新常識!
これが“美肌”のための正しいケア習慣
肌や髪に良いとされるケアの方法は多数あります。
「常識」として知られていることでも、実は皮膚科学的に間違っている、ということも。
せっかくのケアをむだにしないために、「本当に正しいケア」を皮膚科医の吉木伸子先生に伺いました。
教えてくれたのは……
吉木伸子先生
皮膚科・美容皮膚科「よしき皮膚科クリニック銀座」院長。皮膚科医。科学的根拠にもとづいた明快なスキンケア・ヘアケアの解説が、長年幅広い世代に支持される。主な著書に『素肌美人になれる 正しいスキンケア事典』『一生ものの美肌をつくる 正しいエイジングケア事典』(ともに高橋書店)、『美容皮膚科医が教える大人のヘアケア再入門』(青春出版社)など。
常識? それとも思い込み?
あなたの美容知識を再チェック!
次のリストは、一般的に知られている「スキンケアの常識」。
それぞれが合っているかどうか、〇△×の中から答えを選んでみて。
「そうだったの!?」という驚きの答えがきっとあるはず。
答えと詳しい解説は次項から!
〈クレンジング・洗顔〉
1. メイクはクレンジングでしっかり落とす
2. 洗顔回数を減らして「肌の善玉菌」をキープ
3. 洗顔はぬるま湯、仕上げに冷水を
4. シャワーで顔を洗い流すのはダメ
〈基礎化粧品でのケア〉
5. 洗顔後はすぐ、化粧水をつけないとダメ
6. 化粧水は時間をおいて浸透させ、乳液でフタを
7. 化粧水はコットンでパッティング
8. 化粧水はたっぷり使う
9. 保湿をすればシワは少なくなる
10. 肌が弱いので「自然派化粧品」に
11. スキンケアは、たるみを引き上げるように
12. ピーリングを習慣にすると新陳代謝もアップする
〈UVケア〉
13. 化粧下地、ファンデーションなど、全部にUVカットの成分が含まれていたほうがいい
14. マスクや服の下は日焼けしない
15. UVケアをすると骨が弱くなる
16. 紫外線吸収剤は肌によくない
17. 目から入った紫外線で皮膚も老化する
〈クレンジング・洗顔〉
クレンジングや洗顔は、実はいちばん肌に負担がかかりやすいプロセス。
できるだけ肌にやさしく、落とすべきものをきちんと落とすことが、美肌につながります。
1. メイクはクレンジングでしっかり落とす
×「6割落とす」くらいの気持ちで手早く
「いちばん多いのが、クレンジングのトラブルです」と吉木先生。
メイクをしっかり落とそうと肌をこする、時間をかける、なかにはマッサージする人もいますが、これは間違い。
クレンジング料はメイクの油分を浮かせることが目的なので、「6割落とす」くらいの気持ちで。
「クレンジングからすすぎまで約1分で終わらせるのを目安に。残った汚れは石けん洗顔で落とせるので心配いりません」
2. 洗顔回数を減らして「肌の善玉菌」をキープ
× 常在菌は秒単位で分裂。1日2回はきちんと洗って
皮膚の毛穴に住み着いている常在菌は、雑菌の繁殖を防ぐ役割をもつことから「善玉菌」とも呼ばれています。
洗顔すると、ある程度の善玉菌は失われますが、すべてなくなることはありません。
肌に残った常在菌は数秒単位で増殖し、元のように善玉菌の被膜をつくってくれますから、無理に洗顔回数を減らす必要はなし。
「1日2回はきちんと洗って雑菌を落としたほうが健康な肌につながります」
3. 洗顔はぬるま湯、仕上げに冷水を
△ 熱すぎも冷たすぎも肌の刺激に
「洗顔時のお湯の温度が高すぎると毛穴が開いて赤ら顔の原因に、低すぎても脂が固まり汚れが落ちにくいので、36℃くらいの人肌程度がベストです」。
人肌というと手で触れて熱くも冷たくもない温度。
ぬるいお湯、と思っていると温度が高くなりがちなので気をつけて。
洗顔の仕上げに冷水をかける人もいますが、毛穴引き締め効果は一時的。
急激な温度変化は肌への刺激になるのでやめたほうがよいでしょう。
4. シャワーで顔を洗い流すのはダメ
× 弱めのシャワーならむしろ◎
入浴時の洗顔はシャワーで洗い流すとラク。
でも皮脂の落とし過ぎにはならないでしょうか?
「かなり強い水流を顔に長時間当てなければ、その心配はないでしょう。それよりも強い水流による“刺激”が問題です」。
ただ、弱めのシャワーなら、むしろ手による摩擦刺激を減らせるのでむしろおすすめ。
シャワーの温度は人肌程度にすることを忘れずに。
〈基礎化粧品でのケア〉
年を重ねるほど肌の悩みは増えますが、やみくもに基礎化粧品を使っても逆効果のことも。
何のために、どの基礎化粧品を使うのかを今一度見直してみましょう。
5. 洗顔後はすぐ、化粧水をつけないとダメ
× 翌朝の潤い度合いは変わらない
健康な肌の角層には約20~30%の水分が含まれています。
しかし洗顔後、すぐに化粧水をつけても、そのまま角層の水分になるわけではありません。
ほとんどは時間がたてば蒸発してしまうのです。
入浴後すぐに保湿剤を塗るのと、入浴2時間後に塗るのとでは翌朝の肌の潤い度合いは変わらないというデータもあるそう。
保湿は、つけるタイミングよりも「保湿成分」を確認して。
表皮のいちばん上にあるのが「角層」。
わずか0.02㎜の層ですが、異物の侵入を防ぎ、肌内部からの水分の蒸発を防ぐ役割があります。
6. 化粧水は時間をおいて浸透させ、乳液でフタを
× 浸透時間は不要。「層」のイメージは捨てて
化粧水をつけて“浸透時間”をおくと、化粧品中の水分が蒸発するうえ、そのときに肌内部の水分も一緒に蒸発することも。
また乳液をつけても、油分の水分保持力は「フタ」になるほどは高くないのです。
「化粧品が肌にのせた順で“層”を成すことはないので、時間をおかずに次々に肌にのせればOKです」。
のせた直後の肌はベタベタすることもありますが、時間とともに混ざるので問題ありません。
7. 化粧水はコットンでパッティング
× 肌への刺激になることも
たとえ上質なコットンでも、化粧水を含ませてパッティングすると肌のダメージに。
角層が傷つくだけでなく、炎症を起こして黒ずんだりすることもあります。
また、“手で化粧水をつけると手に吸収される”とか“ムラになる”というのも俗説。
「手に吸収されて水がすくえないということはないですよね。むしろ手で包み込むようにつけたほうが、肌への刺激は少なくなります」
8. 化粧水はたっぷり使う
× 水分で余計乾燥することも。「保湿成分」を適量与えて
化粧水をたっぷり使ったからといって肌が潤うわけではありません。
化粧水中の水分はほとんどは蒸発しますが、その時に肌内部の水分もいっしょに奪われて、かえって乾燥につながることも。
「大事なのは『水分』ではなく、角層の水分を保持する働きをもつ『保湿成分』を与えることです」。
代表的な保湿成分がセラミド。
水分を挟み込んで肌内部にしっかりキープしてくれます。
そのほか、ヒアルロン酸やコラーゲン、エラスチン、ヘパリン類似物質なども保湿成分として働きます。
乾燥が気になる人は、基礎化粧品にこれらの成分が入っているかチェックして。
(右)アミノ酸系セラミド類似成分が細胞間脂質の働きをサポート。
ミノン アミノモイストAL 150mL ¥2,420(編集部調べ) /第一三共ヘルスケア
(中)働きの異なる3種のコラーゲンで段階的に肌にアプローチ。
スキンケア ジェル NMバランス35g ¥9,900/ニッピコラーゲン化粧品
(左)植物由来の保湿成分と3種のヒアルロン酸で健やかな肌へ。
ワカント保湿クリーム 80g ¥5,830/ティ・ティ・エヌ
9. 保湿をすればシワは少なくなる
△ 深めのシワにはコラーゲンを増やすケアを
入浴後に消えるような細かなシワは保湿が有効ですが、深めのシワは、真皮にあるコラーゲンの量の減少や変性などが原因でできるもの。
保湿だけでは防げません。
では、コラーゲンを補えばいいのでしょうか?
「コラーゲンそのものを補うより、コラーゲンを増やすケアが大切。ビタミンC誘導体やナイアシン(ビタミンB₃)、レチノール(ビタミンA)などが、真皮の線維芽細胞に働きかけて、コラーゲンの合成を促してくれます」。
そのほか、ポリフェノールなどの抗酸化作用のある成分も効果が期待できます。
(右から)
1. 高濃度のピュアビタミンCを浸透させる技術を搭載したロングセラー美容液。オバジC25セラム NEO12mL ¥11,000/ロート製薬(オバジコール)
2. ビタミンC誘導体と強い抗酸化力をもつ成分「フラーレン」を配合。毛穴も気になる大人肌に。エクセルーラ スムージング リッチセラム 45mL ¥4,620/佐藤製薬
3. ビタミンC・ビタミンE誘導体など、高機能のエイジングケア成分を濃縮。メディプローラー ラディアンスリフト セラム 30mL ¥13,200/メディオン・リサーチ・ラボラトリーズ
4. ビタミンEや抗酸化物質のポリフェノールなどの天然の美容成分を自然ろ過製法でそのまま肌へ。小豆島産エキストラヴァージンオリーブオイル 20mL ¥6,063/井上誠耕園
5.塗って眠るだけの夜用マスク。ポリフェノールの一種である天然保湿成分「シリビン」配合で睡眠中に肌ダメージをケア。コレセンス エンリッチ ナイトマスク60g ¥5,500/ニッピコラーゲン化粧品
10. 肌が弱いので「自然派化粧品」に
△ アレルギーがある人は注意を
「実は自然のものは成分が複雑で、漆や花粉のようにアレルギーを起こすものも多いのです」と吉木先生。
かぶれなどが起きなければ好みで選んでかまいませんが、角層のバリアが弱い敏感肌の人はかぶれを起こしやすいので要注意。
「敏感肌の人は自然由来の成分かどうかよりも、成分表示の種類が少ないものを選んでください。シンプルなもののほうがトラブルを起こすリスクは少なくなります」
11. スキンケアは、たるみを引き上げるように
× 逆効果! シワの原因になることも
たるみはシワと同じく、真皮のコラーゲンの変性やエラスチンの減少が原因。
たるみを引き上げるようにスキンケアをしても、改善にはつながりません。
「かえって肌に負担をかけてシワの原因になることもあるので、やめたほうがよいでしょう」。
たるみ対策にはコラーゲンを増やすケアが正解。
フェイスラインのたるみには、市販のグッズを使った表情筋エクササイズもおすすめです。
12. ピーリングを習慣にすると新陳代謝もアップする
○ 洗い流すタイプで負担を軽く、角質を取り除いて
肌の細胞はおよそ28日間かけて新しい細胞に生まれ変わり、最後は垢として剥がれ落ちていきます。
しかし、年齢を重ねると、この「ターンオーバー」のサイクルは長くなります。
40代では約40日間にもなるそう。そこで酸などを使って古い角質を取り除くのが「ピーリング」。
メラニンの排泄を促し、コラーゲンを増やす作用があります。
定期的に行うと新陳代謝がアップして、ふっくら肌に。
「ただゴマージュやスクラブタイプのものは摩擦による刺激が強くなりがちなので、洗い流すタイプがおすすめです」
ホームピーリング用の2種のミルクセット。肌に優しい洗い流すタイプ。
ドクターY クラリファイングミルク1・2 各100mL ¥9,350/イーボーテ
〈UVケア〉
紫外線はシミ・シワ・たるみを招く大敵。
美肌のために不可欠なUVケアですが、きちんとできていない人も多いそう。
肌にやさしく確実なUVケアを身につけて。
13. 化粧下地、ファンデーションなど、全部にUVカットの成分が含まれていたほうがいい
△ 理論的には、紫外線カットの数値は上がるけれど……
UVカット成分を含む化粧品をいっしょに使うと、理論的には幅広い波長域の紫外線をカットできると考えられます。
注意したいのは日焼け止めの適量。
一般に乳液タイプは500円玉大、クリームタイプはパール粒2個分が顔全体に塗る適量です。
「適量を塗るとベタつきや白浮きが気になったり、塗り直しが難しいことも。
私はパウダーファンデーションだけでUV対策をしています。色粉が紫外線をカットしてくれるので肌への負担が少なく、塗り直しも簡単です」
14. マスクや服の下は日焼けしない
× UVカット効果があるものでないと焼ける
紫外線はマスクや洋服の上からでも、容赦なく肌にダメージを与えます。
「特に目の粗いものは紫外線を通すので、気づかないうちに肩やデコルテにシミができてしまうことも。
ボディにも日焼け止めを塗ったり、UVカット効果のあるカーディガンや手袋などを使って」。
日焼け止めは塗ってから15分くらいで効果が安定しますが、時間がたてば効果はなくなります。
2時間おきに適量を塗り直して。
UV-A波は真皮まで達してコラーゲンを変性・劣化。シワやたるみをつくります。
UV-B波はメラノサイトを増やし、シミの原因に。
15. UVケアをすると骨が弱くなる
△ 過剰なケアで骨が弱くなる人も
紫外線を浴びると、骨を強くする働きを持つ「ビタミンD」が皮膚の中で作られます。骨の健康のためには、両手のひらくらいの面積で1日20分くらい日に当たることが必要といわれています。それすら浴びないほどの過剰なケアには注意して。ただし、晴天が続く1 週間に、毎日2 時間外出する主婦が浴びる紫外線は、真夏の海水浴で1 時間に浴びる紫外線と匹敵するというデータもあるので、日々の紫外線も侮らず、UVケアはしっかりと。
16. 紫外線吸収剤は肌によくない
△ かぶれやすい人は気を付けたい
UVカット成分には「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」があります。
前者は紫外線を吸収して化学変化を起こし、別のエネルギーに変換することで、紫外線の影響を軽減します。
「一般的に肌への刺激が強いと言われているのは紫外線吸収剤で、敏感肌の人はかぶれを起こすこともあります」。
かぶれなどが出なければ問題はないので、自分の肌に合うものを選んで。
17. 目から入った紫外線で皮膚も老化する
○ メラノサイトが刺激されるのでシミの原因に
目から紫外線が入ると、その情報が脳に送られます。
すると、脳は紫外線から体を守れという指令を出すため、表皮にある「メラノサイト」が刺激されて、メラニンがたくさんつくられることに。その結果、シミができてしまうのです。
また、紫外線は目そのものの老化にもつながります。
美肌のためにも目の健康のためにも、サングラスや帽子などで、目から入る紫外線も防ぐようにしましょう。
SHOPLIST
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イーボーテ 03-6205-7234
撮影/清水奈緒 スタイリング/平井律子 ヘアメイク/面下伸一[FACCIA]
モデル/AYUMI 文/寺本 彩 イラスト/nanaoka 協力/AWABEES
大人のおしゃれ手帖2023年4月号より抜粋
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