更年期障害と混同も!
女性に多い甲状腺の病気とは
「バセドウ病」や「橋本病」という病名を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
これらは女性に多い甲状腺の病気です。
更年期障害と似た症状が多く、勘違いしてしまうことも。
甲状腺は、のどぼとけの下にある小さな臓器で、甲状腺ホルモンをつくり、蓄え、分泌しています。
甲状腺ホルモンは、新陳代謝を活発にしたり、成長や発達を促したりするなど、大切なはたらきがあります。
通常、甲状腺ホルモンの分泌量は一定に保たれていますが、甲状腺のはたらきに異常が起こり、ホルモンの分泌量が多すぎたり少なすぎたりすると、さまざまな症状が現れます。
よくある甲状腺の病気
甲状腺機能亢進症(主にバセドウ病)
「甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)」は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態です。
主な病気として「バセドウ病」があり、20~30代の女性に多く見られます。
必要以上に新陳代謝が活発になるため、疲れやすい、汗をよくかく、暑がりになる、体重の減少、動悸、息切れ、手が震える、脈拍数が増える、のどが渇く、排便の回数が増える、イライラする、などの症状が現れます。
また、甲状腺が腫れ、目が内側から押し出されるように見える「眼球突出」が現れるのもバセドウ病の典型的な症状の一つです。
検査方法は、血液検査をして甲状腺の機能を示すホルモンの数値を調べたり、自己抗体の有無を調べたりします。
治療方法は、抗甲状腺薬(甲状腺ホルモンの合成と分泌を抑える薬)の服用から始めるのが一般的です。
ほかに、アイソトープ(放射性ヨウ素)が入ったカプセルを服用し、甲状腺ホルモンの分泌を抑える方法や、手術で甲状腺の一部または全部を取り除く方法があります。
症状は更年期障害や自律神経失調症と似ているため、これらの病気と勘違いしやすい点に注意が必要です。
甲状腺機能低下症(主に橋本病)
「甲状腺機能低下症」は、甲状腺ホルモンの分泌が不足する状態です。
主な病気として「橋本病」があります(すべての「橋本病」が「甲状腺機能低下症」となるわけではありません)。
「橋本病」は更年期以降の女性に多く見られます。
「甲状腺機能低下症」では、甲状腺ホルモンが不足して新陳代謝が悪くなります。
そのため、疲れやすい、汗をかかない、寒がりになる、体温の低下、体重の増加、息切れ、脈拍数の減少、肌の乾燥、むくみ、便秘、眠気、無気力、月経不順などの症状が現れます。また、甲状腺が腫れてきます。
検査方法は、「甲状腺機能亢進症」と同様に血液検査をして診断します。
「橋本病」の治療方法は、甲状腺機能が正常な場合は、治療は不要です。
ただし、「甲状腺機能低下症」がある場合は、不足している甲状腺ホルモンを薬で服用し、補います。
甲状腺機能が正常でも、甲状腺の腫れが大きい場合は、甲状腺ホルモン剤を服用して腫れを小さくすることもあります。
「甲状腺機能低下症」も、症状が更年期障害や自律神経失調症と似ており、見逃されてしまうことがあります。
(まとめ)
甲状腺の病気は、更年期世代だと「更年期だから調子が悪いのかも?」と思ってしまいがちです。
しかし、甲状腺は私たちが生きていく上で大切なはたらきをしています。
上記の症状が気になるときは甲状腺の病気を疑い、医師に相談することをおすすめします。
甲状腺の病気を疑ったら、まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医・専門医療機関を紹介してもらうのもよいでしょう。
構成・文/大人のおしゃれ手帖編集部 画像協力/PIXTA
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この記事の監修者
たいや内科クリニック 院長加藤大也
1997年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、同大学院医学研究科内分泌・代謝内科学修了。2003年4月から同大学医学部内分泌・代謝内科助手を務める。2010年5月、JA愛知厚生連豊田厚生病院内分泌代謝科病棟部長などを経て2022年5月、たいや内科クリニックを開院。糖尿病専門医・総合内科専門医・甲状腺専門医 藤田医科大学医学部客員講師。医学博士 糖尿病、生活習慣病を中心に、日々診療に取り組む。患者さん目線で分かり易い説明がモットー。
Website:https://taiya-naika.com