更年期を迎えると気になる、漢方生活のはじめ方
女性としての輝きは失いたくない、でもゆらぎは感じる。
そんな繊細な40〜50代の体は、漢方の知恵から生まれた「養生法」でゆるーくケア。
今すぐ始められる、簡単漢方生活を紹介します。
症状は体からのサイン。生活と体質を見直す機会に
原因ははっきりしないけれど、なんとなくさえない体調や肌。
「最近、パッとしないわ」と感じたときこそ、漢方の出番。
「漢方では女性の体には7年周期で変化が訪れると考えます。女性の美や健康は28歳をピークに陰り、35歳頃から肌や髪、婦人科系のトラブル、気持ちのゆらぎを感じる人が増えていきます。特にホルモン分泌に変調をきたしやすい40〜50代は、不定愁訴も出やすい時期。症状は体からのサインだと考えて、生活や体質を見直すチャンスです」(齋藤さん)
不調の改善に薬が絶対に必要、と考えないのも漢方の特徴。
むしろ睡眠、食事、生活習慣などの「養生法」を重要視。
「たとえば頭痛が出たら薬で痛みを抑えるのが西洋医学で、ストレスか寝不足か貧血か? と生活に潜む根本的な原因を探るのが漢方。事実、生活を整えることで、体調がよくなるケースはたくさんあります。また、どんなによい養生もがんばりすぎてはストレスに。“毎日、続けなくては”と力まず、できることからゆるりとはじめてみましょう」
〈漢方の考え方〉
漢方では気(生命エネルギー)、血(血液や栄養分)、水(体液や潤い)が体を構成する成分と考えます。
3つが充実し、しっかり巡っていると体も気分も健康に。逆に不足する、バランスが崩れるとさまざまな不調が現れます。
● 天人合一
自然と人とは一体で、体は自然と同じリズムにあるという意味。漢方ではこの思想を取り入れ、季節の影響も考えながら体調をみます。
● 陰陽平衡
心身は陰陽という2つの相反する性質の要素がバランスをとることで健康を維持している、という中国医学の考え方。
● 心身一如
心と体は一体であり、相互が深く関与しているという考え方。心の不調は体の不調にもつながるため、ストレスケアも大切と考えます。
「陰陽論」って?
万物は相対する陰と陽に分類され、これらのバランスを保つことが大切、という中国の思想。
たとえば太陽と月、男性と女性、背中と腹部、体表&内臓など。漢方医学では陰陽のバランスの乱れが不調を招くと考えます。
今の自分の体に合った生活養生法をチェック!
今の自分の体に合った生活養生法をチェック。
当てはまる項目がもっとも多いタイプを参考に、日々を過ごしましょう。
●「水」の不足タイプ
[ 症状]
□ 髪がパサつき、切れやすい
□ 目尻の細かいシワが気になる
□ 手足や顔がほてる
□ 口やのど、鼻が渇きやすい
□ 乾いた咳が出やすい
□ 夕方に微熱のようなのぼせがある
□ 便が硬くコロコロとしていて出にくい
□ 寝汗をかきやすい
□ 舌の表面に割れ目がある
[ 生活養生のポイント]
● 適度な運動と運動後の水分補給をする
● 深夜0時前には目と脳を休めて就寝
● 食は刺激物や香辛料を控える
● 潤いを養う一部の白い食材を摂る
体は夜、潤いによって修復されるので、睡眠不足は水を消耗。
夜型生活を避け、就寝前に化粧水や美容マスクでしっかり潤いの補給を。
[おすすめの食材]
れんこん、白ごま、豆腐、梨、スイカ、もやし、緑豆、冬瓜、鴨肉、あさり、しじみ、白キクラゲ、ゆりね、はちみつ
●「血」の不足タイプ
[ 症状]
□ 肌が乾燥しやすくシワが増えた
□ 血色が悪くシミが気になる
□ 肌荒れしやすい(にきび、吹き出物)
□ 髪が抜けやすく、白髪が増えた
□ 目が疲れやすく、視力が落ちた
□ 眠りが浅く、早朝に目覚めてしまう
□ 物忘れが増えてきた
□ 動機やめまいを起こしやすい
□ 手足のしびれやこむらがえりがある
[ 生活養生のポイント]
● 骨盤を意識した下半身の運動を心がける
● 長時間、サウナや熱い風呂に入らない
● 酸味と甘みを一緒に摂る
● 赤や黒の食材を摂ることで、血を養う
女性らしさや美を養う血は、夜更かしや目、脳の酷使でも消耗するので注意。
白米に梅干し、酢の物など酸味×甘みは潤いを戻します。
[おすすめの食材]
黒豆、黒米、黒ごま、ひじき、ほうれんそう、
かき、赤身の肉、レバー、プルーン、ライチ、
クコの実、キンシンサイ、黒キクラゲ
●「気」の不足タイプ
[ 症状]
□ 肌がくすんで元気がない
□ 肌のハリや弾力が不足してたるむ
□ 疲れやすく息切れしやすい
□ 体力が落ちて動きが鈍ってきた
□ 少し動いただけで汗をかく
□ 胃腸が弱く、胃もたれや胃下垂がある
□ 普段から眠気が強い
□ 手足や腰などが冷えやすい
□ お腹をくだしやすい
[ 生活養生のポイント]
● 早寝早起き、朝の深呼吸や軽い運動
● 首、腰、足首を冷やさない
● 朝食を摂る
● 元気を養う穀物、豆類を摂る
陽のエネルギーがあふれる朝の過ごし方がもっとも大切。
また、朝食抜き、睡眠不足、過労、汗のかきすぎは気を消耗するので避けて。
[おすすめの食材]
玄米、粟、ハトムギ、大豆、ほたて、しいたけ、山いも、里いも、ぎんなん、くるみ、りんご、はちみつ、高麗人参、なつめ、松の実、にんにく
内からのアプローチ 〜食事〜
漢方では肌は内臓の鏡といわれ、内臓の元気がなくなると美しさも陰ると考えます。
飲み物や食事で体の内側から整えましょう。
〈おすすめ簡単レシピ〉
身近な食材で薬膳料理にトライ。なつめや山いもは代表的な生薬のひとつです。
● 疲れ対策に「山いもとえびのスープ」
材料(2人分)
冷凍むきえび…60g
(A)塩・こしょう…各少々、おろしにんにく…小さじ1/2、酒…大さじ1/2
山いも…200g
水…1/2カップ
しめじ…40g
サラダ油…少々
コンソメスープ…2カップ
しょうゆ…大さじ1
【作り方】
1. 解凍したえびは、Aで下味をつける。
2. 山いもを縦半分に切り、スプーンで削り取って分量の水につけておく。
3. 1のえびとしめじをサラダ油で炒める。
4. 火が通ったら、コンソメスープとしょうゆ、2の山いもを水とともに加えて煮立たせる。
● 冷え対策に「プーアールチャイ」
材料(2人分)
プーアール茶葉…小さじ2杯(ティーバッグでもよい)
なつめの実…2個
(プルーンでも可)
シナモンスティック…1本
黒糖…大さじ1
水…200mL
しょうがの千切り…10g
牛乳…200mL
【作り方】
鍋に牛乳としょうが以外の材料を入れて10分ほど煮出す。
しょうがと牛乳を加えてひと煮立ちさせる。
外からのアプローチ 〜ツボを押す〜
気血の巡りを促すツボ押しはおすすめ。
すきま時間にできて、ツボ周辺を揉むだけでも効果的です。
時間と手間をかけずにできる養生法で、快適な体に!
【 更年期の不調 】
血海(けっかい)
膝のお皿の内側の縁から指3本分上。
10秒×10回、指を前後に動かしながら押し揉む。
太衝(たいしょう)
足の親指と第2指の間の延長線上、甲の高くなったところを6秒×10回、強めに押す。
【だるさ】
百会(ひゃくえ)
頭頂部の両耳を結んだ線と眉間の中央の延長線が交わるところ。
6〜10秒×10回、押す。
労宮(ろうきゅう)
手のひらの真ん中、手を握ったときに中指と薬指の先がふれるあたり。
10秒×10回、押す。
湧泉(ゆうせん)
土踏まずの上部中央、足の指を曲げるとくぼむところを20秒×10回、強く押す。
【冷え性】
陽池(ようち)
手首を反らせたときに、手首の表側にできるシワの中央。
6秒×10回、押し揉む。
太谿(たいけい)
内くるぶしのすぐ後ろ、アキレス腱との間のくぼみ。
6秒×10回、やや痛みを感じる程度の力で押し揉む。
秋に備えましょう
● 秋の美と健康のカギは体の内外からの乾燥対策
秋の美と健康を保つには、乾燥対策がカギ。
乾いた秋の空気は体液を奪い、鼻やのどの渇き、皮膚のかゆみ、風邪をひきやすくなるといったトラブルの原因に。
● 潤いを養う酸味×甘み料理や果物に取り入れて
酸味と甘みを同時に摂ると体の潤いが養われます。
酢豚や酢の物など酢を使う料理を一品加えて。
果物ならば梨、ぶどう、りんご、はちみつレモンもおすすめ。
● 腸の乾燥による便秘には白い食材や植物油が◎
ゆりね、れんこん、かぶ、白ごまなど一部の白い食材や
松の実、アーモンド、くるみ、ごま油など植物性の油も潤いを養い、腸の渇きによる便秘解消に役立ちます。
● 乳液&美容クリームで潤いを逃がさない肌ケア
秋の乾燥は加齢による肌の潤い不足も加速。
潤いを逃がさないよう、朝晩の洗顔後は乳液や美容クリームで肌にふたをして、乾燥や肌荒れ、シワ対策を。
教えてくれたのは・・・
薬日本堂
齋藤友香理さん
薬剤師。10年以上、臨床の現場を経験。
現在、薬日本堂漢方スクール講師として、養生を指導する人材の育成に励む。
photograph: Takashi Uehara (PPI) illustration: Nagisa Hamada text: Kyoko Nagashima (LUSH!)
画像協力/PIXTA
※大人のおしゃれ手帖2015年11月号をもとに再編集したものです。
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この記事を書いた人
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