北欧便りvol.3 キッチンは社交場!
北欧の国ノルウェーはオスロから、大人世代に伝えたい暮らしのヒントをレポートする「北欧便り」。
第3回は「キッチン」。
ノルウェー女性はキッチンが大好き。筆者がノルウェー人のお宅に招かれるとキッチンに通されることが多いんですよね。家の中心に、広いスペースでど〜んと存在するノルウェーのキッチンは、リビングルームの役割も兼ねているらしいのです。来客に「見てもらう」要素が強いこの国のキッチンは、北欧ならではの機能性とデザイン性に富んでいます。5年ごとにキッチンをリフォームするマニアもいるという噂を頼りに、ノルウェーの一般家庭のキッチンの様子を2回にわたってお届けいたします。
暖炉つきのキッチンでほっこりと料理を楽しむ
オスロ市内の学校で副学長を努めるシーヴ・マリリン・クリスチャンセンさんは、3年前約100平米のマンションを購入。その時、決め手となったのが「大きなキッチン」と言います。
「私が料理好きだからというのもありますが、ノルウェー人はキッチンが大好きなんです。この国は、冬が長いので家の中で過ごす時間が多いんですね。その時にキッチンであれこれするのは、心地いいし楽しいんです。それに、ノルウェー人はいつもキッチンをキレイに整えておくことに関心が高い。ここに人を招いてワイワイやる、一種の社交場でもあるのでね。アジア諸国と違って、ノルウェーでは外食はとても高くつくので、頻繁にレストランに行くようなことはしません。基本的に自炊する人が多いんですよ。」
4、5年ごとに最新のキッチンにリニューアルする人もいるって聞いたことがあるのですが、本当ですか?
「そうだと思います(笑)。そんなに頻繁に?って驚かれるかもしれないけれど、ラミネート加工のキッチンって長持ちしないでしょう? そのぐらいの頻度でキッチンを総とっかえする人はいますね。家やマンションを購入する時には最低キッチンは総とっかえします。ノルウェー人にとって、家はとても重要。なかでもキッチンは大切な場所だから、たびたびインテリアを変えたり、リフォームしたりするんです」
キッチンは居心地のよい場所であり、ちょっとした社交場でもあるんですね。衣食住でいうと断然「住まい」にお金をかけるのがノルウェー流。キッチンには情熱を注ぐ人が多く、街のキッチンインテリアのショールームはいつもにぎわっています。ほとんどの女性が就労しているノルウェーでは、仕事、家族の世話、家事と女性は非常に忙しい毎日を送っています。機能的で効率的に料理ができる居心地のよい美しいキッチンは、女性の気分を上げてくれる強力な味方といえるのではないでしょうか。
気に入っているところは暖炉だとシーヴさん。キッチンに暖炉があるのはとても北欧っぽいのだ。冬でも暖かく、居心地よく、キッチンに立って料理ができる。
コーヒーマシンと電子レンジはビルトインタイプ。ノルウェー人は毎日たくさんのコーヒーを飲むので高機能のコーヒーマシンは欠かせない。
コーヒーマシン左手には日常使いの食器棚。ノルウェーではこのように見せない収納が一般的。
シーヴさんが毎朝食べる典型的なノルウェーの朝食。 クネッケブローという平たいクラッカー状の乾パンに豚のレバーペーストやきゅうり、チーズ、パプリカなどをのせたオープンサンド。ロロス地方のオーガニック牛乳、女性に必須というオメガ3のサプリメント。シンプルで素朴なメニューだが、あわただしい朝も、ささっと準備できて栄養価も考えられている。
こちらは昼食のお弁当。驚くことだがノルウェーでは朝食と昼食は全く同じものを食べる。上の朝食メニューにヨーグルトを追加してお弁当箱に入れて職場に持っていく。ノルウェーは物価の高さが世界トップクラス。職場や学校にはこうして毎日お弁当を持参する人が多いのだ。
ノルウェー人がよく使うキッチンツール。左からゆで卵を切るエッグカッター、パンを切るための木のカットボード(サステナブルを意識してまな板は木製が多い)、チーズスライサー。なかでもチーズスライサーはノルウェー発祥の有名な調理器具だ。大きなチーズの塊をこれで薄くスライスしていきパンにのせる。
写真、文:古澤恭子
出版社で女性誌編集に携わった後、2010年北欧に移住。現在ノルウェー在住、執筆業を中心にメディアのコーディネーターとしても活動。
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