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2025年1月号

2024年12月6日(金)発売
特別価格:1420円(税込)
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【著者インタビュー】阿川佐和子さん『レシピの役には立ちません』
加工癖があるの! おいしくなるには?って――台所から生まれる情熱

大人のおしゃれ手帖編集部

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作家、エッセイスト、インタビュアー、俳優……と幅広く活躍する阿川佐和子さん。おいしいものには目がない、父譲りの食通でもあります。食にまつわるエッセイ『レシピの役には立ちません』を刊行した阿川さんに、日々の台所仕事の楽しみについて伺いました。

ハンバーグと思って解凍したらおはぎだった!

幼い頃、父の阿川弘之氏に「料理の素養がある」と褒められて以来、約60年にわたって台所仕事に親しんできたという阿川佐和子さん。新刊『レシピの役には立ちません』からも、料理本で見たスウェーデンの「船乗りのシチュー」を作ったり、味噌汁の目新しい具はないかと探求したりと、日々の料理を楽しんでいるさまがうかがえます。

——初めての料理を試す際に、まずネットで複数のレシピをチェックしておおまかな作り方を把握し、そこから自分流にアレンジする……というのが阿川さんらしいですね。

阿川 同じ料理でも、本格的すぎて面倒だな、というものから手抜きっぽいものまで、いろんなレシピがあるから。「これはみんなが言ってるから大事なんだろうな」という工程は残して、あとはそれぞれのレシピを適当に混ぜちゃってますね。ネットだけでなく、料理本も参考にしますよ。ハマったのが、小堀紀代美さんの『ごはんにかけておいしい ひとさライス』という本。肉や野菜のおかずを、ごはんにのせるだけのワンディッシュメニューで、本当に簡単でおいしいんです。今回の本の帯を書いていただいた平野レミさんのレシピだと、「くまのおしっこ」という料理は何度も作ってますね。びっくりするような料理名ですけど(笑)、材料のクリームチーズ、マヨネーズ、おろし玉ねぎ、塩、こしょうの頭文字から取った名前で、ぜんぶ混ぜて生野菜スティックをつけて食べるとおいしいんです。

——定番メニューをそのまま作るのではなく、香菜やナンプラーでエスニック風に味付けするなど、一手間かけて阿川さん流にアレンジしているのも印象的です。

阿川 加工癖があるの(笑)。一昨日も、サクで買った鯛のお刺身がいまひとつで。どうしようかと考えて、東南アジアの「ラープ」風にミントとナンプラー、砂糖、酢、しょうゆ、白ごまをあえてごはんにのせていただきました。おいしくなかったとしても、ちゃんとどうやったら食べられるかを考えないと、鯛も私もかわいそう。捨てるわけにもいかないしね。

——食材をムダにしないよう、あれこれ工夫されているんですね。

阿川 もちろん、ダメにしちゃうこともありますよ。「うすい豆」というのを初めてスーパーで買ってみたら、なんておいしいの!と感動しちゃって。豆ごはんにしたり、甘口で炊いて食べたんだけど、おいしすぎて大事にとっておいたら、そのまま忘れてカビが生えてしまって。保存容器に日付や中身を書けばいいんだろうけど、そういうことをやらないので。
この前も、「今夜は何にしようかな?」と冷凍庫を開けたらハンバーグがあって。夫に「今日ハンバーグでいい?」って聞いたら「いいね」っていうから、さあ作りましょう、と解凍したハンバーグを見たら、おはぎだった(笑)。


——エッセイの中にも頻繁に「冷蔵庫に眠っていた食材」や「賞味期限切れの調味料」が出てくるので、阿川さんもそうなんだな、となんだか励まされます。

阿川 むしろ、賞味期限が切れたものしか入ってないかもしれない(笑)。食材もだけど、調理道具も捨てられなくて。テフロンのフライパンも、何年も使ってはげてしまったけど、捨てるのはなんだか申し訳なくて。使うたびに「今日で最後にしよう」と思うんだけど、またしまっちゃうんですよね。ガラス瓶や保存容器も、「この段がいっぱいになったら捨てよう」と決めたつもりだったんだけど、なにか人にお裾分けするときに便利だし……と、いつのまにか3段に増えちゃって。なかなかものを減らせませんね。

——それだけ台所仕事が好きな阿川さんでも、作るのがイヤになることはあるんでしょうか。

阿川 料理をするのはいいけど、献立を考えるのは面倒ですよね。結婚したての頃は初々しかったのか、まず酒の肴みたいなものを3品ぐらい出して、次に炒め物、メイン、それから汁物……と、そのあとお吸い物出して……と、7〜8品は作っていたかしらね。最近は何品も作ると気持ちが分散しちゃうので、4品くらいですけど。
前日の残りものを出すこともあるけど、そのままだと気が引けるから、やっぱりアレンジはしますね。たとえばトマトソースを大量に作ったら、最初はスパゲッティ、翌日はオムレツ、さらにお肉の切り落としと玉ねぎを入れてハヤシライス……って。そうすると今度はハヤシライスが余っちゃうから、それをどうするか考えなきゃいけないんだけど(笑)。

——そういう毎日のやりくりを楽しむコツはありますか?

阿川 結局は、作るのが嫌いじゃないの。せっかくならおいしいものを作りたいし、それに対する情熱はあるから。食材があったら、「これを使って何ができるだろう?」「どうやったらおいしくなるだろう?」と考える。そうやって、あれこれ工夫するのが楽しいんです。ただね、分量も量っていないし、メモも取っていないから、再現はできない。エッセイならいいけど、献立日記は書けません(笑)。

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