包丁は月に一度は研ぐべし⁉ 「大阪・堺」の食文化と包丁を学ぶ【上方食文化研究會・Wあさこの大人の社会見学 vol.2】
堺の名産品・庖丁のルーツは古墳造り!?
「堺は庖丁有名やねん」と麻子先生に連れられて訪れたのが「堺刀司(さかいとうじ)」さん。江戸時代後期、文化2年創業の老舗です。8代目の信田尚男さんに「堺の庖丁ってどんな歴史があるんですか?」とカジュアルに尋ねてみたところ、「古墳時代らしいですわ」と信田さん。……え? 古墳?
なんでも、5世紀ごろ仁徳天皇陵古墳(日本最大の古墳にして世界でも最大クラスのお墓)を築造する際に、鋤や鍬などの鉄製の道具が大量に必要となり、このあたりに職人さんたちがたくさん暮らしていたのだそう。言われてみれば確かに、重機なんかもなく、全て、全部、オール人力であんなに大きいものを造っていたわけで、道具ももちろん人の手で作られたはずです。
堺の庖丁が全国的にメジャーとなったのは、江戸時代に入ってから。16世紀にポルトガルからタバコが伝わり、幕府がその生産や流通を管理していました。そのタバコを刻む庖丁が、堺産だったのだそうで「堺極」という刻印が許されていたといいます。
江戸時代後期には、鍛造技術が発達し、繊細な刃物が作れるようになったことから、用途に合わせて使い分けられるようになりました。料理庖丁が発達したのも、同じ頃のようです。
堺刀司さんのショップにほど近い「堺刀司庖丁歴史資料館」では、庖丁の歴史や作り方を学ぶことができます。現在の上皇陛下・上皇后陛下をはじめ、皇室の方々へも献上されています。
名だたる職人さんたちも愛用しているという堺刀司さんの庖丁。ありとあらゆる形のものがあり、信田さんを質問攻めにする麻子先生。最近では、堺の刃物は世界的にも人気で、海外の方が堺刀司さんまで庖丁を買い求めに訪れるそう。
私はというと、お料理は超初心者。一般的なサイズより少し小ぶりの三徳庖丁を愛用しているのですが、切れ味がイマイチ。取材あるあるですが……買っちゃいました。元々持っているものとサイズは同じぐらいなんですが、全ッ然切れ味が違います。
フルステンレスよりは手入れすることで切れ味が長続きすると教えていただき、一部に鉄が使われたタイプを選んだので、油断すると錆びます。使ったらすぐ洗って、拭くように心がけるようにもなりました。
その道のプロに相談しながらお買い物するからこそ、良いものに出合えるんですね。
庖丁のお手入れについて尋ねてみると、月に1度は砥(と)いだほうがいいとのこと。初心者が砥ぎ石を使うのは難しいので、いわゆるシャープナーでも砥がないよりは良いそうです(最近では、砥ぎ石に刃を当てる角度を固定できる補助具もあるようです)。
そして、半年〜1年に一度をめどに、プロに砥いでもらうと切れ味を長くキープできるとのこと。できれば庖丁を購入したお店へ砥ぎ直しに出すのがベストだそうです。堺刀司さんでは、郵送でも受け付けています(堺刀司商品のみ、詳しくはWebサイトでご確認を)。
ちなみに、名入れも可能。私はまだなんだか気恥ずかしくて、名入れはしませんでしたが、もうちょっとお料理できるようになったら、砥ぎ直しに出す際に入れてみようかな……(いつになることやら)。
堺刀司について詳しくはこちらから!
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