書き手の追伸 ~水越美枝子さん~
ライフスタイルの転機を迎える50代の住まいに必要なのは、「家族それぞれの居場所」と機能的な収納。
建築家の水越美枝子さんに心地よい住まいづくりの秘訣を伺いました。
50代は、今後の暮らし方を考える絶好のタイミング
この数年、コロナ禍の影響によって家で過ごす時間が増えたことで、人々が住まいに求めるものは変化しつつあります。
建築家の水越美枝子さんによると、快適な家をつくるカギとなるのが、家族それぞれに「自分のためだけの居場所」があること。
「かつてはみんな揃って家族団らんというのが主流でしたが、今はリビングに集まりながらも、動画を観たり、本を読んだり…と好きなことをして過ごす家庭が多い。小さなカウンターでもよいので、家の中に一人ひとりの居場所があることで、みんなが快適に過ごせるようになります」
その考えは、リタイアが視野に入ってきた50代以降の家づくりにも役立ちます。
「これからシニアに向かっていくプレシニアの方々は、今までの子ども中心の暮らしから、自分のために時間を使おうと考え、ライフスタイルを変えていく人が多い。
そうした方に伝えているのが、『シェアハウスをイメージするといいですよ』ということ。
それぞれが個室を持ち、リビングやダイニングは使いたい人が、使いたいときに自由に使える『パブリックスペース』と捉える住まい方です」
家族なのに、それでは寂しいのでは…? と考える人もいそうですが、「ずっと仲良くするためには、上手にすれ違える家にすること」と水越さん。
「さらに、プレシニアの暮らしでは、誰か1人が家事を担うのではなく、みんなでシェアしていくことが大切。
ものの場所も『妻さえ分かっていればいい』というのではなく、全員がどこに何があるか、ひと目で分かるつくりにしておけば、将来、家事や介護のサービスを外に依頼するときにもスムーズです」
そのために知っておきたいのは、機能的で使いやすい収納のセオリー。
著書『一生、片づく家になる! 散らからない住まいのつくり方』では、水越さんがこれまで手がけてきた住まいを通じて、収納のセオリーを分かりやすく伝えています。
「快適な暮らしと収納は直結しています。収納のノウハウを理解すれば家は広く使えるし、仕組みさえつくれば、毎日がんばらなくても自然と片づく家になる。
50代は、家の収納を見直すのにいいタイミング。今、頑張って仕組みを作っておけば、これからの30年も快適かつ健康に過ごせますよ」
『一生、片づく家になる!
散らからない住まいのつくり方』
水越美枝子
¥1,540(エクスナレッジ)
収納スペースが足りない、ものが減らせない、片づけてもリバウンドしてしまう…など、片づけに関する悩みを解決してきた建築家の著者が今まで培った収納のセオリーを紹介。
動線のつくり方、定位置の決め方など、参考になるヒントが満載です。
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文/工藤花衣 写真/中島千絵美
大人のおしゃれ手帖2023年2月号より抜粋
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