【内野聖陽さんインタビュー】
57歳でたどり着いた“いい加減”の境地。『リア王』に重ねる、男の喪失と再生
舞台、映画、テレビドラマと縦横無尽に活躍する内野聖陽さん。57歳を迎え、満を持して挑むのがシェイクスピアの舞台『リア王』です。いまの心境と、50代でたどり着いた境地を語っていただきました。
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「一生懸命やった先で、手放すことも大事」50代で変わった仕事観
「若い頃は、極限まで張り詰めた状態で芝居に向かうことに美学があって。高層ビルの間にかけられた細い綱の上を渡るみたいな緊張感で演技したい、っていう時代がありました。常にビリビリしていたい、みたいな(笑)。でも50代になって、 “いい加減”にやったほうがいいなって思うようになりました。ラフさや抜けた感じの、良い加減です」
とくに大きなきっかけがあったわけではないけれど、少しずつ肩の力が抜けてきたと話す内野さん。たとえば、7年前、50歳で演じた『きのう何食べた?』もきっかけのひとつ。同性愛者である《ケンジ》を実に生き生きと、楽しそうに演じる様子が話題になりました。
「昭和の“男たるもの”みたいな価値観って、自分のなかにも細胞レベルで残っていたんだとわかりました。でも、あの作品にはそれが一切必要なかった。だからすごく自由だったし、もういまの時代、男とか女とか関係なくて、そのままでいいんだって思えたところはありますね」
肩の力を抜く、ということを考えたとき、内野さんの心に浮かぶのが、名優・仲代達矢さんの姿です。2007年のNHK大河ドラマ『風林火山』で武田信玄の父・信虎を演じていた仲代さん(当時70代半ば)は、壮大なロケ現場でもどこか飄々とされていたと言います。
「僕らから見たら“さすが仲代達矢さんだな”っていう芝居をされるんです。でもご本人は、終わったあとに『いやあ、こんないい加減な芝居でいいんですか?』なんて笑っておられて。もちろん、決して本当に“いい加減”だったわけじゃありませんよ。全部やることをやった人が、最後に風に吹かれながら自由に立っている感じというか。“人事を尽くして天命を待つ”じゃないけど、そういう加減が今になって僕もやっとわかってきた気がします」
圧倒的な経験と技術。積み上げてきたものがあるからこそ、力を抜ける。そんな成熟のあり方に、いまの内野さん自身も近づいているのかもしれません。
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