カテゴリー

人気タグ

大人のおしゃれ手帖 3月号

大人のおしゃれ手帖

最新号&付録

大人のおしゃれ手帖
2025年3月号

2025年2月7日(金)発売
特別価格:1530円(税込) 
表紙の人:吉田羊さん

2025年3月号

閉じる

記事公開日

この記事の
関連キーワード

大人のおしゃれ手帖
の記事をシェア!

【更年期世代のリアル】
神津まり江さん 「ずっと探していた何かが見つかったような気がする」

大人のおしゃれ手帖編集部

更年期世代のリアル

閉経前後で心や体が大きく変化する「更年期」。
英語では更年期を「The change of life」と表現します。その言葉通り、また新たなステージへ進むこの時期をどう過ごしていったらいいのか—。
聞き手にキュレーターの石田紀佳さんを迎え、さまざまな女性が歩んだ「それぞれの更年期」のエピソードを伺います。

今回お話を伺ったのは・・・
神津まり江さん
1975年生まれ。栄養士であり、自然食と自然療法を実践する母の元で育つ。「婦人画報」等の編集者を経て、フリーランスへ。2015年、植物療法のディプロマ取得。同年、「ルボア フィトテラピースクール」のカリキュラムディレクターに。2022年、植物療法家ユニット、ミルフルールを発足。2024年、「食べるフィトテラピー12か月」と題してワークショップをスタート。自著に『パリジェンヌの薬箱』(朝日新聞出版)がある。


女性ホルモンとともに生きる心と体

更年期世代のリアル

植物の恩恵をセルフケアにも取り入れている植物療法家の神津まり江さん。
49歳の現在、生理周期の不順が1年半ほど続いているが、肉体的にも精神的にも生活に困るような不調はない。
「以前、女性誌の美容担当をしていて、更年期世代の方々のお話をたくさん伺いました。見た目にはとてもイキイキされている方が、実は死にたいくらいの気持ちでいたとか……。人生の10年くらいが辛い期間になる気がして、30代だった私はこれからやってくる更年期に対して不安感を持ちました」

いったい何が根本的な対策になるか、とまり江さんは考えた。
「私も含めて、ほとんどの女性が自分の体に対する知識が、あまりにも不足しているように感じました。人生におけるホルモンバランスは変化していくもので、それが心と体に与える影響を知っていれば、自分でできる準備やケアもあるのではないかと思いました」

美しい人は植物の力を知っている

そんな苦労をしている女性たちの共通項が「なんらかの形で植物に助けを求めている」ということにも気がついた。精油、食事、サプリメント、森林浴や花を育てること。これがまり江さんに強く印象付けられた。
「当時、私にも心身の乱れがありました。男性誌から希望していた女性誌に配属されたので、やりがいはありましたが、1年中空調のきいた室内にいるのは辛かったですね。朝日も夕日も見ずに健康でいるのは難しい、と感じるようになりました」 

常に心の真ん中にぽっかり穴が空いた感じがしていた。しかしその仕事を通じて「植物療法」に出合う。
「ずっと探していた何かが見つかったような、ピースがはまった感じがしました」
まり江さんは決意する。
「私はこれを仕事にせねば。植物の力を暮らしに取り入れることが必要だから」

美容専門の雑誌編集者から、植物療法を中心にした仕事へとシフトチェンジ。38歳だった。その最初の仕事が自著の『パリジェンヌの薬箱』(朝日新聞出版)の出版だった。
「たいていのフランスの女性にはかかりつけの婦人科医がいますが、病院に行く前に、まずハーブ店に行くんです。それが羨ましくて、日本にもそういうところがあったらいいのに、との願いを込めてまとめました」
取材執筆を進めていくにつれて、植物療法の知識不足を痛感し、フランス植物療法普及医学協会認定学校ルボア フィトテラピースクールへ。実は、まり江さんの母は自然療法家であり、幼い頃から一般の病院や薬に頼らず育ってきていた。だから、どんな植物がどんなふうに心身を癒やしてくれるのかは身をもって知っていたのだが、植物療法を体系的に学ぶ必要性を感じたのだ。

「フィトテラピー」とは?

「フィトテラピー」とは、植物に含まれる有効成分を利用して人が持つ自然治癒力に働きかける植物療法。まり江さんが教科書づくりのディレクターを務めるルボアは、日本で唯一のフランス植物療法普及医学協会認定校。

2/3 Pages

40代から次々とやってきた心身の変化

更年期世代のリアル

ところが植物療法の講義初日の朝、まり江さんは息苦しさを覚え、病院へ。診断は原因不明のアナフィラキシーショック。
「その症状は治まりましたが、口や粘膜の乾き、肌の老化、尿漏れ、続いて帯状疱疹など、これまでになかった体の変化に見舞われました。大好きだった焼き菓子のおもな材料が摂れなくなり、高カカオでくしゃみが出るようになったりして。精神的にもイライラしたり、人に会いたくない日が増えました」 
生活を随時見直しながら、体と心の変化を緩和する、ティザンヌ(ハーブティー)やタンチュメール(チンキ)、蒸留水、精油などを取り入れて、しなやかに乗り越えてきた。以前出会った女性たちから聞いた経験談も、変化を受け入れる素地となった。

植物療法のディプロマ取得後は、ルボアの教科書編纂など、カリキュラムディレクターとして活躍。教科書らしからぬうっとりするような図版や写真、フォルダーの質感もまり江さんが選んでいる。
「素敵なものだったらみんなも繰り返し手に取りたくなるだろうなぁと思って作りました。植物たちや書体など、自画自賛しつつ自分もすごく楽しんでいるんです。好きなことをしているとこんなにパフォーマンスが上がるんだなあと気づきました」 
そして40代後半の今、 「生理が50日来なくて、出かけるときは不安ですが、それ以外は中休みなのか、落ち着いています。このまま終息してくれればいいのですが、まだまだわかりませんね」

スイッチを切り替えて講師として立つ

更年期世代のリアル東京23区内に、夫と暮らすまり江さん。夫に「50代は自然のあるところで暮らすのがいいのでは」と言われ、葉山や鎌倉あたりに引っ越す予定だった。しかし、探している途中で都市の緑化団体に出会い、当面は都内で暮らすことを決める。
「今後都市生活者が増えていく中で、多くの人が暮らす場所に植物を豊かに育てることに、積極的に関わっていきたいと思いました。環境こそが第一のフィトテラピーですから」

そして、都市で植物を育てることとともに、体の内側の環境を日常的に調ととのえる「食べるフィトテラピー12か月」の講師を務めることも決めた。それまでのまり江さんは「教科書は精一杯作るから、あとは教える人に委ねる」というスタンスだった。2年前にミルフルールというフィトテラピーユニットを立ち上げてからも「揺るぎなく裏方」に徹してきた。
というのも何度か自分が表に立ったときに、「緊張が強すぎて、これでは体を壊す」と悟ったからだ。
しかし次第に「教科書や文章を書くだけでは伝わらないこともあるのかも。自分が大切にしていることをダイレクトに伝えたい」とも思い始めた。

時は熟し、中目黒のKiyo NATUREで、料理に焦点を当てた植物療法講座が、昨年6月にスタートした。 「ただ暮らしているだけで、その人本来の生命力に満ちた健やかさと美しさが生かされるような、忙しくても持続可能なケア」を、料理の実演をして、味わってもらいながら、リアルに伝えている。素材を丁寧に選び、それらを慈しむように刻み、皮も芯も余すところなく使い、温かく煮炊きする人の姿は美しい。丸ごとの植物の恵みそのもののようだ。

「50歳ってすべてを経験済みってイメージでしたけど、まだまだ新しい発見がありますね。老眼になって戸惑ったり、どうなるかわからないことも多くて、これからが楽しみです(笑)」 
そしてかおるさんは続けて、「人は変わっていきますから」と、きっぱりと言った。だからこそ、「今後は、大人にも絵本の魅力と効用を伝えていきたい」 
その大人の中に、かおるさん自身も含まれているのだろう。 「だんだんと気持ちが自由になってきて、出会いが増えてきました。仕事は大変なこともあるけど、助けてくれる人もいて、とてもありがたいです」

3/3 Pages

〜私を支えるもの〜

更年期世代のリアル植物療法フィトテラピーの学びはまり江さんの暮らしの中心。ローズウォーターは朝、ネロリウォーターは夜に。更年期の症状の変化に合わせ、クラリセージやゼラニウム、パチュリー、ベチバー、サンダルウッドなどの精油を施す。「年齢によって必要な植物は変わります。昔は苦手だったチェストベリーのお茶が更年期になって飲めるようになりました、体は正直ですね」

更年期世代のリアル「月の満ち欠けに合わせてケアをしたり、四立のタイミングで次の季節に備え始めたり、今や当たり前の心地よい習慣です」。月の朔望、二十四節気七十二候が記載されたカレンダーは、目に見えない大切なことを、忙しない日常の中で思い出させてくれ、心身を調える暮らしの道標にもなってくれる存在。「フィトテラピー・ヨガと並ぶ3本柱の1つ。健やかに快適に暮らすための、先人が培ってくれた秀逸なツール、頼もしいパートナーです」

更年期世代のリアルどこのヨガスタジオに行けばいいのか悩んでいたら、夫に「自分が自分の先生になったらいいんじゃない?」と言われ、インストラクター養成講座に。教えることはしていないが、自分で自分の先生として6年。「セルフコンディショニング力が上がりましたし、いつでもヨガをするために、ファッションも、自分らしいスタイルを見出すことができました」


撮影/白井裕介 聞き手・文/石田紀佳 編集/鈴木香里

※大人のおしゃれ手帖2025年2月号から抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

この記事のキーワード

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

ファッション、美容、更年期対策など、50代女性の暮らしを豊かにする記事を毎日更新中!
※記事の画像・文章の無断転載はご遠慮ください

執筆記事一覧

Instagram:@osharetecho
Website:https://osharetecho.com/
お問い合わせ:osharetechoofficial@takarajimasha.co.jp

記事一覧へ戻る

大人のおしゃれ手帖の記事をシェア!

関連記事