【大人のための絵本】vol.4
モデル・アンヌさんが推す「童心に戻れる雪の絵本」
こんにちは。アンヌです。2023年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、私は年末年始をヨーロッパで過ごし、先日、東京に戻ってきました。
そろそろ東京にも雪が降りそうですね。
私のように積雪が稀な地域に住んでいると、交通の乱れや路面の凍結を心配する声が聞こえてきます。でも、私の第一声は、「楽しみだわぁ」。無邪気だねって笑われるんです。
でもやっぱり雪は格別です。朝起きたときのあの、都会の騒音を吸収してしまったかのような静けさ。カーテンを開けると眩しいほどの白一色。どんなに寒くても、子どもの頃はベッドから跳ね起きるほどでした。裏通りに飛び出して、そおっと足跡をつけるときは高揚感でいっぱいに。車のボンネットに積もっていれば、手形を押して。それからたくさんの模様を作り出して遊びもしました。何十年と経った今でも、間違いなく同じことをするでしょう。
さらに、私にとっては、ミクロの世界の発見でもありました。小学校からの帰り道でのことです。チラホラと降ってきた雪が、ふわりと濃紺のコートに落ちてきました。目を凝らすと、教科書で見たような細かな幾何学模様が! こんな小さなものにも世界があるんだ! 本物の結晶を間近にした、感動と驚き。思わず「見て、見て!」と友達を呼び集めました。でも、彼女たちが近寄ってきた頃には、もう消えていてがっかり。まるで宝石みたいだったと伝えながら、もっとよく見たいがために顕微鏡が欲しいと初めて思った瞬間でした。
こんなふうにして、私は雪からたくさんの楽しみやときめきを得ました。そんな魅力を存分に感じる今回の2冊。きっと皆さんも童心に帰れるでしょう。
『ゆきのひ』
作・絵/エズラ・ジャック・キーツ
訳/木島 始(きじまはじめ)
(偕成社)1,320円
国際的に評価の高い作者による絵本作品。雪が積もったある朝、小さなピーターは表へ出てみます。歩いてみると足跡が。足を引きずって歩くとどうなるかな。木に積もった塊を落としてみたら? 思いっきりダイブして手足を動かしたら?雪の日の小さな冒険をシンプルに描いていて親しみやすい。私たち大人も、遠い昔にわくわくした気持ちがきっと蘇るはず。切り紙や貼り紙を凝らした技法もスタイリッシュでとても魅力的です。
『きらきら』
文/谷川俊太郎 写真/吉田六郎(アリス館)
1,100円
30個ほどの結晶が並ぶ、輝くような写真絵本。谷川俊太郎さんの、やわらかな詩が寄り添い、一粒一粒の芸術的なまでの美しさが照らし出されています。基本は六角形でありながら、気温や湿度で形は無限に変化し、ひとつとして同じものはないのだそう。複雑で繊細で完璧! 何度眺めても驚きの連続です。小さい頃、こんな形のアクセサリーを身につけてみたいと思った人もいるのでは?お金で買えない天からの贈り物を、ぜひ愛でてみて。
選・文/アンヌ
モデル、絵本ソムリエ。14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒業。
モデルのほかエッセイやコラムの執筆などで活躍。
最近は地域で絵本の読み聞かせ活動も行っている。
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