【インタビュー】松重豊さんに聞く60代の生き方『孤独のグルメ』を経て見えた新たな自分
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「白か黒か」で決めつけない。人間関係をラクにする“人をおもしろがる”心のゆとり

「思った通りにやっちゃえ」と笑う根底には、師と仰ぐ演出家・蜷川幸雄さんの教えがありました。
「僕にとっての怖い師匠は蜷川さんだけ。蜷川さんからは『既存の価値観や概念をひっくり返すことをやれ』と言われ続けてきた気がするんです。だから、さまざまな価値や固定概念を疑っていくことを死ぬまで続けたい。迷惑なジジイになってもいいから(笑)、自分が感じてきたことを全部吐き出してから棺桶に入ろうと思っています」
そしてもうひとつ、松重さんが大切にしているのが「人間をおもしろがること」です。
「僕は子どもの頃、転校が多くて環境が目まぐるしく変わりました。だからこそ、新しい場所で出会った人とどうコミュニケーションを取り、渡り合っていくかを考えて生きてきた。それが人への興味や、多様性を受け入れるおもしろさにつながり、俳優という職業を通じてさらに深まりました。俳優として『この人、どう見ても悪い人に思えるけれど、どこか魅力があるよね』と感じるような多面性を発信できたらいいと思っていて」
現代社会では多様性を謳う一方で、ものごとを「善か悪か」「正しいか間違いか」と極端に分類して攻撃してしまう傾向も強まっています。しかし、松重さんはそうしたわかりやすさから一歩距離を置きます。
「一面だけを見て決めつけるのは楽ですが、それだと人間本来のおもしろさを見失ってしまいます。『こんな部分もある、あんな部分もある』と捉えてみる。すべてを理解できなくても『人間ってわからないけれどおもしろいよね』と思えることこそが、本当の意味で人を理解するということです。ドラマや映画を観るという体験も、本質的にはそうやって『人を楽しむ』ということなのだと思います」
多面的な人間の魅力を愛おしむ松重さんのまなざしは、私たちの日常の人間関係をもっと豊かで、味わい深いものへと変えてくれる優しさに満ちていました。
PROFILE
松重 豊(まつしげ・ゆたか)
1963年生まれ。1986年、大学卒業と同時に蜷川幸雄主宰のGEKISYA NINAGAWA STUDIOに入団、演劇活動を始め、舞台、映画、TVドラマ、CM、ラジオと幅広く活躍。代表作にもなった『孤独のグルメ』シリーズは、2012年以来続いている。近年の出演作に、映画『劇映画 孤独のグルメ』(’25/監督・脚本・主演)、テレビドラマ『孤独のグルメ Season11』(’26)ほか。
松重豊さん 企画プロデュース・脚本・監督・出演
Prime Video配信ドラマ『おいしいのつくりかた』
トラブルで名門店を追われ、心を閉ざした腕利きシェフ・水橋英二(北村有起哉)。彼が流れ着いた老人ホームで出会ったのは、亡き夫の洋食店「キッチン大沢」を失い、生きる気力をなくした入所者・智子(加賀まりこ)。水橋の料理に感動した智子は、彼が作るポークソテーが夫の店の看板メニューと同じ味だと気付く。調べると、水橋と亡き夫は同じ名門店の出身だった。店と祖父の味を守りたい智子と孫の加奈(のん)は、頑なな水橋にある提案を持ちかける。世代を超えた3人が一皿の料理を通じて再生していく物語。
企画プロデュース・監督:松重 豊
脚本:田口佳宏/松重 豊
音楽:grooveman Spot & Osamu Fukuzawa
出演:北村有起哉 のん 永尾柚乃 橋本淳 朝比奈琉良 佐藤真弓 山中聡 坂井真紀 松重豊 中原丈雄/加賀まりこ
2026年10月3日(土)午前0時より「Prime Video」にて独占配信
※作品の視聴には会員登録が必要です
©テレビ東京
ジャケット¥89,100、シャツ¥47,300、パンツ¥51,700/すべてsuzuki takayuki(スズキ タカユキ)
撮影/天日恵美子 取材・文/みよしみか
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