夏野菜をおいしく食べきる! 生のまま、丸ごと冷凍テクニック
栄養価が高まる旬の夏野菜ですが、たくさん買っても使いきれない……。
そんなとき、保存ができて、よりおいしくなる、いいことずくめの丸ごと冷凍術を、料理研究家の島本美由紀さんから教わります。
手間なし丸ごと冷凍で野菜をおいしく食べきる
野菜は生のまま冷凍すると「栄養も、味も落ちる」というのは大きな誤解、と島本さん。
「冷凍した野菜を調理して、彩りや状態が悪くなって風味も落ちてしまったと思ったなら、
それは冷凍・解凍の仕方に問題あり。
食材に合わせて正しく冷凍すれば、生の状態よりも調理がしやすいうえ、おいしく仕上がります。
さらに、冷凍することで栄養価がアップする食材も。
多くの野菜が生のまま冷凍でき、ゆでたり下味をつけるなどの面倒な下ごしらえも不要。
しかも、凍ったまま調理ができますよ」
切らずに「まるごと冷凍」がポイント
島本さんがおすすめしているのが、切ったりせずにそのまま冷凍する「野菜のまるごと冷凍」。
「冷凍で失敗しない秘訣は、新鮮なうちに水けと空気をできるだけ遮断して、素早く凍らせること。
丸ごとなら、切り口がないので冷凍しても傷みにくく、保存袋に入れるだけなので、とても簡単です。
下ごしらえしないで冷凍すると、使うときに手間がかかると思いがちですが、
実は火が通りやすくなるので、凍ったまま鍋やフライパンに入れていいんです。煮込み料理などにも重宝します。
トマトやきゅうりは凍ったままでも食べられ、すりおろしてシャーベット状にしてもおいしいですよ」
冷凍するとこんなにいいことが!
苦みが減! 甘みがアップしておいしくなる
きのこ類やトマトは凍らせると、うまみ成分がアップして、甘くて濃厚な味わいに。
小松菜やピーマン、ゴーヤなどは苦みやえぐみ、青臭さなどが和らぎ、食べやすくなります。
さらにピーマンは種までやわらかく食べられ、貴重な栄養を丸ごといただけます。
旬の栄養をそのまま! 長期保存できる
冷蔵保存では、野菜の鮮度がどんどん失われていきます。
栄養をたっぷり含んだ旬の野菜は大袋で購入し、使いきれなかった分は冷凍を。
冷凍することで栄養価を高いままキープでき、おいしさを長く楽しめます。
きゅうりやトマトなどの傷みやすい食材は冷凍保存がおすすめです。
ひんやり、ねっとり 食感が変わる
涼感を楽しみたいときは、凍ったままいただいて冷たさを楽しむのもいいですよね。
きゅうりやトマトは、すりおろすと口当たりのいいシャーベット状になるので、その状態を生かした料理もおすすめです。
アボカドは半解凍だとアイスクリームのようななめらかな食感が楽しめます。
調味料を減らして ヘルシーに調理できる
冷凍すると味がしみやすくなるので調味料が控えられ、塩分が気になる大人世代にもぴったりです。
葉ものなどは、カサが減るのでたくさん食べられ、野菜不足の解消にも。
しかも下ゆでが不要なので、極力栄養分を逃がすことなく調理できます。
火通りがいい&凍ったままでも 調理時間を大幅カット
冷凍することで細胞が壊れ、繊維がほぐれやすくなっています。その分、火の通りが早くなり、調理時間を短縮できます。
小松菜などは下ゆでを省けるうえ、シャキシャキとした食感が残せます。
ミニトマトなどは皮がむきやすくなり、凍ったままでもおいしくいただけます。
きのこ&トマトは 栄養価がアップする
きのこ類のうまみ成分「グアニル酸」は、冷凍によって細胞が壊れると流出します。
トマトのうまみ成分である「グルタミン酸」も同様で、冷凍すると流出しやすくなるといわれています。
きのこ類とトマトは冷蔵保存より冷凍したほうが凝縮したうまみが味わえます。
「丸ごと」冷凍野菜のおいしい使い方
うまみが増し、皮をむくのも 煮込むのも簡単に!
-トマト&ミニトマト-
POINT
ミニトマトは、水けをふき取り、ヘタ付きのまま冷凍用の保存袋に入れ、平らにする。
トマトは、ヘタを取ると切り口から傷むので、洗ってから水けをふき取り、丸ごと保存袋に。
[保存期間] 2か月
[解凍方法] 常温で5分解凍か凍ったまま
[食べごろと食べ方] 凍ったままでも食べられる。煮込んでもおいしい。
トマトは凍らせたほうが生の状態よりもうまみ成分がアップ。水にさらせば皮がするりとむけるので、 面倒な湯むきも必要ありません。
皮付きのまま煮込めば、リコピンをより多く摂取でき、トマトソースも時短で完成します。
傷みやすいきゅうりこそ丸ごと冷凍を!
-きゅうり-
POINT
洗って水けをふき取り、板ずりなどはせずにそのまま冷凍用の保存袋に。
[保存期間] 2か月
[解凍方法] 常温で5分解凍か凍ったまま
[食べごろと食べ方] 凍ったまま食べられ、すりおろしてシャーベットにも。
水分の多いきゅうりは傷みやすいので、袋入りを買って残ったら丸ごと冷凍保存を。すりおろしてシャーベットにしても美味。
半解凍の状態で小口切りにして水けを絞れば、酢の物やサラダ、和え物に使えます。
余分な油を吸わなくなり、炒め物がヘルシーに
-なす-
POINT
洗って水けをふき取り、ヘタは取らずにそのまま冷凍用の保存袋に。
[保存期間] 2か月
[解凍方法] 常温で5分解凍
[食べごろと食べ方] 半解凍の状態で切って炒め物や煮物に
加熱するときに、中から出てくる水分が油の吸いすぎを防いでくれるので、炒め物や揚げ物がヘルシーに仕上がります。
溶けると中から水けが染み出てくるので、凍ったままの状態で切って調理するのが◎。
苦みや青臭さが減って食べやすい
-ピーマン-
POINT
洗って水けをふき取り、ヘタや種は取らずにそのまま冷凍用の保存袋に。
[保存期間] 2か月
[解凍方法] 常温で5分解凍か自然解凍、凍ったまま
[食べごろと食べ方] 半解凍の状態で切って炒め物や煮物に
冷凍することで独特の苦みやにおいが気にならなくなり、甘みが増して食べやすくなります。栄養価の高いヘタや種もやわらかくなるので、丸ごと食べられます。
火の通りも早いので、丸ごと煮びたしが即完成。
うまみ成分を引き出し、だし代わりにも
-しいたけ-
POINT
石づきを取ったら洗わずにキッチンペーパーで汚れをふき取って保存袋へ。
[保存期間] 2か月
[解凍方法] 解凍せず凍ったまま
[食べごろと食べ方] 凍った状態で切って炒め物や煮物に
しいたけをはじめ、きのこ類は冷凍するとうまみ成分「グアニル酸」が増すことが知られており、生のまま調理するよりも栄養価も風味もアップします。
凍ったままでも切りやすく、火の通りが早くなるので時短にも。
凍らせると意外なおいしさ! 冷凍アイデア集
黄味がもちもち! 卵かけご飯に
-卵-
キッチンペーパーで汚れをふき取ったら、冷凍用の保存袋へ。
常温で1~2時間解凍してそのまま食べるか、加熱調理に。
割れないように詰め込みすぎに注意して。
そのまま食べてデザートに
-アボカド-
保存袋に入れて冷凍。
包丁が入る程度、常温で10~15分ほど置いてから半分に切って種をとり、はちみつをかけて。
バニラアイスを添えてもおいしい。
ドリンクの氷として
-牛乳-
製氷皿に牛乳を注いで冷凍庫へ。
凍らせた牛乳をグラスに入れ、アイスコーヒーやアイスティーを注ぐ。
溶けるほどにミルクの風味が増し、味わいの変化が楽しめる。
教えてくれたのは……
料理研究家
島本美由紀さん
ラク家事アドバイザー。食品保存のスペシャリストとしてテレビや雑誌を中心に幅広く活躍。『野菜保存のアイデア帖』をはじめ著書多数。
photograph: Yusuke Shirai edit & text: Mizuki Sakaguchi
※大人のおしゃれ手帖2020年6月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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