【特別対談】佐藤浩市さん × 横浜流星さん
「対等だから「喧嘩」できる」
世代やキャリアの差を超えた熱いタッグの形
昔ながらの「師匠と弟子」でなくとも、先輩と後輩といえば教え、教わる間柄。
その感覚も、時代につれて変化しています。
新作映画『春に散る』で、ボクシングを通してともに人生の壁を打ち砕こうとする間柄を演じた佐藤浩市さん、横浜流星さん。
撮影以来の再会に、固く手を握り合ったおふたり。世代やキャリアの差を超えた熱いタッグの形が、そこにありました。
—ハードな撮影時も、いつも味方でいてくれた。役で抱いた感情は、そのまま僕の思いでした
横浜流星さん(以下、横浜) 僕はもともと格闘技が好きで、この世界に入っていなかったら、きっとそちらの道を目指していたと思います。たった数分の試合で勝負がついてしまう儚さ、そのために命を賭ける格闘家の覚悟には、すごくリスペクトを持っていて……。だから、映画というフィクションの中でもリアルを追求したくて、今回、ボクシングのプロテストに挑戦しました。
佐藤浩市さん(以下、佐藤) 映画の終盤の世界戦(=試合)の場面、20分あるんだよね。普通なら長いなって思うじゃない? でも、完成した映像を見たとき、俺は流星に「まったく長さを感じなかった」というメールを送った。リングの上で殴り合う20分間、そこに、流星が演じる翔吾と相手役の真剣さと、ある種の絶対感が滲んでいたから。だから、リングサイドにいる仁一(佐藤さん演じるセコンド)としても真剣だったし、観客席にいる役者たちだって真剣に見えていたと思う。闘った君らがすべてを作ってくれていたということなんだなと。
横浜 ありがとうございます。格闘家の方たちはよく試合のことを「作品」と表現していて、そこにもどこか俳優に通じるものを感じています。拳を合わせる相手がいなければ成立しないっていうこと自体、そうですよね。撮影に入る前、浩市さんにミットをつけていただいて、一度手合わせをしたことがあったじゃないですか。
佐藤 ああ、やったね。本番も上手く入ったので、ホッとした。
横浜 浩市さん、向き合うとやっぱり圧はすごく感じるんですけど(笑)。でも、その最初のときから「流星のやりたいようにやっていいよ」って言ってくださって……。ハードな試合の撮影で身も心も削られていたときも、浩市さんが寄り添って、いつでも僕の味方でいてくれた。翔吾が仁一に抱いていた思いを、僕もそのまま感じていたんだと思います。
—「背中を見ろ」でも、卑屈になるでもなくお互いの背景を尊重した上で、突っ込んだやり取りができるかどうか
佐藤 まあ、40年前だったらそのポジションに俺がいたわけだから、若い流星がどれだけ大変かというのは、わかるわけですよ。そして、昔なら年上が上から見下ろして、教えるにしても多くを語らず「背中を見ろ」みたいなことだったのが、ボクシングのようにストイックなスポーツの師弟にしても、我々芸能の世界においても、そうした関係は現実的に変わってきているし。
横浜 はい(頷く)。
佐藤 芝居という共通言語があれば年齢は関係ない、って昔は思っていたけど、やっぱりそれぞれが時代の中で何を見、何を聞き、何を感じてきたかは明らかに違う。だから、お互いにそれを尊重しながら、なおかつ突っ込んだところで話ができるかどうか。
横浜 そうですね。もちろん、謙虚な気持ちは持ちつつ、一緒に作品作りをしている間柄としては、相手の懐に飛び込まないと。たとえ先輩だとしても、遠慮しないこと、それはいつも心がけています。そうでないと先輩にも失礼だし、作品のためにも、自分のためにもならないんじゃないかと。
佐藤 そうは言っても、飛び込みたくない相手もいるんじゃない?(笑)
横浜 浩市さんは、本当に飛び込みがいのある方で。
佐藤 フフフ。こういう覚悟が最初から見えると、こちらも「じゃ、来いや」って言いやすい。もちろん、そうでないヤツもいるから時代的には見極めが必要だけど、俺が最初から若者たちに迎合するような卑屈な関係では何の感動も生み出せないし。いい意味での喧嘩腰というか、ファイティングポーズは取っていないとね。お互いに。
〔 映画 〕
『春に散る』
不完全燃焼の人生を背負った老ボクサーと不公平な判定負けに憤る若手ボクサー。運命の出会いを果たしたふたりは、それぞれの「今」を掴むため、捨て身の一戦に挑む。見事にプロテストに合格した横浜さんの迫真の試合シーンをリングサイドで見守りながら「若者の闘いざまを見て大人が腹を括る。そんな話だよなと思った」と佐藤さん。
監督:瀬々敬久
原作:沢木耕太郎『春に散る』(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
出演:佐藤浩市 横浜流星 橋本環奈 坂東龍汰 片岡鶴太郎 哀川翔 窪田正孝 山口智子
配給:ギャガ
全国公開中
俳優・佐藤浩市
1960年生まれ。80年にデビュー。映画代表作に『忠臣蔵外伝 四谷怪談』『壬生義士伝』『64-ロクヨン- 前編/後編』、最近作に『せかいのおきく』『大名倒産』『キングダム 運命の炎』など。
俳優・横浜流星
1996年生まれ。2011年に俳優デビュー。最近の出演作に『流浪の月』『アキラとあきら』『線は、僕を描く』『ヴィレッジ』など。25年NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』に主演。
撮影/平岩亨 スタイリング/伊藤省吾[sitor](横浜さん),喜多尾祥之(佐藤さん)
ヘアメイク/永瀬多壱[VANITES](横浜さん),及川久美(佐藤さん) 文/大谷道子
大人のおしゃれ手帖2023年9月号より抜粋
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