アカデミー賞を楽しもう!① 主演女優賞、歴代受賞者3選
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世界最高峰の映画の祭典「アカデミー賞」。
今年は3月10日(アメリカ現地時間)に授賞式が行われますが、昨年は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞を含む7冠と圧勝し、ミシェル・ヨーがアジア系として史上初の主演女優賞に輝いたことが大きなニュースとなりました。
そこで今回は、歴代主演女優賞受賞者の中から3名を独断で選んで出演作をご紹介します。
目次
60歳での栄冠!
ミシェル・ヨー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
昨年の授賞式で最も輝いていたのが、オスカー像を手にしたミシェル・ヨー。60歳のアジア系女優の快挙に、大きな拍手と歓声が起こりました。
中国系マレーシア人のミシェルは、バレリーナになる夢を諦めた後、ミス・マレーシアに選出。1984年に映画デビューすると、『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年)でボンドガールを務めてハリウッドへ進出し、『グリーン・デスティニー』などに出演してアジアを代表するアクション女優となりました。
とはいえ、ハリウッドにおいてアジア系であるがゆえの苦労は多く、しかも女優は年齢を重ねるにつれて役を得る機会が減っていくのが常。そんななかでの受賞に、晴れやかな笑顔を見せていました。
受賞作がどんな映画かというと、一言でいえば、ハチャメチャ映画。
コインランドリーを経営する中国系移民一家の妻であり母であるエヴリンが夫と父を伴って税務署に行くと、突然、“別の宇宙の夫”から宇宙の命運を託され、マルチバース(多元宇宙)へジャンプして宇宙の脅威と闘うことになり……。
SF、アクション、コメディ、移民やLGBTQといったマイノリティ問題、家族愛などを詰め込んだ斬新な作品ですが、このような荒唐無稽な世界に説得力を持たせることができたのは、キャリアと実力を誇るミシェル・ヨーがいてこそ。平凡な中年女性も、異世界のカンフーの達人も、どちらも演じられるのが彼女の強みです。
だいぶ前のこと、筆者は2005年に来日したミシェル・ヨーに取材をする機会に恵まれましたが、コップの水を飲む一連の動作があまりにも美しかったことを今でも覚えています。
将来について「運命はめぐりめぐるもの。チャンスをつかんで、ベストを尽くすだけです」と語っていた彼女ですが、その通りに努力を続けて勝ち取った栄冠に、多くの人々が勇気づけられたことでしょう。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
2022年製作
Blu-ray ¥5,390/DVD ¥4,290
発売元・販売元:ギャガ
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構成・文
ライター中山恵子
ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。