【特別対談】岡田将生さん × 水田伸生さん
「手をつないでゴールを目指そう」
物語の世界そのままの温かな信頼と友情
同世代ならではの共感があれば、年の差を超えてわかり合える喜びもまたあり。
より深く豊かな人間関係、そのあり方を模索する対談連載、今回のゲストは世代をテーマにした映画作りを通して理想的な関係を育てた異世代のおふたり。
物語の世界そのままの温かな信頼と友情は、これからも深く長く続いていきそうです。
岡田将生さん(以下、岡田) 『ゆとりですがなにか』は2016年に連続ドラマ、翌年に続編のスペシャルが放送されたんですが、何年経っても「『ゆとり〜』、見てました!」と言ってくださる方がとても多いんです。こんなに愛される作品はなかなかないので、映画化は嬉しかったです。
水田伸生さん(以下、水田) もともとは宮藤官九郎さんが「ゆとり世代3人の男子を中心にしたドラマを書きたい」と言って成立した作品だったんだけど、すごく大きな事件が起こるわけではなく、描かれるのは半径数メートルの世界。家族が揃って朝ごはんを食べているだけでそれがシーンになり、トイレの扉を開けっぱなしにすることが大問題になるような、ね。
岡田 僕が演じた正和は、もはやもうひとりの自分のような感覚です。家族の食卓の場面も、皆があまりにも阿吽の呼吸なので、久しぶりに撮影に行っているのにいつもの朝を迎えているような気持ちになれました。
—変わらない空気を愛する僕たちを監督はいつでも大きく包んでくれた
水田 宮藤さんは、人と人がすんなりと出会える時代があったから書けた作品だと言ってました。SNSやLINEだけで繋がる今の人間関係では、そこでの人格を演じていたりするでしょ? 『ゆとり〜』は剥き出しの自分でいること、それを最も求めている作品だと思ったので、キャスティングにも力が入りましたね。だってどう考えてもこの世代のトップバッター3人じゃないですか。4番を打てる人ばっかり集める監督って感じ悪いなぁ、と思いつつ(笑)。
岡田 フフフ。ドラマから6年経った映画の世界の正和はちっとも成長していないんですが、僕は逆にそれが好きで。時間と共に人は変わっていくものだけど、なかには変わらない人もいて、その変わらない空気を愛せる人たちが集まっているのがいいなぁと……。そんな中で、水田監督はいつも僕たちのことを考えてお芝居しやすい環境を整えて、常に大きく僕らを包んでいてくださった。もう感謝しかありません。
水田 いやいや、岡田くんくらい共演者を大切にして、誰もがすんなり現場にいられるかを体全体で捉えられる人って、なかなかいないですよ。真ん中にいる人がそうだから、周囲がその気持ちに乗ってそれ以上のものをお返しして、また岡田くんがお返しして……という連鎖が生まれる。自分のプランを実現するだけでなく、皆が影響し合ってシナリオを超えていくんだなと。
岡田 そうですね。(松坂)桃李さんや柳楽の優(弥)ちゃんともよく話をして、次のシーンはああしよう、こうしようと意見を出し合いました。本当に、彼らと同じ世代でよかったなと思います。
—岡田くんの気立てのよさは無二の個性
水田 きっとそこは、ゆとり世代のいちばんいいところなんじゃないかな。ほら、かけっこで手を繋いでゴールするっていうの、あったじゃない? あれを経験した人たちからは、1番が偉くて2番はダメ、3、4はもっとダメみたいな考えが消えたんだと思う。そのせいでゆとり世代にはガッツがない、競争心が足りないと言う大人もいるけれど、そもそも大人が決めたルールなのに自己矛盾してどうするんだ? って。
岡田 フフフ、確かに。水田 そして、教育と環境が人間を形成しているわけだけど、最終的に落とし込まれるのは、その人自身の個性だよね。岡田くんの気立てのよさは脈々と受け継がれてきた岡田家の教育もあるだろうし、社会に出て出会った人からの影響もあるだろうし……。
岡田 はい。10代の頃からいろいろな先輩方のお仕事を拝見してきて、目指したい背中だと思うのは、やはり自分のためにも相手のためにもいい芝居をしよう、いい環境を作ろうとしている方たちで。それは今の自分にとっての課題でもありますし、これからもずっとそうあり続けるだろうと思います。
水田 うん、あとは、やっぱり仕事はムキになってやることですね! やらされるとか目標をこなすとかじゃなく、とにかく毎日、100パーセント出し切ることを目指す。そうしていれば、きっと40代や50代に目からウロコが落ちるような瞬間がやってくるよ。
〔 映画 〕
『ゆとりですがなにか インターナショナル』
30代、仕事に家庭に人生に「ゆとり」なし? 今や働き盛りを迎えたゆとり世代がコンプライアンス遵守や多様性、グローバル化が叫ばれる世の中で悪戦苦闘する様子を描いた、全世代共感必至のコメディ。「自分の中では社会派作です!」と水田監督。
脚本:宮藤官九郎 監督:水田伸生
出演:岡田将生 松坂桃李 柳楽優弥 安藤サクラ 仲野太賀
吉岡里帆 島崎遥香 中田喜子 吉田鋼太郎
配給:東宝 全国公開中
©2023「ゆとりですがなにか」製作委員会
俳優・岡田将生
1989年生まれ。2006年にデビュー。最近の映画出演作に『ドライブ・マイ・カー』『さんかく窓の外側は夜』ほか、ナレーションを務める『SWITCHインタビュー達人達』(NHK Eテレ)が毎週金曜21:30~放送中。
映画監督・水田伸生
1958年生まれ。日本テレビに入社し、80年代からヒットドラマの演出、制作を手がける。2006年『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』で映画初監督。ほか作品に『舞妓Haaaan!!!』『謝罪の王様』など。
撮影/平岩亨 スタイリング/大石裕介(岡田さん),川口真司、福井千緩(水田さん)
ヘアメイク/小林麗子(岡田さん),池田あゆみ(水田さん) 文/大谷道子
大人のおしゃれ手帖2023年11月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
この記事の画像一覧
この記事を書いた人
ファッション、美容、更年期対策など、50代女性の暮らしを豊かにする記事を毎日更新中! ※記事の画像・文章の無断転載はご遠慮ください
Instagram:@osharetecho
Website:https://osharetecho.com/
お問い合わせ:osharetechoofficial@takarajimasha.co.jp