2022.12

08

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オトナトモダチ —相互交感—
俳優・小雪さん × 俳優・田中偉登さん

人と出会い、この時代を共有しながら、ときにひとつの目標に向かう—大人年代の今こそ試されるコミュニケーションのあり方を紐解く対談連載。
今回は、新作映画で人生の困難をともに乗り越える母と子を演じたおふたりが登場。
手を取り合い、頼り頼られて生きることは、こんなにも清々しいのです。


—役のこともお話しするけど、お互いに他愛もないことを話しながら過ごす時間が大事。

小雪さん(以下、小雪) 息子よ、久しぶり! ずいぶん風貌が変わったね。

田中偉登さん(以下、田中) すみません、今撮影している役のためですよ(笑)。またお会いできてうれしいです。

小雪 ちゃんと食べてる?

田中 
はい。ひとり暮らしを始める僕に、映画の撮影中もずっとこんなふうに声をかけてくださいましたよね。今回の作品は、視力と聴力を失った方で初めて大学教授になった福島智さとし先生の半生の物語。僕はご本人にお会いして話を伺えたのでやりやすかったところもありますが、やっぱりとんでもないプレッシャーも感じていて……。
だから、小雪さんが温かく接してくださって、本当に助かりました。

小雪 私はお母さまの令子さんにはお会いできなかったので手探りでしたが、子どもを持つ親として共感できるところもたくさんあったので、あとは私が感じたように表現していきました。でも、田中くんがちゃんと役として現場にいてくれたので、真摯な気持ちで作品作りに挑めたと思います。聞こえない、見えない動きをするのは怖かったでしょう?

田中 怖かったです。最初は目を完全に閉じていたのですが、眼球が反射的に動いてしまうのが瞼の上からでもわかってしまい。

小雪 じゃあどうしたらいいのか、そういう物理的なこともよく相談したよね。実際の令子さんと智さんもそうだったのかもしれない。

田中 智はお母さんに「お母ちゃん、ちゃんとしいや」って小言を言ったりすることが多いのですが、僕もセリフにないことをよく小雪さんに言っていた気がします。小雪さんはずっとテレビで拝見していてクールな印象だったので、もしかしてちょっと怖いのかな?と思っていたのですが、会ってみたら本当に「お母ちゃん」で。

小雪 アハハ。常にふたりでいたから、掛け合いも自然だったと思いますよ。もちろん役にもよるし、俳優さんにもいろんな方がいるので空気感の作り方はさまざまだけど、私はだいたい自然にそこにいる感じかな……。役のこともお話しするけど、お互いに他愛もないことを話しながら過ごす時間が大事。そうして生み出せる距離感もありますしね。

—ひとりでいるときもずっと他者を身近に感じる。
守っていると思う人に、逆に守られていたり

田中 この作品で語られる「人は他者に満たしてもらう存在である」という感覚、僕は正直、これまで感じたことがなかったんです。高校生の頃までは、一匹狼みたいな気分でとんがってて。でも俳優の仕事のおかげで、芝居をする相手がいて、それを支えてくれる方々がいて……多くの人が自分に関わっていることを、やっと実感できるようになりました。

小雪 私は逆に、どんなときも他者を身近に感じていますね。家族にしても、私が家族の世話をしていると思いきや、実は家族が私のケアをしてくれてるなって感じるときも。

田中 孤独を感じざるを得ない役でしたが、小雪さんの腕を掴むだけで、すごく安心したんです。智としてというより、田中偉登として小雪さんに甘えていたのかな。僕は言葉でのコミュニケーションが苦手で、遠慮して聞きたいことが聞けなかったりするタイプなんですが……。

小雪 私はハッキリと相手に伝えるほうで、年齢とか肩書きとか関係なく質問があったらしちゃったり。失礼だと思われることがあるかもしれないけれど……。

田中 安定感、ありますよね。うらやましい。

小雪 そう? めんどくさいよー(笑)。でも、誰にとっても20歳くらいの頃って、悩んで当たり前の時期ですよね。田中さんは人として素直だし、これからいかようにも変貌できるポテンシャルを秘めている。自分にないものや自身の弱い部分を認められるのって、強さですし。

田中 ありがとうございます。今日は褒められて気持ちが上がりました(笑)。

小雪 フフフ、上げてこ! 肉じゃがのレシピ、あとで送るからね。


『桜色の風が咲く』

《そうや。僕は、考えることができる》。困難に直面しながらも生きること、学ぶことを諦めなかった東京大学教授・福島智さんの成長の軌跡を映画化。母・令子さんを演じながら「母というひとりの大人が彼にとっての光になっていなければと思っていました」と小雪さん。

監督:松本准平 脚本:横幕智裕 製作総指揮・プロデューサー:結城崇史
出演:小雪 田中偉登 吉沢悠朝倉あき/リリー・フランキー
配給:ギャガ 
製作:スローネ/キャラバンピクチャーズ シネスイッチ銀座、ユーロスペース、新宿ピカデリー他で公開中


俳優・小雪
1976年生まれ。モデル活動を経て98年にデビュー。俳優活動と並行し、近年は食やライフスタイルへの関心を高め、夫で俳優の松山ケンイチとともにmomijiを発足。ドキュメンタリー『小雪と発酵おばあちゃん』(NHK)も話題に。

俳優・田中偉登
2000年生まれ。幼少時からモデルとして活動し始め、12年、『13歳のハローワーク』で俳優デビュー。同年、5月には『宇宙兄弟』で映画デビューも果たす。連続テレビ小説『エール』『ちむどんどん』、映画『朝が来る』などに出演し注目を集めている。


撮影/神谷愛実[TRIVAL] スタイリング/カドワキ ジュン子[impress +](小雪さん),前田勇弥(田中さん)
ヘアメイク/美舟[SIGNO](小雪さん),小浜田吾央(田中さん) 文/大谷道子

大人のおしゃれ手帖2022年12月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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