正しい呼吸で
疲れた体をラクにする!
ストレスや緊張で感じる「息苦しさ」は、深い呼吸ができていないことが原因です。
毎日の呼吸を「深い呼吸」に変えるだけで、体がふわっとラクになって人生まで変わるかも。
教えてくれたのは…
渋谷鍼灸理学治療室代表
森田愛子さん
目次
「深呼吸」が「大呼吸」になっていませんか?
「深呼吸」と聞いて多くの人が思い浮かべるのが、下のイラストのように大きく胸やおなかを膨らませる呼吸です。
「これは全身を使った大呼吸。空気を多く吸えているようで、実はあまり吸えていない浅い呼吸なんです。本物の深呼吸とはまったく違います」(森田さん)
本物の深呼吸とは、鼻から吸った息が、体の中心を通っておなかの底にストンとおさまる呼吸のこと。
深い呼吸の感覚を身につけることが、体をラクにするためにとても重要です。
深呼吸で循環を高めていつも元気な体になる
「息を吸うと体が風船のように膨らみ、吐くとしぼみます。このリズムに従って、体の中心から手先や足先までの末端へ、末端から中心に向かって、血液やリンパ、体液などが全身を循環しています。
この動きがスムーズに行われることで、自然治癒力が上昇して、病気や不調から体を守ることができます」(森田さん)
深く落ちついた呼吸が自然治癒力を高める呼吸なら、浅い呼吸は不調や病気を呼ぶ呼吸。
「浅く、止まりやすい呼吸では血液や体液が十分に循環しないので、筋肉や関節、リンパ、免疫機能、自律神経などすべての働きが低下して、さまざまな不調の芽となります」(森田さん)
NG! 体の緊張が「浅い呼吸」を招く
① 手先や足先の力み
浅い呼吸の発信源となるのは、手先や足先の力みです。息をひそめて頭だけで考え、手先だけを動かすと力みが生まれます。
② 緊張の連鎖が生まれる
手先の緊張が肘、腕、肩に伝わり、足先の緊張は膝から股関節に伝わります。小さな力みから緊張の連鎖が発生します。
③ 呼吸の中枢・体幹が緊張
末端である手足の緊張が、呼吸の通り道のある体幹にまで伝わり、全身が不必要にこわばって呼吸が浅くなります。
こんなクセを直して酸欠状態から抜け出そう
口呼吸のクセ
無意識の口呼吸が習慣になってしまうと、ウイルスや花粉、ハウスダストなどの侵入をガードできません。普段から意識して「鼻から吸って口から吐く」呼吸を行いましょう。
ため息グセ
ため息は、小さな緊張が積み重なった無呼吸状態の反動で起こります。自分が息をしていないと感じたら「1分間呼吸」や「うずくまり呼吸」を試してみましょう。
手先の力みグセ
物を持つ手の力みが緊張の発信源になることも多いもの。歯ブラシやドライヤー、バッグなど、物を持つときに人さし指を外すことで、力みが体に伝わりにくくなります。
すきま時間にできる! こわばった体がラクになる「深呼吸」
ストレスや緊張から体を解放して、不調を改善するためには、深い呼吸がとても重要です。
浅い呼吸から深い呼吸へと息をととのえる「深呼吸」を実際に行ってみましょう。
呼吸が自然に深くなるポーズ
①
うつぶせになって顔は向きやすいほうを向き、肘は肩より下になるように置く。
両くるぶしをつけ、膝は90度に曲げる。
②
腰からひねり、顔の向きと反対方向に両膝を横に倒す。
両膝がバラバラにならないように注意する。
③
下側の足の膝と股関節を曲げて前に出す。
上側の足は膝の位置を変えずに伸ばす。
その姿勢で、ゆっくりと鼻から息を吸って、長く吐く。
全身の力が抜けた3番目のポーズのまま5分ほどゆっくり呼吸をしたら、反対側も同じように行います。
みるみるうちに呼吸が深くなります。人によっては目がパッチリして鼻が通るのを感じるでしょう。
呼吸力が高まる「1分間呼吸」
【初級編】
椅子でもあぐらでもいいのでラクな姿勢で座り、「20秒かけて吸う→20秒息を止める→20秒かけて吐く」を1セットとして行う。
最初は7~8秒から始めて、少しずつ秒数を増やす。
【応用編】
体が少し内巻きになるような姿勢で力を抜いて座り、合掌した姿勢で1分間呼吸を行う。
合掌をすることで、より体の中心の深いところで呼吸を行うことができる。
息を休める「うずくまり呼吸」
①
椅子でもあぐらでもいいので、ラクな姿勢で座り、腕を前に出して軽く手を合わせる。
背中はピンと伸ばしすぎないように、自然に丸まった状態をキープする。
②
腕を体に引き寄せてぴったり密着させ、手の甲を頬の下につけるようにして顔は下を向ける。
肘がおへそにつくくらい体を前に倒しながら、息を吸えるだけ吸う。背中に息が入るような感覚があればOK。
③
体を前に倒した姿勢のまま、次は息をゆっくりと細く、吐けるだけ吐く。
体の中に残っている息をすべて出し切るようなイメージで行うことが大切。吐き切ったら1に戻る。
うずくまり呼吸は、息を吐き切るので、「吸うことはできるけれど、吐くことが苦手」という方にもおすすめの呼吸法です。
1日に3~5セット、慣れてきたら10セットくらい行うといいでしょう。
渋谷鍼灸理学治療室代表
森田愛子さん
呼吸整体師・鍼灸師・按摩マッサージ師・ヨガインストラクター。呼吸に着目した治療を行う「渋谷鍼灸理学治療室(K-Raku Style)」を主宰。著書に『深呼吸のまほう』『いつも呼吸で病気を流す』(ともにワニブックス)。
photograph: Akiko Matsuhash(PPI) illustration:Nagisa Hamada text:Tamaki Saji
※大人のおしゃれ手帖2014年7月号をもとに再編集しています
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この記事を書いた人
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