【著者インタビュー】中島京子さん
体の変化や、コロナ禍で変化した日常・・・エッセイに込めた思いとは?
『小さいおうち』などで知られる中島京子さんのエッセイ『小日向でお茶を』。
前半は世界のグルメ、後半は50代の体の変化やステイホームの日々…と読みどころが詰まった一冊になっています。
年齢による体の変化も興味を持って観察したい
誰しも年を重ねるにつれて心や体が変化し、以前のようにできないことも増えるもの。
けれども、それを後ろ向きに捉えるのではなく、今の年齢なりの楽しみを見出せれば、日常はもっと豊かになるはず。
そう感じさせてくれるのが、中島京子さんの、初めての大人向けエッセイ『小日向でお茶を』。
前半では世界各国のグルメや旅のエピソード、コロナ禍を挟んだ後半では、日々の過ごし方や健康管理について綴られています。
「最近、楽しむようになったことのひとつが、保存食づくり。以前は母が手づくりした味噌や梅干しをもらっていたけど、母がいなくなったらもらえないと気づいて、自分でつくるようになりました。
ほかにも、庭に生えた山椒の実で粉山椒をつくったり、柿の葉を採って柿の葉寿司を仕込んだり。
若い頃はそんなことをしようとは思わなかったけど、年を取ってからはとても楽しく感じるようになりました。
仕事の面でも、若い頃は依頼が来たらすぐ打ち返す! という感じで働いていましたが、今は徹夜もできない。これからは無理をしないで、散歩をしたり、庭の植物を眺めて四季の変化を感じたり……といった時間を生活に取り入れて、ゆっくり味わうようにしたいですね」
朝のエクササイズやフォームローラーを用いたストレッチなど、体のメンテナンスについて事細かに書かれているのも、同世代にとっては嬉しいところ。
更年期をはじめとする50代の体の変化についても、さらりと書かれているのが印象的です。
「もともと健康管理には関心がありましたが、やっぱり40代以降になると、意識的にメンテナンスをしないと調子が悪くなりますよね。
今は2週間に1回のペースで、ピラティスと鍼にも行っています。
それに女性の場合、40代からプレ更年期が始まって、明確な体の変化がありますよね。そのこと自体は、面白いというと語弊があるけど、ポジティブな意味で興味深い。
私は以前、認知症の父のことを『長いお別れ』という小説に書いたことがありますが、認知症も私にとっては興味深いものでした。
悲しい、つらい、かわいそう……という感情のほかに、これはなんだろう? と観察したい気持ちが芽生えたんです。自分の体の変化も、それと同じような感覚で捉えています」
『小日向でお茶を』
中島京子
¥1,650(主婦の友社)
執筆活動を続ける中で感じた、50代の心と体の変化や、コロナ禍で変化した日常を綴った中島京子さんのエッセイ。年を重ねて不調が出たり、できないことが増えたとしても、「小さくとも、日向の明るいほうを向いて」生きるきっかけをくれる一冊です。
編集部が選んだ必読書!
乳がんの発覚から寛解まで。命に向き合う日々を綴る
『くもをさがす』
著/西加奈子
¥1,540(河出書房新社)
コロナ禍の最中、語学留学中のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、病気の発覚から治療を終えるまでの約8カ月間を率直な言葉で綴ったノンフィクション。闘病という個人的な体験を超え、幸せとはなにか?という普遍的なテーマが描かれています。治療中の支えとなったという多数の小説や音楽からの引用も興味深い一冊。
「ラプラス」シリーズ第3弾。近未来を舞台にした少年の冒険譚
『魔女と過ごした七日間』
著/東野圭吾
¥1,980(KADOKAWA)
2018年に映画化された『ラプラスの魔女』シリーズの新作。AIによる監視システムが強化された近未来の日本を舞台に描かれるのは、元刑事の父を亡くした少年の謎解きと冒険。前シリーズでもおなじみのキャラクターも登場します。ミステリーと空想科学を組み合わせたストーリーは、ベストセラー作家ならではの安定の面白さ。
写真/中島千絵美 文/工藤花衣
大人のおしゃれ手帖2023年6月号より抜粋
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