【著者インタビュー】寺地はるなさん
生きづらさの先にある「もっと自由な」生き方とは?
デビュー10周年を迎えた作家・寺地はるなさん。
最新作『リボンちゃん』では、 “かわいいもの”を愛する主人公・百花(ももか)と伯母の物語を通じて、
「生きづらさ」の先にあるより軽やかな生き方を描いています。
執筆の舞台裏やこれからの挑戦を伺いました。
個性を出そう、自分らしく……だけではしんどい
「生きづらさ」の先にある、自由な生き方を描く
——最新作の『リボンちゃん』は、33歳の誕生日を迎えたばかりの、かわいいものが大好きな主人公の百花とその伯母が、下着のリメイクを通じて身につける人の背中を押し、自分たちも前に進んでいく……という物語です。下着という題材を選んだきっかけは何だったのでしょうか。
寺地はるなさん(以下、寺地) 編集者さんとの打ち合わせで「オーダーメイドの下着」という提案をいただいたんです。私自身は、そこまで下着に興味はなかったんですけど、「興味がない」方が、私はむしろいいと思っていて。自分の中から出たものだけを追いかけていたら、どんどん幅が狭まってしまいます。
ただ、私が最初にイメージした下着は、見る人を意識したような、華やかできれいなものだったんです。でも調べていくと快適さを追求したもの、見た目を重視したもの、体の変化に応じて、ある機能に特化したもの……と、とても多様なものだと分かって、それなら書けるなと思ったんです。小説を書くことって、分からないことを分かろうとするための、手段のひとつでもあるので。
——そこからどんなふうに、物語を膨らませていったのでしょうか。
寺地 私の小説は「生きづらさ」をテーマにしていると言われることが多いのですが、あまり自覚がなかったんですよね。でも、そう言われるということは、周りからはそんなにラクに生きているように見えないのかな?と思って。もちろん世の中は自分用には設計されていないから、それなりの工夫は必要。だけど、自分ではそれほど生きづらさは感じていなかったんです。今回は、その「生きづらさ」のもっと先にあるものみたいなのを書きたくて、百花という主人公ができたんです。
——「生きづらさの先」というのは?
寺地 たとえば「この年齢でこういうファッションはすべきではない、と押しつけられるのが嫌」というのが、生きづらさのひとつだとしますよね。それに対して「勝手にそう言っててください、私には関係ないので」「私は私でいきます」と言えるのが、「もうちょっと先にある人」かなと。
百花は髪に大好きなリボンをつけているけれど、みんなに彼女のような生き方をしてほしいのではなく、違う生き方を選んでもいい。だから今回の作品では、いろんな選択をする女の人たちが出てきます。自分にとってラクであれば、それが「周囲から浮かないようにするため」という理由だとしてもいいんですよね。
「個性を出していこう」「自分らしく生きていこう」というメッセージだけでは、ちょっとしんどいと思うので。この本では「どっちでもいいんだよ」ということを伝えたかったんです。
——過去のインタビューで寺地さんは、「年齢に応じたファッションをすべき」という価値観に抗(あらが)うために、あえてキャラクターものを持つこともある、とおっしゃっていました。
寺地 最近はもう「何歳だから」という前提がなくなってきて。あえて抗うというよりも、自分が好きなもの、かわいいなと思ったものを素直に持つようにしています。最近買ったバッグがフリフリのキラキラで(笑)。子どもにも指摘されるんですけど、そこで「フリフリだけど、かわいいと思ったから」とか言い訳をしないでおこうと。「そうだよ、かわいいでしょ」だけでいいと思うんですよね。
——本作はデビュー10周年記念作品でもあります。作家生活を振り返って、あらためて感じることは?
寺地 必死にやっていたらもう10年経ちました、という感じです。大ヒットした作品があるわけではなく、本を一冊出すごとに新しい読者の方に出会えて、ずっと読んでくれる人が10年いてくれて。それはすごく恵まれていたなあと思います。
この記事を書いた人
この記事を書いた人
ファッション、美容、更年期対策など、50代女性の暮らしを豊かにする記事を毎日更新中!
※記事の画像・文章の無断転載はご遠慮ください
Instagram:@osharetecho
Website:https://osharetecho.com/
お問い合わせ:osharetechoofficial@takarajimasha.co.jp