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大人のおしゃれ手帖 1月号

大人のおしゃれ手帖

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大人のおしゃれ手帖
2025年1月号

2024年12月6日(金)発売
特別価格:1420円(税込)
表紙の人:原田知世さん

2025年1月号

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それぞれの更年期 CASE 1
〜布田恭子さんの場合〜

それぞれの更年期 CASE 1 〜布田恭子さんの場合〜

閉経前後で心や体が大きく変化する「更年期」。
英語では更年期を「The change of life」と表現します。
その言葉通り、また新たなステージへ進むこの時期をどう過ごしていったらいいのか――。
誌面連載「それぞれの更年期」では、聞き手にキュレーターの石田紀佳さんを迎え、
さまざまな女性が歩んだ「それぞれの更年期」のエピソードを伺います。

お話を伺ったのは・・・
布田恭子さん

1973年生まれ。東京家政大学で環境情報を学び卒業。卒業後、「コープかながわ」の勤務を経て、「㈱イオンフォレスト ザ・ボディショップ」に入社。働きながら、2015年に整理収納アドバイザー1級取得。2016年に退職。以降、家事代行サービスで個人宅の清掃を仕事に。2019年クリンネスト2級認定講師の資格を取得する。

「二人」で暮らす楽しさ

「更年期って、この取材を受けるまで意識したことがなかったんです」 
明るくさらりと言う布田恭子さん。

インタビュー前に、多発性子宮筋腫の手術で子宮摘出をしたと聞いていたので、もっと深刻に更年期を受け止めているかと構えていたが、本人はあっけらかんと、MRIの筋腫画像まで見せてくれた。

「(画像を指差して)こんなふうに腸と背骨が圧迫されるほど大きくなっていたので、筋腫だけを取るのではなく、子宮摘出になりました。これを見て、だからすぐにお腹がいっぱいになったり、腰痛もあったのかなと思いました。卵巣は残っているので、ホルモンバランスは崩れることなく、今もまだ閉経していない状態のようです」 

30代のはじめ頃の定期検診で、筋腫はみつかっていたが、悪性ではなく、閉経とともに小さくなるから手術はしない、という診断だったという。
だから、40歳で結婚後、子どもを望んだ。

「仕事が忙しすぎたのもあるのでしょうね。なかなか妊娠しないので、不妊治療も少ししました。でも夫は、無理はしなくていいよ、二人で暮らすのも楽しいじゃない、って言いました。また、手術をすることを義母に伝えたら、あなたの体が大事、と言ってくれたので、子どもはあきらめました」 

手術のときに、月経を止める薬を飲んで「汗がバサーッて出る」経験をしたが、その時だけだった。
48歳の今はいわゆる更年期の体調不良はないという。二人暮らしを大いに楽しんでいる。

憧れの会社で120%全力で働く日々

「今から思えば、意識にはのぼっていなかったけど、体はストレスに反応して、筋腫が大きくなっていたのかもしれません。30代のころ、月経痛がひどくて、仕事中にバックヤードで横になることもあったので……」

しかし、恭子さんはそんな不調をものともせずに働いてきた。
「企業理念に惹かれて入った会社で仕事ができることは喜びでした。もちろん大変なことはあったけど、仕事そのものを嫌だと思ったことはありませんでした。でも、体は黙って受け止めていたんでしょうね」 

自然派化粧品会社の草分けである「ザ ボディショップ」に入社。
店長やエリアマネージャー、本社勤務を経験した。
帰宅は夜の9時を過ぎることも多かった。

「私は家に帰っても仕事のことが頭から離れないタイプです。でもそれが苦痛ではなかったんです。お店が開いていれば、在庫やレジのことで、自分が休みのときにも連絡が来ることは当然だと思っていました」 

学生のころから環境問題に感心があった。
だから、環境問題に取り組む会社の売り上げが落ちることで、世間から「理想を掲げるとうまくまわらない」とみなされたくなかった。
「そのために、120%全力投球していました」 

香港の店舗がアジア一の売り上げだと聞いて、プライベートで同僚と「視察旅行」。
「行ってみたら、香港のお店は夜中まで営業していたんです。私たちも開店時間を長くすればアジア一になれるかも、なんて言ったりしました。それはできないし、しませんでしたが」 

商品の特徴や、自社の環境や社会問題への取り組みを学び、後輩にも伝え、そして売り上げを上げていく。
恭子さんの20代半ばから30代後半までの15年間はまさに仕事一筋だった。

新たな価値観との出合い結婚が意識の大転換に

「でも、結婚はしたくて、お見合いもしましたし、結婚相談所に登録もしました。何人かの人とも会いましたが、ピンとこなかったんです。「いったい私のどこが悪いの!」とどん底な気持ちになりました。一方では、心のどこかで自分にぴったりの人がいるはずだとも思っていました。でも、もう結婚に縁はないのかもと、思い切ってマンションを購入しました。38歳のときでした」 

せっかく素敵なマンションに暮らし始めたが、仕事に行って帰って寝るだけで、掃除もできない。
担当店舗をまわる帰りに服を買ってしまい、部屋には服が溢れる。

ちょうど、その頃、「営業一筋でとくに資格を持っていないから、何か私でもできるものはないか」と見つけたのが「整理収納アドバイザー」の資格。
学んでみると、物だけではなく、仕事や気持ちの整理にも役立つことを感じた。 

そして、あと1か月で40歳というとき、ついに運命の人と出会う。
結婚後も会社勤務を続けていた恭子さんは、夫も同じように会社勤務をしているのに、考えや行動が違うことに驚く。

「夫はオンオフの切り替えがうまく、『末長く続けるには力まずにやるんだよ』と言うのです。私はなんでも全力でやるべきだと思っていたのですが、こんなやり方もあるんだな、それでもいいんだと思えるようになりました」

ずっと120%でやってきた恭子さんにとって、結婚生活は公私ともに意識の大転換だった。
次第に暮らしのリズムを見直す方向へと向かう。

部屋を整え、自分たちの家で過ごす居心地の良さを知る。
そうやって暮らすうちに「やりきったな」と思えて、大好きな会社を「卒業」。

落ち着いた暮らしの中で

部屋を整えて、日常を居心地良くする幸せを知った恭子さんは、
次なる仕事に「整理収納アドバイザー」を選ぶ。

「調べるとこの仕事は家事が得意な方が活躍されていました。私は、働き詰めで、家事はほとんどしてこなかった。だから、経験を積むために、家事代行サービスで個人宅のお掃除の仕事を始めて、掃除の考え方を学ぶクリンネストの資格を取得しました。この内容を独身時代に知っていたら、暮らしを快適に整えることができて、仕事を辞めなくてもよかったかもと思って。1人でも多くの方に伝えたいと思いました」 

今は、家事代行サービスで個人宅の掃除と、整理収納サポートや掃除の資格認定講師をしている。
「会社員時代と違って収入は大幅に減っていますし、不安なこともあります。でも、自分のペースで落ち着いた暮らしができるのが、とても幸せですね。掃除は、時間内で完結するところがいいんです。一回一回やり切って、引きずらないんですね。仕事と暮らしの切り替えができなかった私にとってはちょうどいいのかもしれません」 

恭子さんには次なる課題があるという。
掃除することで、個人的な空間はきれいになっても、地球環境はどうなんだろう? ということだ。

以前の会社では、地球環境問題は常識だった。
例えば、化粧品の原料の環境負荷の基準があり、簡易包装も当たり前だったが、一般社会に出てみると、そうではなかった。
「掃除で知り合う方と地球環境や社会問題について共有するにはどうしたらいいのかと思っていたときに、『2030SDGsカードゲーム』を知りました。多様な問題を理解し、日常生活に取り入れるものです。私もそれを学び、ワークショップを開催するようになりました」 

地球は私たちのたった一つの家。そこを美しいままにしておくにはどうしたらいいか。
地球環境問題に取り組む会社で働いてきた恭子さんは、日常生活の充実を体験する中で、若いころから探し求めていた自分の「やりがい」の原点に立った。

自分の体もかけがえのない地球の一部であると感じながら。

「個人宅に入って行う掃除の仕事は、気を遣うことも多いですが、お互いの信頼関係で長く続けさせていただいています」。
「暮らしを整えると、地球も整う!」という思いで、
「The Tidy Room」として個人宅の掃除や整理収納アドバイスのほか、
掃除の考え方を学ぶ講座、SDGs普及のワークショップを開催している。

私を支えるもの

「ザ・ボディショップ」の創設者であるイギリスの実業家
アニータ・ロディックの著書『BODY AND SOUL-ボディショップの挑戦』。
学生時代に就職活動中に出合った。
企業は社会をよくする力があるという考え方に感銘を受け、
退職した今も、この本に書かれたことを大切にしている。

仕事以外の居場所をつくろうとヨガに通い始めた。
「1時間のレッスンなんですけど、自分の事だけ考える時間を持つことができました」。
取り出しやすいところにマットを収納して、毎晩短時間自宅でもやっている。

聞き手・石田紀佳さん
キュレーター。
手仕事と自然に関わる人の営みを探求。
朝日カルチャーセンター・NHK文化センターなどで季節に沿った手仕事講座を開催。


撮影/白井裕介 文/石田紀佳 編集/鈴木香里

※大人のおしゃれ手帖2022年10月号から抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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