【著者インタビュー】三浦しをんさんが語る
「好きなものに囲まれて暮らす」こと
小説と同様、多くのファンから愛される三浦しをんさんのエッセイに、待望の新作が登場。
本や漫画、推しのグループ…と数々の”好き”に囲まれた暮らしこそ、幸せなのだと実感できます。
”コントロール不可能”な状態だからこそ楽しい
今は、ものを減らして身軽に暮らすことがよしとされる時代。
けれども、好きなものに囲まれて暮らすことも、同じくらい素敵なのではないか。
そんな風に思わせてくれるのが、三浦しをんさんの最新エッセイ『好きになってしまいました。』。
描かれる三浦さんの日常は、ときに増えすぎた本や漫画に囲まれつつも、楽しくときめきに満ちたものになっています。
「必要のないものを片づけて部屋をすっきりさせるって、本当にいいことだと思うんです。でも私にとって、きれいに整理整頓されて、何もかもを自分で把握できる部屋はあまり住み心地がよくない。
それと、〝コントロール不可能〟なことがあるのが好きなんです。私の部屋にしても、気づくと 〝本の山〟が生えていて、自分の意志ではどうしようもない(笑)。
でも、その状態が好きなんですよね。もしすっきり片づけていたら、本の山から『そういえばこれも買ってた〜!』と発掘する、予想外の喜びもなくなってしまうので」
それはファッションに関しても同じ。
洋服専用の部屋には壁沿いにラックを並べ、お気に入りの服を保管しているそう。
「たまに虫干しして、そういえばあった! と発見するのが楽しい。『自分が本当に気に入っている、質のよい5着だけあればいい』という考え方もいいけど、私にとってはつまらない。
中には20代の頃、自分なりに奮発して買った服もあるけど、もう入らないんです。
でも、そういう〝地層〟を通して、私の身体の変遷がわかる。
『いつか、もしかしたら入る日が来るかもしれない』と取ってあるんですよね」
ちなみに、この日の三浦さんが着ていたのは、大好きなうさぎモチーフが入ったスカジャン。
「これはネットでよく買っている香港のお店のもの。面白いデザインのものがたくさんあって、しかも安くて縫製もいいんです。昔は黒が好きで、コム デ ギャルソンもよく着ていたけど、かなり好みが変わりましたね。
だんだんトンチキな柄や色に目覚めてきて、もうすぐ虎のアップリケが入った服を着てしまいそう(笑)。年を重ねて自分に勢いがなくなってきたから、服で勢いを出したいのかな。でっかい石やジュエリーが好きなのも同じ理由ですよね。きっと服やアクセサリーからも、日々の活力をもらっているんだと思います」
『好きになってしまいました。』
三浦しをん
¥1,650(大和書房)
約10年にわたって雑誌や新聞で執筆してきたエッセイをまとめた一冊。
観葉植物を愛で、本と漫画に耽溺する、“愛と笑いと妄想”に満ちた著者の日常に、笑いながらも勇気づけられます。
掲載媒体や執筆時期による変化を読み取るのも楽しい。
編集部が選んだ必読書!
土地ごとの個性を反映した
日本の郷土料理の奥深さを知る
『家庭料理は 郷土料理から始まります。』
著/松田美智子
¥2,970(平凡社)
宮崎の冷や汁、山形のだし、大阪の船場汁など、料理研究家の著者が日本各地を訪ねて学んだレシピとエッセイ。小学生で早くも家族の食事を作り始め、高校時代にはホルトハウス房子さんの料理教室へ通ったという自身のルーツも興味深い。
「KENZO」ブランド創設者の
意外な素顔とその功績に迫る
『髙田賢三と私 「パリの息子」とすごした37年間』
著/鈴木三月
¥2,420(時事通信社)
2020年に亡くなったデザイナー・髙田賢三氏を公私にわたって支えた著者が、その人柄を綴った一冊。同氏の功績に加え、人を楽しませることが大好きで、和菓子や昔ながらのラーメン、餃子が好物…という意外な素顔が垣間見られるのが楽しい。
写真/白井裕介 文/工藤花衣
大人のおしゃれ手帖2023年5月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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