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大人のおしゃれ手帖 5月号

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大人のおしゃれ手帖
2024年5月号

2024年4月6日(土)発売
特別価格:1360円(税込)
表紙の人:南果歩さん

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これが正解「快眠術」

眠れない夜にさよなら

多くの人が抱える睡眠の悩み。寝具を買い替えたり、アルコールに頼ったりする人もいますが、そもそも睡眠は「脳」という臓器が行うものです。そこで脳の仕組みに着目。生理学的な快眠術を作業療法士の菅原洋平さんに教わりました。

教えてくれたのは・・・菅原洋平さん

作業療法士。ユークロニア代表。国立病院機構で脳のリハビリテーションに従事するなかで、睡眠の重要性に気づく。現在は生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修や睡眠相談などに尽力。『働く人の疲れをリセットする 快眠アイデア大全』(翔泳社)など睡眠や脳に関する著書多数。

1.あなたは大丈夫?〝隠れ睡眠不足〞

夏は寝苦しい季節。特に今夏は暑くなると予想され、睡眠に悩まされる人も増えそうです。
一方で、自覚はないのに睡眠不足という人も多いんだとか。「たとえば〝寝落ち〞は慢性的な睡眠不足のサイン。夜更かしを続けたために、脳の危機管理システムが働いて眠気を感じなくなった状態です。本来あるはずの〝まどろむ時間〞がないため、睡眠の質も低下してしまいます」
そのほか、睡眠不足だと下記のような行動が起こります。思い当たるものがないか、チェックしてみましょう。

●タンスの角に足をぶつける
睡眠不足だと、体の動きや位置、力加減などをキャッチする「固有感覚」が低下、脳が把握しているイメージとズレが生じ、体をぶつける、ものを落とすなどの小さな失敗が起こりやすくなります。

●アメを途中でかむ
「アメをなめずにかむ」「ボールペンをカチカチ鳴らす」「机をコツコツ叩く」などのリズミカルな動きは、睡眠不足の脳が居眠りを防ぐために命じているもの。覚醒レベルを上げる神経伝達物質「セロトニン」の分泌を促す動きです。

●パソコン作業中に髪や顔を触る
睡眠不足の状態でパソコン作業を行うと、覚醒レベルを上げるために「ヒスタミン」という物質が急上昇。そのために、敏感なところがかゆくなって、髪や顔などを触る回数が増える傾向に。

●脚を組む、頬杖をつく
睡眠不足は姿勢の崩れの原因にもなります。重力に抵抗して姿勢を支える「抗重力筋」の働きが低下してしまうからです。すぐに脚を組んだり頬杖をついたり、猫背になったりする場合は睡眠不足を疑って。

●相手の行動や言葉を受け流せない
脳にある「扁桃体」という部位は“闘うか逃げるか”を瞬時に判断するところ。睡眠不足だと、この扁桃体が活性化。そのため、相手のちょっとした言動に、過剰に反応して不安になったり、攻撃的になったりします。

●まわりがうるさいと集中できない
睡眠不足で脳の覚醒レベルが下がっているときは、「α波」という脳波が多く出現。聴覚が過敏になります。周囲の物音がいつも以上に気になって集中できない状況に。

そのほか「『あれ? 何しに来たんだっけ?』となる回数が多い」、「文章の同じ行を2回読んでしまう」「寝る前に食べるのを止められない」などもそうです。

2.「若いころのように眠れない」のは当たり前

 50代になると、若いころのように長時間ぐっすりとは眠れなくなります。基礎代謝量が減るうえに、脳の情報処理時間が短くてすむので、長時間の睡眠はいらなくなるからです。「若いころのように眠れなくなって、戸惑う人が多いのですが、それはごく自然な現象なんです」
 そんな大人世代に菅原さんがすすめているのは、「睡眠を生理学的に捉え直す」ことです。「〝疲れれば眠れる〞というような曖昧な経験則ではなくて、自分がどういう仕組みで眠っているのか、正しい知識をもつことが大切。そのうえで、自分に合った対策をとれるようになれば、睡眠への焦りや不安も減らすことができます」


3.睡眠の3大悩み解消術 ①寝つけないときは

睡眠の中でも、多くの人に見られる悩みに、菅原さんからアドバイスをもらいました。

寝床から出るのが正解!

「寝床に入って15分くらいで眠れなかったら、その後も1時間は眠れません。脳は、そういう臓器なんです」
 脳の特性だとわかれば、気も楽になりますね。眠れないときの不安や焦りも、脳内の「ノルアドレナリン」という物質で起こる生理的な反応ですから、心配しなくて大丈夫です。
 寝つけないときは寝床から出るのが正解! もし15分たっても眠れないときは、寝床から出てください。そのままだと「寝床=寝つけずに悩む場所」と、脳が記憶してしまうからです。寝床では眠る以外のことはせず、眠くなってから寝床に入るというのが大原則です。 
 また、入浴直後は深部体温が高いので、寝つきにくい状態です。入浴後1時間くらいで深部体温が急激に低下するので、そのタイミングで寝床に入ると寝つきやすくなります。

4.睡眠の3大悩み解消術 ②早く目が覚めてしまうときは

30分ずつの夜更かしでちょうどいいリズムを探る

 年を重ねると、メラトニンの量が減ります。そのために、睡眠のリズムが前倒しになって、夜早くに眠くなり、朝早く目覚めてしまうことがあります。
 起きたい時刻に起きるためには、「遅寝遅起き」を心がけてみてください。床に就く時間を30分だけ遅らせて、睡眠全体を朝方にシフトします。目覚める時間が遅くなっているようなら、そのまま数日間続けます。希望時刻に起きられるようになるまで、これを繰り返して調整してみてください。
 ひとつ、注意したいのは朝の光。6時起床が目標の場合、5時に目覚めたときに光を浴びてしまうと、睡眠リズムがもっと前倒しになってしまいます。希望時刻までは暗いまま過ごし、希望時刻になってからカーテンを開けて、脳に光を届けるようにしましょう。

5.睡眠の3大悩み解消術 ③スッキリ目覚めたいときは

目覚まし時計ではなく脳に起床時刻をセット

 朝の目覚めには、「コルチゾール」というホルモンが関係しています。血圧や血糖値を高めて体の起床準備を整えるホルモンで、起床の3時間前から分泌が始まります。
「コルチゾールは、言葉の影響を受けることで知られています。そこで、就寝前に起きたい時刻を3回唱える〝自己覚醒法〞がおすすめ。頭の中で唱えてもいいですが、声に出したほうが、脳にセットされやすいです」
 目覚まし時計のスヌーズ機能を使う人も多いと思いますが、実はこれ、スッキリした目覚めには逆効果。繰り返しのアラームは結局「何時に起きてもよい」ということになってしまい、体の起床準備が整いにくいのです。自己覚醒法を2週間続ければ、スヌーズ機能を使わなくてもよくなるはずです。


イラスト/植松しんこ 文/寺本 彩
大人のおしゃれ手帖2022年8月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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