松之助オーナー・平野顕子さんの N.Y.からおすそ分け vol.2
N.Y.流シニアのカラフルおしゃれの楽しみ方
おしゃれは若い頃から大好きです。
実家が能装束の織元だったので、棚にはさまざまな色の生糸がずらり。赤ひとつとっても、何十種類もの赤が並んでいました。
だから色には多少敏感なはずだったと思うのですが……、
ビジネスを始めるようになった60代を迎えるまでは、私はいつも黒と白が中心の装いばかりしていました。
母には「カラスみたいだから、もっと明るい色を着ればいいのに」とよく言われたものです。
靴も大好き。ファッショナブルなデザインのものは売るほど持っていましたが、現在の私はもうすっかりスニーカー派に変わりました。
好きなブランドはパトリック。
色もデザインもキレイなものが多くて、装いを選ばないところが気に入っています。
ファッションはTPOが大切、と育った年代ですが、今の私にはこの言葉は死語になりつつあります。
年齢とともに、とにかく毎日を心地よく過ごすことがいちばん大切。着る服もコットン素材が中心で、着心地がよく、ザクザク洗えるものをセレクトしています。
レストランに行くときは、とびきりかっこいいスニーカー。
サングラスは、装いに合わせてコーディネートするのが定番です。
私にとって、サングラスやメガネは一年中欠かせないアイテム。気に入ったものがあると購入して、コレクションしています。
ニューヨークのシニア(70歳以上を指します)たちは、とにかくナチュラルで、カラフルな色のおしゃれを楽しんでいます。
私もニューヨークに住み始めてからそんな彼女たちがきっかけで、かつては袖を通したことがなかったような明るい色の洋服を纏うようになりました。
華やかな花柄のシャツ、ピンクのTシャツやセーター、赤いパンツなど、気がつけば年齢を増すごとに華やかな色の洋服を選んで着ています。
最近、年齢を重ねた人が華やかな洋服を着ることは、とても理にかなっているなと感じます。年齢に抗って若作りをしたり、美容整形したりする人も多いけれど、シワもたるみも年相応でチャーミングであるし、明るい色の洋服はレフ板効果でくすんだ肌に明るくキレイに映えるんです。
年齢を増すごとに、積極的にカラフルな洋服を着ること、おすすめですよ!
自分が自分らしくいられるには、と自問自答しているときに、ニューヨークの雑誌で活躍している78歳の現役モデルさんの記事が目に止まりました。
その記事には生き方のエッセンスがちりばめられていました。
20歳でモデルになり、30歳でモデルの賞味期限にぶち当たり、それでも暗黙の了解を打ち破って女優業にも挑戦し、再びモデルで活躍されている――。
自分を決して若く見せようとは思わないことを信条に、ナチュラルに自分らしさを失わないようにしているのだとか。仲間のモデルさん、俳優さんは整形に頼り、元の顔と全く違っていく有様を垣間見て悟ったそうです。
「年齢を重ねるとシワもたるみも出る。でもその顔や姿にはそれぞれが歩んできた人生が反映される」
と。
淡いブルーグレーのセーター×同色のスカート×赤のスニーカー。
濃いグレーのコート×黄色のパンツ×赤のバレーシューズ。
トレンチコート×黒に白いラインの入ったアディダスのスポーツパンツ×白のスニーカー。
ジージャン×同色のジーンズ×赤の柄入りTシャツ。
こんな彼女の色の感覚もとても勉強になり、その色使いに触発されました。
黄色も試したことがありませんでしたが、ジーンズにとても合いますよ♡
平野顕子
料理研究家、スイーツ店「松之助」オーナー
京都の能装束織元の家に生まれる。47歳でアメリカ・東コネチカット州立大学に留学。17世紀から伝わるアメリカ・ニューイングランド地方の伝統的なお菓子作りを学び、帰国後、京都・高倉御池に「Café & Pantry 松之助」、東京・代官山に「MATSUNOSUKE N.Y.」と、アップルパイとアメリカンベーキングの専門店をオープン。京都と東京にはお菓子教室を開校。2010年、京都・西陣にパンケーキハウス「カフェ・ラインベック」をオープン。著書に『アメリカンスタイルのアップルパイ・バイブル』(河出書房新社)、『「松之助」オーナー・平野顕子のやってみはったら! 60歳からのサードライフ』(主婦と生活社)など多数。プライベートではひとまわり以上年下のイーゴさんと再婚し、サードライフを過ごす。
text/Emiko Yashiro(atrio)
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