【インタビュー】猫沢エミさんが語る
「愛猫と過ごしたかけがえのない時間」
愛猫と過ごしたかけがえのない日々を綴った、ミュージシャン、文筆家である猫沢エミさんの新刊『イオビエ〜イオがくれた幸せへの切符』。
いかに生を全うするべきか、考えさせられる一冊です。
ともに過ごした時間や愛は必ず次の子にも受け継がれる
動物とともに過ごすかけがえのない時間は、大きな幸せや喜びだけでなく、生きる上で大切なことを教えてくれるもの。
それは、人生の大半を猫とともに暮らしてきたミュージシャンの猫沢エミさんにとっても同じ。
とりわけ、2019年に新宿の路上で運命的な出会いを果たした老猫・イオからは、多くのことを教わったそう。
「イオは飼い主に捨てられて過酷な路上生活を送っていたにもかかわらず、誰のことも受け入れてくれる不思議な度量のある子で。
一緒にいるとほっとするのか、私の友だちも『イオちゃんに話を聞いてもらいたいから行っていい?』とうちに来て、よくイオと話していましたね」
餓死寸前で保護されたイオは、治療の甲斐あって持病の糖尿病からも回復。
先住猫たちとともに穏やかに過ごしていたものの、ある日扁平上皮がんが発覚します。
宣告を受けてからわずか48日間で天国へ旅立った、イオの軌跡を綴ったのが『イオビエ〜イオがくれた幸せへの切符』です。
「この本のテーマのひとつが、愛と許し。イオが捨てられた経緯を思うと怒りがこみ上げてくるけど、彼女の振る舞いを見ていると、憎しみなんてまったく感じられない。
だから一緒にいる私も、過去を想像して苦しんでいてはいけないな、と。私たちはみんな不完全な生き物として生きていて、捨てられる子もいれば、拾う人もいる。今この一瞬だけを見つめて、幸せに向かっていくイオの姿を思いながら、この本を書きました」
大切な存在がこの世を去っていくとき、自分に何ができるのか。
見送った後の喪失感と悲しみをどう乗り越えればいいのか。
そうした問いに対するヒントもこの本には書かれています。
「初代のピキが亡くなったあと、1年半はほかの子を飼えなかったんです。でも、その後2代目のピガと暮らすようになって、前の子と一緒に過ごした時間や交わした情愛は、必ず次の子に受け継がれるのだと気づきました。
それに、私自身が前を向いて幸せに生きていれば、私の心の中にその子は生き続ける。かつて動物を見送って、『もう二度と飼わない』と思っていた人が、この本を読んで『また新しい子と暮らしてみよう』と思ってくれたら、きっとイオも『私がしたかったのはこういう仕事だ』と言ってくれると思うんです」
『イオビエ〜イオがくれた幸せへの切符』
猫沢エミ
¥1,980(TAC出版)
著者のSNSで発信された当時から反響を呼んでいた、老猫・イオの生きた軌跡を綴った一冊。
餓死寸前の状態から回復し、幸せな日々を送っていたイオに急性のがんが発覚し、この世を去るまでの1年半が、イオ視点の小説と著者の日記で構成されています。
編集部が選んだ必読書!
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写真/中島千絵美 文/工藤花衣
大人のおしゃれ手帖2023年4月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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