【神野三鈴さん】
連載 「私的宇宙への旅2」
楽しい世間話のようなときが過ぎた後、「もし手術をするなら、僕は絶対にあなたを助けます。そんなこと医者が言ってはいけないんだけどね、絶対はないから。でも、あなたは私を信じて命を委ねるしかない。だから私も自分の全てを懸けて向き合います」と。
私は手術の日を決めて笑顔で診察室を後にした。
病状も手術のリスクも変わらないのに私の状態は変わっていた。
同じ命懸けの医師がいてくださることで、孤独だった不安が消えて、前に踏み出す勇気と覚悟ができた。
名医というのは病の前に、心を手当てするのかな。
張り詰めていたものが緩んだのか、動脈瘤が見つかってから初めて涙がこぼれていた。
手術の前の晩、その年の演劇賞にノミネートされたと連絡が入った。
あの声を信じてやった作品も対象に入っていた。若いときから導いてくれた演出家の栗山民也さんにどうしてもお礼だけは伝えておきたくて病気のことにはふれず電話した。
上山先生を信じていたけれど、もしもの時に後悔したくなかったのだ。
6時間の手術は上山、太田伸郎医師チームのお陰で大成功。
そして私の動脈瘤は破裂寸前だったそうだ。
後から見せてもらった手術の動画には、弾けんばかりのイクラのような瘤こぶが映っていた。
自分の脳を見るのは変な感じだが、この子たちが私にいろいろ教えてくれていたんだと思うと、憎らしさよりむしろ愛おしさが込み上げてきた。
私達はひとつの宇宙のような生命体で、細胞も意識もその一部分なのだ。
私もあなたもひとつの見事な惑星だ。そして危険が発生すると自分の細胞だけじゃなく、沢山の星達が手を差し伸べてくれるのだ。
私はいつの間にか頭と心と体の細胞がバラバラになって生きていた。
忘れていた大切なことを教えてもらった。
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