【注目映画】映画賞で話題の3作
年に一度のハリウッド映画のお祭り、アカデミー賞に向けて盛り上がる賞レース。
各国の映画賞に輝き、オスカー候補にもなっているバラエティ豊かな話題作を3本集めました。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
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アカデミー賞最多ノミネート ミシェル・ヨーの七変化に興奮!
コインランドリーを経営するエヴリンは税金問題や父親の介護、反抗期の娘との関係などいくつものトラブルを抱えていた。
ある日、マルチバースへとジャンプした彼女は、世界の命運を背負って悪と戦うことになる。
作家性を大事にしてクオリティの高い作品を世に送り出すスタジオA24が手がけた、異色のヒーロー映画。ストーリーを読んだだけでは何のことやら?と感じる突飛な設定だが、「もしもあのとき違う選択をしていたら、違う未来があったかも」と夢想した経験は誰にでもあるはず。
多次元宇宙を舞台に親子愛や夫婦愛を盛り込んで、最後にはじんわりと感動させるアクロバティックな1本。
七変化しながらキレキレのカンフーを披露するミシェル・ヨーが最高にかっこいい。アカデミー賞では作品賞など10部門11ノミネート。
監督:ダニエルズ
出演:ミシェル・ヨー、ステファニー・スー、キー・ホイ・クァン
TOHOシネマズ 日比谷ほか、全国公開中
『フェイブルマンズ』
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巨匠の原体験を映画化映画の本質にも迫る
両親と初めて訪れた映画館で『地上最大のショウ』を観て以来、映画作りに夢中になったサミー・フェイブルマン。
妹や友人たちが出演する映画や家族旅行の記録フィルムを撮り続け、夢をふくらませながら少年は大人へと成長していく。
スピルバーグが自由な魂を持つ音楽家の母と生真面目な父に育てられた子ども時代の実体験をもとに撮った自伝的な作品。
監督が生んだ数々の名作を彷彿とさせるピースが全編にちりばめられ、アカデミー賞では作品賞を含む7部門にノミネート。
カメラを回すことで見たくなかった残酷な現実がフィルムに刻まれることもあれば、現実が思いがけず美化されてしまうこともある。
それこそが映画と映画制作の本質と言えるものなのだろう。
巨匠が完成させた家族の物語であり、映画についての物語だ。
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ、セス・ローゲン
TOHOシネマズ 日比谷ほか、全国公開中
〈Netflix〉
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』
誰もが知る名作に新たな息吹を与えたアニメーション
基地に戻る戦闘機が落とした爆弾によって、息子の命を奪われてしまったゼペット。
木を彫って息子の人形を作ると、翌朝、命が吹き込まれていた。
何度も映像化されている児童文学に、鬼才、ギレルモ・デル・トロが新しい風を吹き込み、ストップモーション・アニメーションとして完成させた。
精霊や擬人化された虫が登場するどこか不穏であやしい映像美は、『シェイプ・オブ・ウォーター』をはじめダークなおとぎ話で観る者を魅了してきたギレルモならではの世界観。
テーマと作風がこれ以上ないほどに合致して、生と死、命をめぐる物語にさらなる広がりと深みを与えている。声優陣にはユアン・マクレガーら豪華キャストが集結。
アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされ、大本命と目されている大人のためのファンタジーだ。
監督:ギレルモ・デル・トロ
声の出演:ユアン・マクレガー、クリストフ・ヴァルツ、グレゴリー・マン
Netflix映画『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』独占配信中
選・文/細谷美香
大人のおしゃれ手帖2023年4月号より抜粋
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