「疲れた日はカップ麺でいい」
作家・瀬尾まいこさんが新刊『はじまりのスープ、夏ゼリー』で伝えたいこと
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誰かのことを思ってつくった一皿が相手の心を少しずつほどいていく―。
新刊『はじまりのスープ、夏ゼリー』に込めた思いや、物語を彩る料理について瀬尾まいこさんに伺いました。
疲れた日の夕食はカップラーメンだっていい
「主人公たちを応援しながら、『どんな料理を作ろうかな?』と、一緒にアイデアを出すような気持ちで楽しく書きました」
そう瀬尾まいこさんが語るのは、『はじまりのスープ、夏ゼリー』。
主人公の中森リリーは、料理コンテストで入賞するほどの腕前をもち、相手を思いやった料理をつくれるにもかかわらず、幼い頃の経験から自分の価値を信じられずにいる女性です。
これまでも作中で温かな食卓を描くことが多かった瀬尾さんですが、今回は意識的に〝料理〟を物語の軸に据えています。
「料理って毎日のことだから、ときには重荷にもなる。ママ友とも、よく『自分のつくる味に飽きてきたよね』と話していて。どうしたらもっと料理を楽しくできるのかな?と考えていたこと。そして、ひとつの才能を持つ女の子を書いてみたい気持ち。そのふたつが重なって、この物語になりました」
あさりと新玉ねぎのスープ、角煮風に味付けした親子丼……と、登場するおいしそうな料理は、瀬尾さんの想像から生まれたもの。
一方、本作では〝丁寧な料理〟ばかりが並ぶわけではありません。リリーがパックご飯で食事を済ませる日もあれば、料理を教えながら、「忙しいときはフリーズドライのみそ汁でいい」と話す場面もあります。
「リリーの言葉は、私自身やママ友にも伝えたい言葉。疲れた日くらいは夕飯がカップラーメンだっていいのに、『それはよくない』と自分で自分を縛ってしまう。その気持ちを解放したいとずっと思っていました」
作品を通して描きたかったのは、料理の正しさではなく、誰かを思ってつくる時間の温かさ。
「毎日のご飯づくりは大変だけれど、誰かを思ってつくったものはきっと心に届く。それに、『おいしい』と言われると、また明日もつくろうと思えるんですよね。その嬉しさを、楽しい物語として描きたかったんです」
デビューから25年。キャリアを積んだ今だからこそ、意識していることも。
「年とともについ難しい話や道徳的な話をしたくなりがちだけど、そうはなりたくない。読書は決して堅苦しいものでも、高尚なものでもなくて、楽しいもの。押しつけがましくならずに、読んだ後に心が軽くなったり、弾んだりする物語を届けられればと思っています」
『はじまりのスープ、夏ゼリー』
瀬尾まいこ
¥1,870(新潮社)
料理コンテストの賞金や単発バイトで生計を立てる26 歳の中森リリー。ある日、コンテストで会った男にスープを作ったら、突然泣かれてしまい……。
タイトルの「ゼリー」は、瀬尾さんが好きなもののひとつ。「見た目もきれいで、簡単にできるところも好き」
〔執筆のお供〕
めちゃくちゃおいしいヘルシーおやつ

「パイナップルやマンゴーなどいろいろな種類がありますが、いちばん好きなのはみかん。常に買い置きを切らさないようにしています」
〔私の好きなもの〕
目標は、47 都道府県すべてを巡ること

「訪れた場所は白地図に色を塗っていて、いつか完成させたい。旅先では書店にも立ち寄るようにしています。“ご当地ぬいぐるみ”を買ってきて、部屋に並べるのも旅の楽しみ」
photograph: Chihaya Kaminokawa(portrait), Maya Kajita[STUDIO e7](still) text: Hanae Kudo
大人のおしゃれ手帖2026年10月号より抜粋
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