【大人のための絵本】vol.7
モデル・アンヌさんが推す「思い切りたいときに読みたい本」
自分を信じて!
4月。新生活のスタートと共に、思い切ってみる、挑戦してみる、なんてことも増える時期ですね。
私も先日、思い切りました。
もともと私は、石橋を叩いて渡るタイプです。成功よりも、失敗した時のことを必要以上に考えてしまうんです。用心しすぎて、渡れるはずの橋も壊してしまったなんてことも過去にはありました。チャンスを逃してしまったんですね。
歳月が経ち、大人になった今、それでは勿体ないと思えるようになりました。橋の向こうは素晴らしい世界が待っているかもしれないから。
そんなわけで先日、一通のメールに勇気を出して「はい」と返事をしたのです。
私は、ここ一年の間、絵本の魅力をより適切に伝えていきたいと思い、読書アドバイザーの講座を受けていました。絵本のみならず、本を取り巻く環境がいかに広いかということを学べて、大変刺激になりました。メールは、その主催者から届いたもの。内容は、修了式のスピーチのお願いです。
今までの私なら、断っていたでしょう。人前で話すのは不慣れだから、上手な人は他にいるからみっともないなどと、できない理由ばかりを考えて。
でも、その時、桜の開花に導かれるように私の心も開いて、僭越ながらとお受けしたのです。
修了式の当日。スピーチをするのは四人。最初の三人は、皆さん朗々と語られていて素晴らしいものでした。最後は私。とにかくできるだけのことはやろう、講座の感想を素直に伝えようと、気後れする気持ちを抑えてマイクの前へ。
スピーチを終えた時、私の目の前にあったのは、出来たという達成感と受講生たちの穏やかな表情。心配し過ぎることはなかったのかも。世界が広がった思いでしたよ。
さて、そんなふうに勇気をもって行動したい人への2冊です。自分を信じて!
『綱渡りの男』
作/モーディカイ・ガースティン 訳/川本三郎(小峰書店)1,760円
今はなきニューヨークのツインタワー。その間をひとりの大道芸人が渡ろうと考えます。綱渡りで! 警察たちの目を盗み、夜間に準備。朝日が差し込むと同時に彼は綱の上へ。地上400m。風が吹き、海が見下ろせ、カモメが飛び交います。命綱はなく、バランス棒だけを頼りに、1時間行ったり来たり、はては踊ってみたり。ページを捲るごとに手に汗を握ります。勇気を出して挑戦してみると、そこには自由が。実話に基づいた一冊です。
『うきわねこ』
文/蜂飼耳(はちかいみみ) 絵/牧野千穂(ブロンズ新社)1,540円
海も川もプールもない街に住む仔猫のえびお。ある日おじいちゃんから小包を受け取ります。中には浮き輪が。満月の夜を楽しみに待つようメッセージが入っています。一体どんな浮き輪なのでしょう。えびおが体験する現実ともファンタジーともいえる大冒険に寄り添うおじいちゃん。思い切ってみると世界はずっと面白い、と教わるよう。絵もたまらなくキュートです。
選・文/アンヌ
モデル、絵本ソムリエ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒業。
モデルのほかエッセイやコラムの執筆などで活躍。
最近は地域で絵本の読み聞かせ活動も行っている。
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