【インタビュー】段田安則さんに聞く「人の本心との向き合い方とは?」
人間の本心なんて到底わからない。だからこそ、おもしろくもあると語る段田安則さん。人との距離感を楽しむ余裕は「京都人」のなせる業? 出演を控える舞台「リア王」のお話とともに、大人の人付き合いについて伺いました。
『リア王』を通して見える、人間関係のおもしろさ
俳優人生にとっても新たな境地を開く作品となった『セールスマンの死』から2年。演出家のショーン・ホームズさんと再びタッグを組み、シェィクスピア4大悲劇のひとつ『リア王』に挑む段田安則さん。人の本心を見誤り、人生を大きく狂わすことになった主人公を段田さん自身はどう思っているのかたずねると、
「リアは80歳ぐらいの人物ですが、こんなにしゃべりまくるのかよ!と思うほど(笑)。正直なところ、今はまだ、どうしたらいいのか、何をお客さまにお見せしたらいいのか、五里霧中といった感じです。シェィクスピアというと、セリフも固くて取っつき難い印象もあるかと思うのですが、台本を読んでいると、けっこう笑えるところもあるんです。『こんなバカな父親いるかね?』と、喜劇にも読める感覚があります。現段階では、可愛がっていた娘たちにどんどん裏切られていく、父親であるリアに感情移入できる部分が大きいかもしれませんが、『リア王』ですから、『王』の側面も、もっと膨らませていきたいですね」
三女のコーディリアを演じる上白石萌歌さんや、かつては段田さんも演じたエドガー役の小池徹平さんなど、後輩俳優とも現場をともにする今作。座長でもある段田さんが緊張をほぐしたり、アドバイスする場面も多いのではないでしょうか。
「僕は『王』で『お父さん』ですからね、困った人がいたら助けたいと心では思うのですが、今は無理ですね(キッパリ)。僕のほうが緊張して余裕がないもので、逆にみんなに『助けてよー!』という気持ち。よっぽど余裕ができたらお助けしたいのですが(笑)」
年長者が満身創痍で臨む姿を見せるからこそ、後輩に伝わることもあるはず。虚勢を張らない正直さは、大人だからこそ必要なコミュニケーション能力かもしれません。とはいえ、なかなか正直に本音で人と付き合うのは難しい。リア王は、娘や家臣の本心を読み切れず、悲劇に見舞われますが、段田さんは、「人の本音」とどのような距離感を取っているのでしょう。
心の探り合いも楽しんでしまえばいい
「なかなかねぇ、人の本音や本心というのは測れないですよね。一心同体、以心伝心で何もかもわかるという人もいるかもしれないですが、わからないことのほうが多いんじゃないかな。自分のことさえよくわからないときがありますから。それに本音なんてなかなかストレートに言わないものでしょ? たとえば僕の出身の京都では、『その着物よろしいなぁ』とか言いながら本心では『安っぽいわー』と思っていたり、言われているほうも相手がそう思っているのをわかっていながら「ありがとうございますー」って笑顔で返す。それが文化というか、遊び心というか、そういう探り合いもおもしろいなって思うんですよね」
まさに「言わぬが花」。京都人でもある段田さんが言うと説得力があります。大人の人間関係は、そんな間合いの取り方がいい塩梅なのかもしれません。最後に、舞台への意気込みを。
「これ以上年を取ると、もうセリフが覚えられなくなるので、リアをやるなら、ギリギリ今がちょうどいい気もしています。体力、気力、頭の能力が保てるのか、千穐楽のステージに、果たして僕が立てているのか……⁉ だから、観ていただくならお早めにどうぞと言いたいです(笑)。今作は、演出のショーンさんが現代風な切り口で作り上げていますので、過去の作品にない新鮮な『リア王』が観られるはずです」
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