「よい呼吸」は万病を防ぐカギ

大人のおしゃれ手帖編集部

呼吸には、全身の細胞のひとつひとつに新鮮な酸素を届け、不調のない元気な体にととのえる役割があります。
まずは「よい呼吸」の基本を知りましょう。

呼吸の重要な役割

人間は１分間に約15回、1日に約2万６千回の呼吸をしています。
呼吸は、脳、心臓、筋肉、肌、髪、内臓などに新鮮な酸素を送る役割があり、すべての生命活動の要だといってもいいでしょう。

「よい呼吸と、よくない呼吸では、吸える酸素量が20〜30％変わってきます」（大谷さん）

「よい呼吸」と「よくない呼吸」

「よい呼吸」とは、呼吸筋や横隔膜をしっかり使った、深い呼吸のこと。
では、「よくない呼吸」はどんな呼吸でしょうか。

「ひとつは猫背やストレスで肺の周辺の筋力が衰えたことによる、浅い呼吸です。
酸素は脳や心臓など生命維持に必要な場所に優先的に使われるので、皮膚や筋肉は後回しになります。
その結果、疲れや肩こり、便秘、肥満などが起こり、肌にもよくありません」（大谷さん）

呼吸が浅いと体に不具合が！

① 頭痛や肩こり、便秘、冷え症などのさまざまな不調が起こりやすくなる。
② 自律神経のバランスが乱れてリラックスできなくなる。
③ ストレスやイライラ、不安感など心の不調の原因にもなる。
④ 代謝がダウンすることで、太りやすくやせにくい体になってしまう。

浅い呼吸を深くする「深呼吸ストレッチ」

浅い呼吸を深くするためには、「呼吸筋ストレッチ」で呼吸筋を鍛えることが重要です。

無意識に行う口呼吸をやめて免疫機能をアップ

「鼻には鼻毛、のどや気管にはせん毛という組織があり、空気中の異物やウイルスの侵入を防ぐフィルターの役目を果たしています。
ところが、口呼吸だと鼻毛というフィルターを使えず、口呼吸による乾燥のため、のどや気官のせん毛の免疫機能が低下し、ウイルスや花粉、ハウスダストなどが体内に侵入しやすく、免疫力が下がってしまいます。
鼻呼吸に不慣れな人は、家事などをしながら鼻歌を歌ってみてください。
自然に口が閉じて少しずつ鼻呼吸に慣れていくのでおすすめです」（大谷さん）

自律神経をととのえる作用も

40、50代女性にとって気になる更年期の不調の多くは、自律神経の乱れが原因。
「よい呼吸」には自律神経をととのえる作用もあるので、更年期を快適に過ごす助けになります。

「イライラしたり、眠れないときには“口すぼめ呼吸”をおすすめしています。
副交感神経を優位にして、心身ともにリラックスすることができます」（大谷さん）

眠れないときや、緊張したときに副交感神経のスイッチを入れる「口すぼめ呼吸」

眠れないときや、緊張したときに行うとリラックスできます。

健康な呼吸を妨げるタバコの害

三次喫煙とは、タバコから発生する有害物質が、タバコを消した後にも洋服や髪の毛、部屋の壁やカーペットに残り、それを喫煙していない人が吸い込んでしまうことです。
発がん性物質も多く含まれるので、周囲と自分のよい呼吸のためにも、喫煙者は禁煙を心がけましょう。

寝ている間の呼吸は大丈夫？ 睡眠時無呼吸症候群とは？

睡眠中に10秒以上呼吸が停止する“無呼吸”が、1時間あたり5回以上ある状態を「睡眠時無呼吸症候群」と呼びます。
日中の眠気だけでなく狭心症や脳梗塞のリスクを高めるので、家族やパートナーにいびきや無呼吸を指摘されたら、呼吸器内科を受診しましょう。

「よい呼吸」を習慣に

日々のストレスや不調をやわらげ、心身をととのえる方法として重要な「呼吸」。
多くの大人の女性が悩む便秘や更年期症状などの不調にも効果をもたらします。
普段何げなく行っている呼吸を意識して、免疫力のある元気な体を目指しましょう。

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池袋大谷クリニック院長
大谷義夫さん

准教授として臨床や研究を経て、2009年に呼吸器内科に特化した池袋大谷クリニックを開院。日本呼吸器学会指導医、専門医。著書に『長引くセキはカゼではない』（角川書店）。

Photograph： Akiko Matsuhash（PPI）　illustration：Nagisa Hamada　text：Tamaki Saji
※大人のおしゃれ手帖2014年7月号をもとに再編集しています
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