ポスト更年期は個人差が大きい!
“変調タイプ”を目安に対処しよう
漢方では、人間のエネルギーを五臓に例えて考えます。
五臓のどのエネルギーが関わるかで、表れ方が変わり、
更年期・ポスト更年期でも変化するので、チェックしてみて。
目次
「五臓」の働きで不調パターンを知る
漢方では、体のはたらきを「肝・心・脾・肺・腎」の5つに分類し、五臓と呼びます。
臓器の名前と似ていますが、意味は異なります。
「脾」は西洋医学的な「脾臓」ではなく、胃腸に相当します。
五臓は臓器だけでなく、その機能も含めた単位と考えます。
各臓器に気(エネルギー)が蓄えられており、どれが衰えているかわかれば、対策もとりやすくなります。
また、五臓はそれぞれ関連してバランスをとっており、すべての気(エネルギー)を補うには、睡眠とエネルギー補給が必須。
そのうえで個別に対策を立てましょう。
【ふたつの改善ポイント】
❶ 睡眠をしっかり
加齢による気の衰えには、睡眠がなにより大切。
夜の睡眠はもちろん昼間眠くなったら、そのまま少しうとうとするだけでも、失った気をチャージできます。
❷ エネルギーを補う
レジャーで気分はリフレッシュしたけど、体はぐったり…。
そんな時は気を消費している証拠。
数日かけて旅行したあとは、それと同じだけ回復のための休養日をとりましょう。
「腎気(じんき)」「脾気(ひき)」「肺気(はいき)」あなたはどのタイプ?
「今」の体調と照らし合わせて、より多く当てはまる自分のタイプを知っておきましょう。
腎気タイプ
□ 元気や気力がなく、疲れやすい
□ 髪が細くなり、 ボリュームがなくなった
□ 白髪が増えた
□ めまいや耳鳴りがする
□ 以前よりも耳が聞こえづらい
□ 歯周病や歯がぐらつく
□ 転びやすい
□ 歩幅が狭く、よく人に抜かれる
□ 背中が丸くなってきた
□ 膝痛や腰痛など足腰のトラブルが多い
□ 性欲をほとんど感じない
□ トイレを我慢しにくく尿もれしやすい
□ 夜間、トイレに2回以上行く
□ 日中、トイレに頻繁に行く(8回以上)
□ 全身に冷えを感じやすくなった
□ 下半身が太りやすくなった
脾気タイプ
□ なんとなく食欲がないと感じる
□ 食べる量が以前より減った
□ 食べた後すぐ上腹部が痛くなる
□ 食べた後に眠くなる
□ 食べた後に気持ち悪くなる
□ 胃もたれを自覚することが多い
□ 疲れやすくすぐ横になりたくなる
□ 人間ドックなどで 体の栄養状態が悪くなっていた
□ お腹が冷えて痛む
□ 便が硬い、または軟便がち
□ 手足がだるい
□ お腹でチャプチャプと音がすることが多い
□ 立っていると下腹部や陰部が地面に引っ張られる感じがする
□ 直腸脱や子宮脱を経験したことがある
□ たるみやシワが目立ち、化粧ノリが悪い
□ 筋肉は硬くないのに肩こりを自覚する
肺気タイプ
□ 風邪でもないのに咳き込む
□ 痰が出る
□ 呼吸をするのが苦しくなることが多い
□ 息切れがする
□ のどや口が乾くことが多い
□ のどが痛くなりやすい
□ よく風邪をひく
□ 風邪をひくと治りにくい
□ 鼻がつまりやすい
□ よく鼻水が出る
□ 匂いがよくわからない
□ 便秘がち、便がコロコロと硬い
□ 全身の皮膚が荒れて ザラザラする
□ 湿疹ができやすい
□ 顔色が白い
□ 汗が出にくい
「腎気」タイプのメンテナンス法
持って生まれた「腎気」が減ると老化へ
親からもらったエネルギーを蓄えているのが「腎」。
成長、発育、生殖、老化に関係しています。
持って生まれたものなので、50歳を超えると腎の気は減りやすく、そこにハードワークやストレスが重なると、急に老け込んだ印象になってしまいます。
特に女性は冷えや下半身太りなどの症状が見られるのも特徴です。
【生活】
睡眠第一でエネルギーを補給
睡眠の質が重要。起床時間を一定にして体内時計のリセットを。また、疲れ過ぎているときは、入浴も控えて睡眠を優先しましょう。風邪をひくと長引くので、早めに対処すること。
【食事】
甘いものを控え塩味と海藻をとる
「腎」が減ると甘いものでエネルギー補給したくなりますが、とり過ぎは「腎」を弱らせるので控えめに。塩味が「腎」を高めるので、海のものである海藻類や、塩、味噌、醤油が必要。
「脾気」タイプのメンテナンス法
衰えると食欲不振や体のこりにつながる
食事の栄養や休息から日々生み出されるエネルギーが「脾」。
先天の気である「腎」と補完関係で、腎気が衰えがちな50代からはますます重要になります。
「脾」は、消化吸収の機能にかかわっており、衰えると食欲がなくなり、栄養不足の状態に。
筋肉にも栄養がいかなくなりこりやだるさを感じやすくなります。
【生活】
食べ順に注意し腹七分目でとどめる
食事は、肉や魚、野菜などのおかずから箸をつけ、最後に主食を食べましょう。
また、日頃から腹八分目~七分目を意識し、胃腸を疲れさせないこと。
疲れているときは一食抜いてもOK。
【食事】
温め食材と甘み+塩味がおすすめ
油っこいもの、甘いもの、生もの、冷たいものは、胃腸に負担がかかるので控えて。
寒い地方でとれる食材で体を温めましょう。
甘いものを食べたいときは、塩辛い味を添えるのがおすすめ。
「肺気」タイプのメンテナンス法
呼吸器系のほか、便秘の悩みに関係が
呼吸器系や水分代謝にかかわる「肺」。
「肺」が衰えると気の巡り全般が悪くなって大腸の働きにも影響します。
特に空気が乾燥する秋は要注意。
このタイプは、風邪をひいて長引くと老化につながってしまいます。
また、50代から便秘が始まったという人は、「肺」の衰えが関わっており、肌荒れなどにもつながります。
【生活】
乾燥や寒暖差対策で風邪をひかないこと
乾燥した空気でのどを傷めるので、加湿を欠かさないこと。
寝室を温めるなどして、朝晩の冷え込みや温度差にも注意が必要。
お腹まわりを温めるなど風邪対策を万全にしましょう。
【食事】
辛み+酸味がベスト呼吸器に優しい果実も
「肺気」を補うショウガやワサビなどの辛みを、肝気を保護する酸味のある食材とともにとるのが◎。
梨や柿、かりんなども呼吸器の不調をやわらげます。
キンカンのはちみつ漬けもおすすめ。
【教えてくれたのは・・・】
東京女子医大附属東洋医学研究所 助教
森永明倫先生
内科医。漢方の研修や心療内科での診療を経て、2018年より現在の研究所に勤務。
生活習慣などの養生に重点を置いた診療を心がけている。
イラスト/長谷川ひとみ 文/田中絵真
大人のおしゃれ手帖2022年11月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください