【著者インタビュー】川上弘美さん
「60代になった自分の今の心境を描きたかった」
作品に込める思いとは?
自身の経歴とも重なる小説家の日々を描いた川上弘美さんの新作。
主人公を同世代にした理由、長く続けるために大切にしている日々のルーティンについてうかがいました。
60代になった自分の今の心境を描きたかった
「実は若い頃から、年配の女性が主人公の話を書きたかったんです。考えていたのは、60代の女性と30、40代の男性のロードムービーのような話。
でも20代の自分にはその年代の気持ちはわからないし、書いても嘘っぽくなってしまう。ようやく自分も60歳を過ぎて、時が来た! という気持ちで書きました」
そう話す川上弘美さんの連作集『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』の主人公・朝見は、60代の小説家。
彼女を中心に、同年代の登場人物達の日々の感情が、ときに恋愛を含めてリアルに描かれます。
「恋愛というのも不思議なものですよね。若い頃の恋愛は生物としての営みや若さゆえの勢いでもあるけど、年を取って誰かを請うというのは、いったいどんな気持ちなのか、その後はどうなっていくのか。それを書いてみたい気持ちもありました」
物語はフィクションですが、朝見の小説家としての考え方や生活は自身と重なる部分も。
「小説家を主人公にした小説やドラマはあるけれど、あまり現実的な職業としては描かれていないですよね。破天荒だったり、事件に巻き込まれたり…(笑)。
もちろん作家になるのは大変だけど、特別な仕事ではないと私は思っているので、地道な生活の内実を描きたかったんです。最近の作家は規則正しいし、健康にも気を遣っていますしね」
川上さん自身も10年前からバレエを始め、毎週レッスンに通っているそう。
「もともとは家が好きで、毎日本を読んでいるか、小説を書いているか…だったのですが、あるとき何にもないところで躓いてしまって。
この筋肉のおとろえはまずすぎる、と 〝大人バレエ〟に通い始めました。踊るというよりは、バーに掴まってプリエをしたり、簡単なステップを踏むくらいですが、楽しくてはまってしまって」
生徒は同年代から年上まで幅広い。教室でおしゃれな人を見かけて、参考にすることもあるそう。
「20〜30代は、自分はこれ! というのが決まっていたけど、最近は毎年似合う服が変わっていて、びっくり。
私の場合、50代はしっくりこなかったジーンズが、60代でまた着られるようになって。代わりに、よく着ていた黒が似合わなくなった。そういう変化も面白いですよね」
『恋ははかない、あるいは、 プールの底のステーキ』
川上弘美
¥1,870(講談社)
東京で暮らす60代の小説家・朝見と、その友人たちが紡ぐ大人の愛の物語。コロナ禍の始まった2020年の執筆とあって、当時の世の中の変化がリアルに描かれているのも印象的です。「現在進行形で書くことで、コロナ禍の記録にもなるかなと考えました」
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撮影/白井裕介 文/工藤花衣
大人のおしゃれ手帖2023年11月号より抜粋
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