【インタビュー】アルヴァ・アアルト生誕125周年! 「アアルト」にとっての“愛するということ”
彼自身が生きた時代から、今日まで、変わらず世界中で愛され続けている建築家でありデザイナーのアルヴァ・アアルト。そんなアルヴァ・アアルトのデザイナーとしての人生を、彼が残した作品と、最初の妻・アイノとの手紙のやり取り、同世代を生きた建築家や友人たちの証言、そして2番目の妻であるエリッサとのエピソードを盛り込んで描いた映画『アアルト』が10月13日(金)に公開されました。
監督はフィンランド出身のヴィルピ・スータリさん。大人世代でもある彼女に、映画の見どころを通じて“愛するということ”についてインタビューしました。
10歳にして、アルヴァ・アアルトに恋に落ちた
フィンランドのロヴァニエミというラップランド地方出身のヴィルピ・スータリさん。
その初めてのアルヴァ・アアルト(以下アルヴァ)体験は、街にあったという図書館でした。
「アルヴァが第二次世界大戦後に建てたロヴァニエミ市立図書館に、ほとんど毎日、放課後はそこに行っていました。ロヴァニエミは冬になると-30℃にもなる、文字通り凍えるような気温の場所。とくに寒い冬は暖を取る場所としてその図書館が、一番歓迎してくれたように思います。また1970年代は、第2次世界大戦や内戦もあり、人々の暮らしがものすごく質素だったんです。
それでも、アルヴァがつくったその図書館に行くと、とても贅沢で豊かな時間を過ごすことができました。
美しい革の椅子があり、広くて美しいスペースが充実していて、そこに入るだけでものすごくワクワクしましたし、たぶん、子どもだった私だけじゃなく、のみんながそこに入ると心が躍ったのではないかと思っています。公共のスペースなのに、そこにいくとまるで自分がこの図書館のオーナーになったような気持ちになりました。ですので、10歳にしてすでにアルヴァに恋をしていたんですよね(笑)」
そんな運命ともいえるような出会いや経緯があり、アルヴァの人生を綴った映画を撮ることになったスータリさん。彼女曰く「思わず触りたくなる」建築である、アルヴァ作品の魅力が存分に伝わってくるカメラワークや、音楽によって“体感”できるような映画となっていました。
アルヴァ・アアルトは、作品も個人も“官能的”
「アルヴァのビルは、どれもこう思わず触りたくなるようなところがあるんですね。官能的というか、人によってはエロティックというか」とスータリさん。
そして、建物自体もそうでしたが、本人自身も非常に“モテる”人物だったとか。映画のなかでも、最初の妻・アイノとの手紙のやりとりのシーンでは、他の女性の存在を感じるような、本気とも冗談ともつかない描写が見受けられます。
「アルヴァとアイノとの手紙を始めとする、アアルトファミリーの記録を使わせていただけたのがこの映画の鍵となりました。アルヴァとアイノは、時が経ってまさかラブレターが映画になるとは思っていなかっただろうから(笑)、手紙のセレクトにはとても慎重になりましたが。
アルヴァが仕事でもプライベートでも非常に“モテた”人物であることは間違いないのですが、プライベートな部分においては性欲というよりは、1920年代のこれからモダンな時代が始まるという世の中の動きを反映していたところもあるのかなと思っています。
セクシャリティもそうだし、テクノロジーもそう。飛行機も出てきたり、レコードプレーヤーが出てきたり、あらゆる面において、モダンなものというのをみんなが追及していた時代だった。
アルヴァだけじゃなく、実は最初の妻・アイノも、非常にモテる人だったので、彼女に“冒険をしてみたら?”なんてアルヴァがけしかける手紙もありましたよね。
2人の友人で、アルヴァにも非常に影響を与えたといわれている、モダンデザインを代表するアーティストのモホイ=ナジという人物がいます。アアルトファミリーがまとめた『アイノとアルヴァ アアルト書簡集』にも記載がありますが、どうやら彼は、アイノのことが好きだったようです。
私としては、アルヴァとともに働きながら2人も子どもがいるアイノが、情事にふけるような時間があったとは到底思えませんが(笑)、いずれにせよ、アルヴァとともにアイノも、セクシュアリティ的にモダンであろうとしたのだと思います」
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