おしゃれの秋！ファッションをじっくり考える映画3選

ファッション・リイマジン

『ファッション・リイマジン』© 2022 Fashion Reimagined Ltd

おしゃれが楽しくなる季節ですが、最近のファッション業界では“サステナブルな服”が注目を集めています。そんなムーブメントを作ったひとり、エイミー・パウニーのドキュメンタリー映画『ファッション・リイマジン』が劇場公開中なので、興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。本作に加えて、ファッションについて考えるヒントになる映画として、『グリードファストファッション帝国の真実』と『繕い裁つ人』の3作を紹介します。

サステナブルな服作りでスタイリッシュに世界を変える
『ファッション・リイマジン』（9月22日より全国公開中）

　2017年4 ⽉、英国ファッション協議会とVOGUEによるその年の英国最優秀新⼈デザイナーに選ばれた「Mother of Pearl」（MOP）のクリエイティブ・ディレクター、エイミー・パウニー。賞金10万ポンドでMOPをサステナブルなブランドに変える決意をしたエイミーの旅を追ったドキュメンタリー映画です。

　大学生の頃からサステナビリティに高い関心を持っていたエイミーですが、当時はファストファッション全盛期で、綿花農場での児童労働や染料等による環境汚染がまかり通っていました。その現実に危機感を抱いていたエイミーは、人にも動物にも環境にも優しいウールやコットンを求めて、商品企画担当のクロエと一緒にオーストリア、ウルグアイ、ペルーへ。原材料から製造過程のすべてがサステナブルな素材を探すことは困難を極めますが、エイミーたちは妥協しません。果たして18カ月後の新コレクション発表に間に合うのでしょうか。

　ブレずに行動する一方で、ファッションの負の影響を知りながら自身がファッション業界にいることの葛藤を吐露するエイミーの嘘偽りのない思いに胸を打たれます。また、80年代からこの問題に取り組んできたキャサリン・ハムネットが登場、かっこよさに惚れ惚れします。

ブラックユーモアでファストファッション業界を風刺
『グリード　ファストファッション帝国の真実』（2019年）

　日本でも人気のあったイギリスのファストファッション・ブランド「TOPSHOP」を覚えていますか？親会社のアルカディア・グループは2020年に破産しましたが、グループのオーナーであるフィリップ・グリーン卿をモデルにした主人公の栄光と転落を描いたブラックコメディです。

　当局から脱税や労働問題を追及されているファストファッションの帝王リチャード・マクリディ卿（スティーヴ・クーガン）は、ギリシャ・ミコノス島で自身の60歳を祝うパーティを盛大に開いて威光を取り戻そうと目論みます。日焼けした肌に真っ白な歯で笑うリチャードは、誕生会のために映画『グラディエーター』を模したセットを作らせ、本物のライオンを用意、スターのそっくりさんまで呼び寄せますが、その裏ではパワハラ三昧。そんな強欲セレブを面白おかしく見せながらも、スリランカやミャンマーの縫製工場で低賃金で働く女性たちや難民の現状といった社会問題をしっかり伝えるマイケル・ウィンターボトム監督の手腕が光ります。

『グリード　ファストファッション帝国の真実』

DVD発売中、デジタル配信中
発売元・販売元：ツイン

世界に一着だけの一生ものの服
『繕い裁つ人』（2015年）

　洋裁店の二代目を描いた池辺葵の人気コミック「繕い裁つ人」の実写映画化で、監督は『しあわせのパン』の三島有紀子。祖母が始めた洋裁店を継いだ南市江（中谷美紀）は、デパートの営業マンの藤井（三浦貴大）からブランド化を進められるも頑なに断り続けています。なぜなら市江は、祖母が顧客のために作った服の仕立て直しやサイズ直しをすることで、世界に一着だけの服が一生ものとなることに満足しているから。そんな市江に、「本当は自分がデザインした服を作りたいはず」と藤井は語りかけますが……。
　自分にとって大切な服とは？服を着る喜びとは？生活に欠かせない「衣」と丁寧に向き合おうと思える良作です。