【著者インタビュー】寺地はるなさん
「みんな好きにしていいし、いろんな人がいていい。」
作品に込める思いとは?
誰もが奥底に抱える、心の闇をあぶり出すような寺地はるなさんの『わたしたちに翼はいらない』。
執筆時の思いに加え、年齢に縛られがちな大人世代に対するメッセージも伝えてくれました。
みんな好きにしていいしいろんな人がいてもいい
過去のいじめに対する復讐心、モラハラ夫への憎しみ、元同級生へのマウンティング……。
そうしたネガティブな感情を見過ごすことなく、リアルに描き出した寺地はるなさんの新刊『わたしたちに翼はいらない』。
「嬉しい・楽しいという気持ちと同じくらい、悲しい・嫌だったという気持ちも大事にしたい。どちらも自分の感情ですから。小説はきれいな落としどころに落ち着きがちなので、今回は無意識にそこへ行こうとする自分との闘いが大変でした」
夫婦、友人、親子、ママ友…… と複数の人間関係が交差する中、とりわけ印象的なのが、同い年の子どもを持つ朱音(あかね)と莉子(りこ)の関係。
地味に見られがちだが芯の強い朱音と、スクールカーストを引きずったままの莉子という対照的な2人は「友達ではない」と言いながらも、ある種の信頼関係を築いていきます。
「友達じゃなくても相手を助けることもできるし、大切にすることはできる。書いていくうちに、この2人はそうなっていくんだろうな、と自然に思えて、ああいう形になりました。
”友達”っていなきゃいけないもの、大事なものとされがちですが、その言葉でしんどくなる人もいると思うんです。そういう人に向けて『いなくてもいいよ』と伝えたい気持ちもありました」
本作をはじめ、今までの作品でも「女性あるいは男性だからこうすべき」というジェンダーロールからの解放に焦点を当ててきた寺地さん。
特に読者世代の女性に対して感じることは?
「この年代の女性は、『この年でそんなファッションは痛い』『もっとちゃんとしなきゃ』と脅されがち。でも、それって全部無視していいんじゃない? と私は思っているので。
みんな好きにしていいし、いろんな人がいていい。今後もそういうことを書けたらいいですね」
そう話すこの日の寺地さんの手元には、ルビーとオパールの指輪に、1日歩数や消費カロリーを測定できる活動量計が。
「指輪はハンドメイドの作品が揃う『クリーマ』で買ったもの。石がすごく好きなんです。以前、30代の知人に『キャラクターものアイテムが好きなんだけど、おかしいと思う?』と相談されたことがあって。
『好きなものを持ちなよ!』と彼女に伝える意味で、スポンジ・ボブのバッグを持ったりもしています」
『わたしたちに翼はいらない』
寺地はるな
¥1,815(新潮社)
4歳の娘を育てるシングルマザーの朱音、同じ保育園に娘を預ける専業主婦の莉子、マンション管理会社勤務で独身の園田。同じ地方都市に生まれ育った3人それぞれが抱える心の傷や人間関係のしがらみを通じて、誰しもが持つネガティブな感情を描き出す。
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撮影/中島千絵美 文/工藤花衣
大人のおしゃれ手帖2023年10月号より抜粋
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