五感で楽しむ涼のある暮らし
〜堀惠栄子さんの場合〜
蒸し暑い夏。
日本では昔から、五感に作用するしつらえを通じて涼をとる習慣がありました。
目で見て涼やかなものに、手で触ってさらりとしたものに。
夏を楽しむ暮らしの知恵をご紹介します。
ギャラリーオーナー・堀惠栄子さんの夏の暮らし
幼い頃からかごに魅せられ、様々な素材のかごを集めてきた堀さん。
「幼稚園の通園バッグもかごのバスケット。
10代の修学旅行のカバンもかごでした(笑)。
使うのも集めるのも好きでしたね」
そんな「好き」も高じて、編む手仕事をテーマにギャラリーをオープン。
もちろん自宅にも天然素材で編まれたかごや敷物、置物などが随所に使われています。
特に夏時期は「居心地がいい」と来た人に言われるそう。
「でもうちは、これが一年中なんです。意識して変えるのはソファカバーを麻にすることぐらい」と堀さん。
「かごを長持ちさせるには、しまわないで出しておくのがいちばん。
花やタオルを入れたり、使うのが大事なんです」
中川原信一さんのあけびのかごには、「受筒」を入れて花器に。
竹で編まれた脱衣かご。
人の暮らしに寄り添ってきた手仕事は心地よさを生んでくれる
そもそも天然素材で編まれたかごは、昔から技術が受け継がれ、人の暮らしの道具として作られてきたもの。
だからこそ、季節季節の暮らしに寄り添うのでしょう。
「冬は暖かく、夏は涼しい。
理にかなっているんです」
この取材をしたのは朝顔市の頃。
浅草が近い堀さんの家では、昔から朝顔を買って飾るのが習慣で、それは夏の合図。
「暑い暑いというばかりでなく、暑い時期なりのものを取り入れる。
それが私にとっての夏ならではのしつらえかもしれません」
植木鉢を野菜に変えることも堀さん宅の夏の風物詩。
「いつもはギャラリーのお客様のために花を植えていますが、夏の間はお休みするので野菜を作っています。
この季節はぐんぐん育つから」
トマトときゅうり、なすの収穫を楽しみに。
「寿司バラ」と言われる宮崎県の伝統工芸。
その地域ではこの中にちらし寿司を作り、家族や近所と食べる習慣があるとか。
こんもりと丸い蓋も可愛く、お客様用の湯飲みの収納に。
竹かごにガラスベースを入れて、庭の花を玄関にしつらえた。
「かごは使ってこそ長持ちするので、いろんな使い方を考えますね」
撮影/下村しのぶ 文・編集/竹田理紀[mineO-sha]
※大人のおしゃれ手帖2019年9月号をもとに再編集
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