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2024年12月号

2024年11月7日(木)発売
特別価格:1650円(税込)
表紙の人:天海祐希さん

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心理カウンセラーに教わる「嫉妬心」と付き合う方法

大人のおしゃれ手帖編集部

心理カウンセラーに教わる「嫉妬心」と付き合う方法

となりの芝生は青く見える―― 一度ハマると抜け出すのにもひと苦労、悩ましい「嫉妬」。
しかし「嫉妬」には、自分の願望や魅力が隠されていることも。実は気づきのチャンス!
そう説く、根本裕幸さんに嫉妬心と上手に付き合う方法を伺いました。

教えてくれたのは・・・
根本裕幸先生
1972年静岡県出身。97年から神戸メンタルサービス代表・平準司氏に師事し、01年プロカウンセラーデビュー。2015年に独立。講師、作家としても活躍。『敏感すぎるあなたが7日間で自己肯定感をあげる方法』など著書多数。
https://nemotohiroyuki.jp/

うらやましい+ネガティブな感情が「嫉妬」になる

誰かの幸せや成功を耳にしたとき、「なんであの人だけ」「私だって」と、悔しくてもやもやすることはありませんか?
そんな自分の感情に嫌気がさすことも。
 
カウンセラーの根本裕幸さんのもとにも、行き場のない嫉妬心に悩む人が相談に来るそう。
「50代女性が嫉妬で悩むケースは、自分は体力も気力も落ちてなにもできないのに、よその誰かはいつもアクティブで妬ましい、などと、キラキラしている人につい嫉妬してしまうことが多いですね。ある女性は『自分の娘に嫉妬してつらい』と、打ち明けます。
実はこれもよくあることなんです」
 
颯爽とした行動力、若さ、肌の艶や張り、贅肉のない体など、自分にはもうないとわかっているの
に、あきらめきれないジレンマ。
「誰かに嫉妬するのがとても苦しいのは、嫉妬の正体や仕組みがわかっていないからかもしれません」と根本さんが問いかけます。
 
なぜ、こんなに嫉妬に悩む人が多いのか。
それは日本人は自分にきびしく、「こうあらねば」という基準を高く設定しがちだから、と。

「日本人は”恥と嫉妬”の民族だと言われます。
それは幼稚園のころから、○○くんはスキップができるのにあなたはダメね、に始まり、小学校では九九の暗唱を競わされ、中学高校ではテストで優劣がつく。
このような同調圧力が強く、「個」を犠牲にして和を重んじると、自己否定につながるのです」
 
思春期をピークに自己肯定感が下がったままの人は、誰かと比べては嫉妬を募らせていきます。
 
そこから抜けだすには、まずは嫉妬している自分を認めることだと、根本さんが言います。

「誰しも嫉妬する自分の心は見たくないでしょう。多くの人は強がって『これは嫉妬じゃない』と言い訳して目を逸らそうとします。だからこそ、嫉妬していることを認めるのが大切なんです。それが第一関門」

「嫉妬」の正体を探ってみると、「○○さんは、いつもトレンドを押さえたファッションでスタイルも抜群、だんなさんもイケメン。そんな女性をみて『わ、素敵、うらやましい』と思うだけなら、それは嫉妬ではないんです。
そこに『どうせ私なんて、センスもないし、服も何年も買ってない。あの人だけずるい』と、自分を否定するから嫉妬になるのです」


「嫉妬」をひもとくキーワード

自己肯定感
自己肯定感をひと言でいえば、「いまの自分をありのままに受け入れること」「いまの自分にOKを出せること」だと、根本さんは考えます。
どんな人も生まれたばかりの赤ちゃんのころは、自己肯定感は100%でした。
それが学校教育の中で同調圧力を受け、社会に出てからもさまざまな比較や競争で自分に自信がなくなっていく人も。
「自己肯定感が下がるとネガティブな感情があふれて嫉妬しやすくなり、自己肯定感が上がると嫉妬はしなくなります」

競争心
「彼女が頑張ってるから、私もベストを尽くそう」というポジティブな競争心と、相手と比べて自分を貶めるように「どうせ私なんかダメだし」とネガティブなものがあります。
ポジティブな競争心は成長につながりますが、ネガティブだと嫉妬心に火がつくだけです。

自己犠牲
「私のことはいいの、子どもと夫が先」と、自己犠牲が美徳だと思い込み、自分に「新しい服」や「おしゃれ」を禁じている人は、不満がたまりがち。
キラキラした女性を見ると「いい年してちゃらちゃらして!」と嫉妬する。
自己犠牲と嫉妬は密接な関係があります。


「うらやましい」との違いは?

素直に相手の価値を認めて「いいな」「素敵だな」と思えるのが「うらやましい」という感情で、そこに劣等感や自分には価値がないと思いこむ無価値感、相手へのゆがんだ競争心など、否定的な想いが入ると「嫉妬」になるのです。
逆に言えば「嫉妬」から抜けだせば、単に「うらやましい」と思えるようになる、と根本さん。


心がラクになるステップ

1 嫉妬を認める
2 言葉にする
嫉妬する自分がイヤ、だから苦しいという場合、嫉妬から解放される第一歩は、「自分は○○さんに、嫉妬している」と認めること。
「多くの人は強がって、『これは嫉妬じゃない』と言い訳するのですが、だからこそ、まずは認めて、『本当は私も○○がしたい』と言葉にしましょう」と根本さん。

嫉妬する自分に問いかけて対話する
根本さんはカウンセリングルームで、相談者にどんな声をかけるのでしょう。
「それは、『本当はあなたもキラキラしたいんですよね? 新しい洋服だって欲しいですよね?』と、自分の願望に素直になれるように、問いかけます」
とはいえ、嫉妬に悩む人の心の裡うらは複雑で、簡単にはわかりません。
「『私だってキラキラしたいけれど……、でも、無理だと思います』と答えが返ってきたら、少し掘り下げて、なにかやりたいことはありますか?と聞いてみます。そこで『バレエをやってみたい』『社交ダンスも興味がある』と言われたら、やってみましょうと提案します。やりたい気持ちと、それを否定する気持ちは、心理学ではパワーバランスと捉えます。嫉妬で悩む人は、否定する気持ちが強くて、『でもお金がかかる』とか『この年齢では無理』とできない理由を探しがち。つまり、できないと思いたい自分がいるのです。そんなとき、さらに踏み込んで、『本当はやりたいんでしょう?』と本心に迫ってみて、『お金がかからない市民講座とかトライアルがあるかも』と、できる理由を一緒に探していきます」
そうするうちに、家の近所で大人のバレエ教室を見つけたり、社交ダンススタジオを探して、『あれ、意外に安いのね』と、やってみる方向に動き始めます。

嫉妬を手放すには、自分の心を言語化する
嫉妬する心を手放すには、いくつかのメソッドがあります。
ひとつめは、ノートを用意して、自分の心のなかの感情を言語化していきます。
「頭の中で考えようとしても、ネガティブな感情が渦巻くだけでまとまりません。それを1つずつ、『あの人のここがイヤ』『こんなふうにマウントをとられてイラッとした」『彼女が任された仕事は、私のほうがうまくやれるのに』などと、書いていきます。
言語化が難しい場合は、単語だけでもいいでしょう」
ノートに書くのは、物思いにふけりがちな夜よりも朝か昼休みがおすすめ。
自宅では急な来客や電話などが入ると集中できないので、カフェや図書館などで1人きりになれる時間を作ってみましょう。
「空き時間にスマートフォンのメモスペースに箇条書きにしてもいいのですが、できれば直筆が思考をクリアにします。書き終わって読み返したら、手元に残さないこと。だからこそ、正直に胸のうちをさらけ出せるのです」

嫉妬心を磨けば願望がわかり、魅力がきらめく
嫉妬という感情は、ネガティブに捉えがちですが、視点を変えれば、ポジティブな面もあります。
「嫉妬はきちんと自分の心に向き合えば、自分の可能性を教えてくれたり、本当にやりたいことに気づけるチャンスでもあるのです。
MLB(メジャーリーグ)で活躍する大谷翔平選手に嫉妬することはありませんよね?
それは、ぼくやあなたが大谷選手のようになれる可能性はゼロだから。
嫉妬する相手は、自分が本来、もっていたもの、できたはずのことだったり、手を伸ばせば届きそうなものにしかしません。
たとえば、アクティブに仕事をしておしゃれもメイクも上手なご近所さんに嫉妬するのなら、まずは自分もそうなりたいのか、自分に問いかけること。
しばらく服を買っていなかったとしたら、『私だって素敵な服が欲しい』と自分の願望にOKを出すことから始めましょう」
とはいえ、反動で洋服を大人買いするのは、また新たな問題になるので、まずは『欲しい』という
本心を認めるだけにしましょう。
「アクティブに過ごそうと習い事や、仕事をしてもいいのです」
嫉妬という殻を脱ぐと、自分にしかない新たな魅力が見つかるかもしれません。


イラスト/長谷川ひとみ 文/田村幸子

大人のおしゃれ手帖2023年5月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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