【内野聖陽さんインタビュー】
57歳でたどり着いた“いい加減”の境地。『リア王』に重ねる、男の喪失と再生
『リア王』は“変化に取り残される人間”の物語

今回、内野さんが演じるリア王は、国を娘たちに譲ったあと、狂気と孤独へ向かっていく王。老いの悲劇として語られがちな作品ですが、内野さんが惹かれるのは別の部分だといいます。
「いちばん響くのは、時代が変わったときに、自分の価値観が通用しなくなる怖さですね。いままで積み上げてきたキャリアがある。なのに、明日から会社に来なくていいよ、この仕事しなくていいよって言われたとき、人はすぐ価値観を変えられますか? たぶん難しいですよね」
昨日まで当たり前だったことが、今日には通じなくなる。そんな感覚は、大人のおしゃれ手帖世代なら誰しも感じたことがあるのでは。
「僕らの世代には、会って話すのが礼儀だろうとか、手紙は自筆だろうとか、そういう感覚があるじゃないですか。でも、それがもう古いと言われたりする。え、そうなの?って(笑)。そういう、ある日突然ルールが変わることこそが、『リア王』の悲劇なんですよ」
単なる老いの物語ではなく、変化に取り残される人間の物語。だからこそこの時代に響くのでしょう。かく言う内野さんも、仕事場でもプライベートでも、若い世代とのギャップを感じることはあるそう。でも、そこで拒絶はしないと話します。
「僕は、なんでそうなるのか知りたくなる。この間、銭湯で大声ではしゃいでいる若者たちがいて、なんでかな?と考えました。ああ、そうか、彼らはコロナ禍にみんなで騒ぐ時間を奪われた世代なのか、と気付きました。だから、現象だけ見て拒否するのは違うなって思うんです。銭湯の若者にはちょっと注意もしましたけどね(笑)」
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