【インタビュー】COVER LADY 7月号 板谷由夏さん
次のステージをどう過ごすか。考えるべきタイミングに
ひと雨ごとに濃さを増す、みずみずしい緑のなかで行われたこの日の撮影。
ロケ地が板谷さんの自宅近くということもあり、終始リラックスしたムードで進められました。
板谷さんが都心を離れて、海にほど近い郊外へと越してきたのは、もう10年以上前のこと。
「もっと年齢を重ねておばあちゃんになったら、また都心に戻って東京探検をするのも楽しいかもしれないけど……。私は身近に自然がないと、だんだんへこんでくるんですよね。
今住んでいる場所ならすぐ山にも海にも行けるし、庭の草木を見たり、鳥の鳴き声を聞いているだけでも楽しい。夏は夕方になると、家族で海の家まで行くのが恒例なんです。そこでごはんを食べて、ビールを飲んで帰ってくる。特にどこかへ行かなくても、それだけで旅の気分が味わえます」
季節ごとの新鮮な食材が手に入ることも、暮らしを豊かにしてくれる要素に。
「魚は魚屋さん、野菜は八百屋さん……と、それぞれの専門店で買うのが楽しいです。『ちょっと卵買ってくるね』と、卵を買うためのお店に行けるのって素敵じゃないですか? 東京のおしゃれなスーパーやデパ地下も大好きだけど、季節の素材が店頭に並んでいて、それを買えるのはこの地域ならではの贅沢ですね」
以前は、どんなに東京での仕事が遅くなっても必ず自宅へ帰り、翌朝は子どもたちを学校に送り出すことを自分に課していたという板谷さん。
最近はそうしたルールからも自由になりつつあるそう。
「子どもたちも成長して、常に一緒にいなきゃ、という年齢ではなくなってきて。夫には夫の、子どもには子どもの世界があるし、私も次の年代をどう過ごすか、考えるタイミングだと感じています」
ひとりで我慢している人には落ち込むことないよ、と声をかけたい
そう話す板谷さんの最新作が、6月22日よりNetflixにて配信されるドラマ『離婚しようよ』。
既に冷め切った元・おしどり夫婦のすれ違いをコミカルに切り取った作品で、脚本家の宮藤官九郎さんと大石静さんが、交換日記のように交互に脚本を書き継いでいく……という方式も話題となっています。
「台本を読んでいるだけで、これが映像になったらどうなるんだろう? とワクワクしました。これは脚本の力ですよね。リレー形式の脚本は初めてですが、この緻密さは宮藤さんだろうな、この表現は大石さんだろうな……と、どちらが書いているのかなんとなくわかる気がします」
板谷さんの役どころは、松坂桃李さん演じる世間知らずな三世議員・東海林大志の弁護士として、離婚協議を進める印田薫。
妻で女優の黒澤ゆいを仲里依紗さん、妻側の弁護士・石原ヘンリーKを古田新太さんが演じています。
「印田さんは学生時代にヘンリーと付き合っていたけど、振られてしまったという過去があるんです。そんな相手と、夫婦それぞれの担当弁護士として再会したから、負けたくなくて燃えちゃうんですよね。その設定だけで既に面白い(笑)。撮影中も、必死な顔で『ヘンリー!』って呼びかけている自分がおかしくって、笑いをこらえるのに必死でした」
離婚へ向かっていく夫婦を通じて、結婚観や家族観についてあらためて考えさせられるのも、本作の面白さ。
「よく、『結婚するよりも離婚するほうが大変だ』と聞くけど、このドラマのふたりを見ていても、本当にそうだなあ……と実感しますね。付き合っているときは個人同士でも、結婚することによって家族も巻き込まれるし、価値観やバックグラウンドの違いもはっきりと見えてくる。テーマは離婚だけど、『結婚ってなんだろう?』と考えさせられる作品です」
今夏には、紫式部の生涯を描く来年の大河ドラマ『光る君へ』の撮影もスタート。
次々と話題作が控える板谷さんが作品選びで重視しているのは、「興味が湧いたかどうか」というシンプルなこと。
「ただ、基本的に求められているうちは、自分にできることはやりたい。40代になると、どうしても役の幅が限られてくることも。既に子育てが終わりつつある母親役や上司役とか……。
でも世の中には、そのどちらでもない女性が大勢いますよね。同世代の女優さんともよく話すんですけど、大人の女性をきちんと描いた作品がもっと増えるといいなと思います。既にアメリカやフランス、韓国にはそうした作品がたくさんありますから」
全力で新しい作品と向き合うには、健康も不可欠。その一方で、体質やライフスタイルの変化する40代以降は、心身が揺らぎやすい年代でもあります。
「私自身、何も悪いことは起こっていないのに、わけもなく涙が出たり、落ち込んだり……という時期がありました。でも、これってホルモンバランスが崩れているからじゃない? と気づいたら、また元気になった。だから知ることは大事ですよね。
理由がわかれば、今は情報源もたくさんありますから。ひとりで我慢している人には落ち込むことないよ、と声をかけたいし、次の世代にも伝えておきたい。辛い時期を抜けるとまた楽になるとも聞くので、それが今から楽しみ。長く仕事を続けていくためにもきちんと対処法を知って、変化に備えたいですね」
板谷さん着用:[上]カーディガン¥28,600/アダワス、ドレス¥59,400/サヤカ デイヴィス(ともにショールーム セッション)、ピアス¥49,500、ネックレス(上)¥42,900/ともにソフィーブハイ、ネックレス(下)¥66,000/エルナンエルデス(すべてエスケーパーズオンライン)、ネックレス(中)¥25,300/マリア ブラック(マリア ブラック 表参道店)
[下]コート¥82,500、パンツ¥25,300、ブーツ¥15,400、傘¥11, 000/すべてトラディショナル ウェザーウェア(トラディショナル ウェザーウェア ルミネ有楽町店)、シャツ¥47,300/トゥジュー(トゥジュー代官山ストア)、ピアス¥86,900/ソフィーブハイ(エスケーパーズオンライン)
YUKA ITAYA
1975年、福岡県生まれ。1994年よりモデルとして活動し、1999年に映画『avec mon mari』で俳優デビュー。俳優としての活動に加えて「NEWS ZERO」のキャスター(2007〜2018年)、「映画工房」のMC、ファッション・ブランド「SINME」のディレクターを務めるなど幅広い分野で活躍する。6月22日より出演ドラマ「離婚しようよ」がNetflixにて配信スタート。2024年にはNHK大河ドラマ「光る君へ」の放送が控える。
撮影/浅井佳代子 スタイリング/青木千加子 ヘア/西村浩一[VOW-VOW] メイク/阪本明子[SIGNO] 文/工藤花衣
大人のおしゃれ手帖2023年7月号より抜粋
※この記事の内容及び、掲載商品の情報・価格などは2023年5月時点の情報です。販売が終了している可能性があります。ご了承ください。
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