない」という、忙しい日常の中でつい忘れがちなことが思い起こされます。ツトムと真知子が「いただきます」と手を合わせるシーンに、大切なことが集約されているように思いました。

©2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

『土を喰らう十二ヵ月』

2022年11月11日より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座他にて全国公開
©2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会
配給:日活


伝統の加賀料理とおもてなしの心
『武士の献立』(2013年)

 江戸時代には君主の食事を作るお役目があり、彼らは包丁を持つ武士と揶揄され、「包丁侍」と呼ばれていたといいます。加賀藩お抱えの包丁侍である舟木家の父・伝内と跡取り息子の安信は、加賀のお家騒動を料理とおもてなしの心で乗り越え、当時の加賀料理のレシピ集「料理無言抄」を残しました。この実在した舟木親子を題材にしたオリジナルの物語が『武士の献立』です。
伝内は、女中の春の料理の腕前に目を留め、料理が苦手な安信の嫁になってもらいたいと頭を下げます。春の指導を受ければ、息子も立派な料理人になれると考えたのです。年上女房の春は、若い夫を一人前の包丁侍にするために尽くしますが……。
 映画の中には、すだれ麩の治部煮、丸柚餅子、重詰め、饗応料理などが登場します。料理を監修したのは、加賀料理を伝承する二人、料亭・大友楼の代表・大友佐俊と料理研究家の青木悦子で、「料理無言抄」をもとに再現したという華やかな料理を見るだけでも価値があります。しっかり者で健気な春を演じる上戸彩と、どこか憎めない安信を演じる高良健吾の相性もよく、若い夫婦の成長物語としても感動的な時代劇です。

『武士の献立』

発売中
Blu-ray ¥5,170
DVD ¥4,180
発売元・販売元:松竹
©2013「武士の献立」製作委員会


旬のおいしさが詰まった素朴な料理
『リトル・フォレスト』<夏・秋>(2014年)、<冬・春>(2015年)

 『リトル・フォレスト』は、東北の小さな集落“小森”を舞台に、都会に居場所を見つけられずに戻ってきた若い女性・いち子(橋本愛)が自給自足に近い生活を送りながら、自分自身を見つめ直す物語です。1年にわたって東北でロケを行い、夏、秋、冬、春の4部作で構成されています。
 本作の魅力は、なんといっても、旬の食材を生かした素朴な料理の数々。長雨の季節はパンを焼き、グミの実を煮てジャムにし、甘酒から米サワーを作り、真夏は畑で収穫したトマトでスパゲッティを。秋は、稲を収穫し、くるみの炊き込みご飯をおにぎりに。冬は、母に教わった直方体のケーキを焼き、砂糖醤油たっぷりの納豆餅や「はっと汁」を食べ、春は山菜を摘んで天ぷらや佃煮に。どれもこれもおいしそうなのですが、それだけでなく、イワナを釣って捌いたり、鴨を解体したりと、食べるためには命と向き合わないといけないことも伝えています。
 フードディレクションは、レストラン運営などを行うeatrip主催の野村友里とスタッフの山本有紀子。完成した料理だけでなく、作っているところも映し出しているので、映画を見終わったらすぐに何か真似して作りたくなることうけあいです。

『リトル・フォレスト 夏・秋』

発売中
Blu-ray ¥5,170
DVD ¥4,180
発売元・販売元:松竹
©「リトル・フォレスト」製作委員会

『リトル・フォレスト 冬・春』

発売中
Blu-ray ¥5,170
DVD ¥4,180
発売元・販売元:松竹
©「リトル・フォレスト」製作委員会

 大自然の中で育まれる食材そのものの美しさ、人の手が生み出す料理の美しさ、感謝していただく行為の美しさ。素敵なものがいっぱい詰まった映画は、きっと心の栄養になるはずです。


構成・文/中山恵子 

※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
※この記事の内容および、掲載商品の販売有無・価格などは2022年11月時点の情報です。販売が終了している場合があります。ご了承ください

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